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時き継幻想フララジカ 第二部 『乱界編』  作者: ひなうさ
第十五節 「戦士達の道標 巡る想い 集いし絆」
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~結集、同じ志を持つ者達~

 ボノゴ族との戦いから2週間後。


 東京、魔特隊本部……事務所二階の会議室。

 そこに一同に集まる戦士達の姿があった。


 魔特隊のリーダーレンネィを筆頭に旧来のメンバー勇、茶奈、心輝、瀬玲、あずー。

 そして新しく訪れた新メンバー……カプロ、ジョゾウ、アージ、マヴォ。


「四人共、改めて……これからもよろしくお願いいたします」


 福留が新たに訪れた四人へ向けて深々と一礼する。

 それに向かい合う彼等もまた日本式の礼で彼に応えた。


「皆、来てくれて本当にありがとう……これから大変な戦いが待ってるかもしれないけど……どうか力を貸してほしい」


 勇が一歩前へ出て手を差し出すと……それに応える様にアージが彼の手を取り握手を交わす。

 力強く握り合う拳が互いの体温を伝え、安心感にも似たふわりとした感情が二人の中に持ち上がっていた。


 それは言葉では伝えきれない心の触れ合い……命力の成せる技か。


「ウム、こちらからもよろしく頼む……我ら魔者が戦士一同……魔特隊の一員として恥じぬ様……」

「まぁお堅い事はいいじゃねッスか~仲良くやってくッスよ~!!」

「ヌ、ヌウ!?」


 アージの足元からヒョコリとカプロが顔を覗かせ台詞を遮ると……ピョコピョコと勇の横に近づき彼の空いた手を両手でギュっと掴み取った。


「ああ、そうだな!!」


 ひょうひょうとした性格のカプロならではか……お堅い雰囲気を壊せるムードーメイキングは彼らしい天然の持ち味とも言えるだろう。

 だがそんな彼の背後から忍び寄る大きな影に気付く事は無く……。 




「其が者は戦人(いくさびと)に非ず……アージ殿よ、そこは振れぬが情策よ」




 ジョゾウがぼつりと呟き目をやる先には……カプロの頭を掴みとらんばかりに蠢くアージの片手が。


「ヌ、ヌウ、そうか……」


 ワナワナとした手を引き上げると……やり場の無い憤りを散らすかの様に指がワシャワシャと動く様を見せていた。


「兄者は緩いの苦手だからなぁ~アッハッハ!!」

「マヴォ……!!」

「ヘ、ヘイ……」


 途端、狭い会議室に笑い声が飛び交う。

 その様子にアージが慌てて周囲を見渡すが……どうやら異端は自分である、という事に気付く。

 観念したのだろう、いつの間にか彼もまた苦笑いを浮かべ共に笑い合っていた。




 談笑が収まり、福留が再び口を開く。


「さて、ではそろそろ準備も出来ましたし……皆さんにはちょっとした報告をする必要があります」


 ニコニコと笑顔でそう話す福留を前に、心輝は眉間を寄せて妙に不服そうな顔を浮かべた。


「福留さんがニコニコしてるのってぇ、あんまいい事が無いってイメージしかないんすけど……」

「同感……」


 本音をポロリ……心輝と瀬玲が呟く。

 その裏では勇と茶奈が苦笑いを浮かべていた。


「ハハハ、いやぁ……そんなイメージが付いてしまいましたかぁ~少し悪いイメージを持たせてしまいましたねぇ~いやはや面目ない」


 面目ないと言いつつも笑顔を絶やさない福留の笑顔を浮かべるスタンスは揺るがない。

 これはもう彼の根底に染み付いた性質と言っても過言ではないのだから。


「今回のお話は朗報ですからご安心ください。 単刀直入に言いますと……お引越しです」

「引っ越し……?」


 するとその返しを待ちわびていたかの様に……彼がおもむろに会議室の机にあるリモコンに手を取りスイッチを押す。

 すると吊り下げられたプロジェクタが起動し、会議室の壁にあるホワイトボードに映像が映り込んだ。




 そこに映る映像、それは地図であった。




 東京都をでかでかと現したであろう簡素な作りのその地図には、電車の路線であろう表記と魔特隊本部、そしてそこから大きく西へ……比較的勇達の実家に近い場所に大きなマーキングが引かれた土地が表示されていた。


