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時き継幻想フララジカ 第二部 『乱界編』  作者: ひなうさ
第十五節 「戦士達の道標 巡る想い 集いし絆」
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~信念、それは変わり変わらぬモノ~

 心輝の報告が終わり、報告書を纏める笠本。

 特に勇からは大きな報告内容がある訳でもなく……。


「敵のボスを見つけ次第説得、成功したので現地オブザーバーに報告で作戦完了です。 侵入した一般人在り、注意を勧告。 それとボノゴ族への提供用ハンバーガー100個要求後解散となりました」


 たった3言……1分程度で報告を済ませると、笠本がそれに続き報告書に記録していく。

 すると……彼女が纏めている最中、思い立った様に福留が勇へと視線を向けた。


「勇君、相手のボスは結局悪人だったのですか?」

「初見ではそう感じました……ですが反省の余地ありという事で警告して聞き入れて貰えた筈です」

「そう……『筈』、ですか」


 そうぼそりと呟くと福留は「フゥー」と深く息を吐き出した。


「何か不味かったですかね?」


 その福留の反応が気に成ったのか、勇は不意に彼の意図を探ろうと問い掛ける。

 だが、勇の反応に対し……福留はゆるりと首を横に振り、にこりと優しい笑みを浮かべた。


「いえいえ、無駄な殺生を避けて頂いて安心したのですよ」

「そうですか……」


 その言葉を聞いて勇も安心したのか……勇は微笑みを浮かべ、座っている椅子の背もたれにドサリと背を当てた。


「報告書の整理が完了しました」

「はやっ!!」


 そう話をしていると驚異の編集力で作業を済ませた笠本が声を上げる。

 それを聞いた福留は「ウンウン」と頷くと、自身の席に備え付けられたパソコンをおもむろにいじり始めた。


「はい、確認出来ました、有難う御座います……ではこれで報告は終わりという事で」

「お疲れさまでした」

「お疲れっしたー!」

「お二人共ご苦労様でした」


 勇と心輝が「やっと終わったか」と言わんばかりの疲れた様な顔付で挨拶し席を立つ。

 戦うだけの時であればこんな雑務は無かったのだが……魔特隊に正式入隊後はこんな事も増えた。

 事務的な事となれば、面倒さも相まって疲れも溜まるもので。


 二人が帰宅準備を済ませて事務所から外へ出ていくと……その背中を追う様に福留が事務所の入り口をじっと見つめ続けていた。


「おう勇、飯くって帰ろうぜ」

「そうだな」


 既に時刻は夕刻……空は闇に覆われ、街灯が街を照らす。

 そんな他愛もない会話を交わしながら二人が事務所の前から去っていくと、事務所内に居る福留がぼそりと呟いた。


「……そうですか……やはり君は……」




―――君はいつだか

      『変わろうと望まない限り人の心は変わらない』

                          そう言いましたねぇ……




    ……でも、人の心というモノは……

        変えようと思っても、なかなか変わらないモノなんですよ―――






 福留の心の中で優しい言葉が響く……そんな事も分かる筈も無く、暗い空の下で二人の男が笑いを交わし夜の街に消えていった……。




 かつて少年は、守るべき者を守る為に青の少女との約束を捨てた。


 しかし彼は気付いていない。


 その約束は、捨てようと、忘れようと、(ないがし)ろにしようと……心がそう在り続ける限り、決して、消える事は無いのだと。




 その事に気付くのは―――




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