「これから一週間程使い、魔特隊本部をこの場所まで移設致します」

「うっそぉー!?」


 あずーが声を高々に上げるが、それに怯む事無く話は続く。


「予てより本部移設計画を進めておりましてねぇ、ようやく完成となりまして……それに伴いこうやって人員増員も行った訳です。 既に移動可能な物品はあちらに移動済みです」

「フム成程、それで以前よりも道具が少なかったのだな」


 現本部のある土地には簡易的であるが医療施設が入った宿泊可能な建屋がある。

 アージとマヴォは以前この場所に泊まった事が有るので、ある程度物理的な内部事情に詳しい。


「新本部には隊員専用の部屋がある他、運動施設、訓練施設、レクリエーション施設等あらゆる活動に必要な物が揃っております。 少しでも皆さんのストレスを軽減する事が我々サポート班のお仕事という訳です」


 壁に映し出された映像が次々に切り替わり、新建屋の内部施設が次々に表示されていく。

 そこに映るのは現施設とは比べ物にならないレベルの広大な内部構造であった。


「アタシが言った事叶っちゃった~!!」


 以前いつだかにあずーがぼやいた一言……「家の近くにトレーニング施設があったらいいな」という一言が現実となり、彼女の興奮が収まらない。


「ハハハ、そうでしたか、それはよかったよかった」


 受け流す様に「ウンウン」と頷く福留。

 するとふと……その目にウズウズとするカプロの姿が映る。


「……カプロ君、どうしましたか?」


 そう尋ねられるや否や……瞳を燦々(さんさん)と輝かせたカプロが勢いよく飛び上がった。


「その施設にッ!! 鍛冶施設はっ!! あるッスかッ!?」


 ピョンピョンと飛び跳ねながら質問を飛ばす落ち着きの無い様子のカプロを前に動じる事も無く、福留が笑顔で応える。


「えぇ、勿論ありますとも。 アルライの里にある施設を基に、最新技術を駆使して造らせた最高の窯を用意してありますよぉ」

「ウピョピョー!! そりゃたまらねーッス!!」


 それを聞いただけで堪らず走り出しそうに足踏みをするカプロ。

 無邪気な彼の振る舞いが再び笑いを呼び込んでいた。


「ハハハ、カプロ君落ち着いてください。 この説明が終わったら移動開始ですので」

「ヘ、ヘイッ!!」


 途端、カプロは「シュッ!!」と音を立てるかの様な鋭い動きで席に着く。

 よほど楽しみなのだろう……背筋を伸ばしてきっちりと座る姿はまだまだ子供なのだろうと察せる様だ。


「ハハハ……はい、では説明終了です」


 ……からの終了宣言。


 カプロは途端にキョトンとしながらも……徐々に滲み出す様に、その顔をニヤけさせていく。

 たちまち万遍の笑顔となった彼の動きはもう誰にも止められない。


「行くッスか!? もう行くッスか!?」

「えぇ、行きましょう!! 外にバスを用意してありますから皆さん移動をお願いいたしますねぇ」


 そう言われた途端、カプロが我先にと会議室を駆けて出ていく。

 それに続き……皆もまた歩きながら会議室から退出していった。


 後に残ったのは福留と勇。


「……福留さん、本当はまだ説明する事あったんでしょう?」


 廊下に響く騒めきが小さくなっていく中、福留と勇の目が合う。


「えぇまぁ……大したことは無いですし、バスの中で説明すれば済む事ですから。 それよりもカプロ君の喜びの笑顔を見ていると……なんだか嬉しくなりましてねぇ~」

「あっはは、それ俺も分かりますよ」


 騒がしくとも微笑ましい、そんな心を作る仲間が増え……彼等の行く道は笑顔で溢れていた。




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