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時き継幻想フララジカ 第二部 『乱界編』  作者: ひなうさ
第二十四節 「密林包囲網 切望した過去 闇に紛れ蠢きて」
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~王~

 マヴォ達と合流を果たしたアージは兵士へ事情を話し、彼を通して事情の全てを福留へ語ってもらった。


 相手は一種族ではないという事。

 もう一つの種族がヘデーノ族という賢い種族であるという事。

 そして、彼等が完全に協力し合っている訳ではないという事。


 いずれも、策士が居るという事を結論付けていいと言える程に、ハッキリとした手がかりであった。


 何故彼等がオッファノ族と行動を共にしているのか……それはまだわからない。

 だが、今まで気付かれなかった事……それは明らかな策略の一つであると福留は判断したのだった。


「―――笠本君、彼等全員にチャンネルを開いてください」

「わかりました……総員、福留氏から通達があります」


 笠本が指示通りに回線を開くと、手信号で福留に合図を送る。

 それを確認すると……福留は静かにその口を開いた。


「皆さん、策士の存在が露呈しました。 これより作戦はフェイズ2へ移行致します。 各自、オッファノ族への直接的な殺傷攻撃を可能な限り避け、極力撤退、投降の呼び掛けをするようお願い致します」


 突然の通信、そしてオッファノ族への攻撃の禁止を通達。

 勇達からであろう戸惑いの声が切りそびれたインカムから漏れる。

 だが続き連ねられた言葉から、彼等の気持ちが切り替わるのは必然であった。


「相手にはもう一種族存在する模様。 居るのはヘデーノ族……ネズミの様な、横に耳の長い小柄な魔者です。 彼等を見つけた場合、即座に攻撃行動に移すようお願い致します。 以上、繰り返します―――」


 福留からの通達を受けた勇達が行動を再開する。

 今までの緩さを伴う進軍とは違う、敵を見据えた進攻。


 フェイズ2……それは彼等への「全力での戦闘行為が許される」指示を示す。

 そして彼等の進攻パターンが変わる事を示唆させる事であった。




 策士の露呈……それがこの先の戦いを一層厳しくさせる事を予感させたのだった。




――――――




 一方その頃、オッファノ族達の集落の一つ……そこの個室に、王と呼ばれた者が居た。


 彼もまたヘデーノ族……何故、どの様にしてオッファノ族の王になったかは定かでは無いが、その自信満々の笑みがまるでそれを物語るよう。


 知略を使い、王へと成り上がった……のだと。


 個室の椅子に寄りかかり余裕を感じさせる姿は、王というよりもただの偉ぶった者……威厳など微塵も感じさせない。


 その様に一人ブラブラとしていると……突然その部屋の扉を叩く音が聞こえ、間も無く扉が開かれた。


 姿を現したのもまたヘデーノ族。


「ディビー、不味い事になったぞ」

「なんだ、どうしたぁ?」

「東の餌撒き(・・・)がやられた……全員だ」


 訪れた者が深刻な顔を浮かべそう語る。

 彼が言うのはアージの行動の事……それは彼等の作戦の一つだったのだろう。

 

 だが、ディビーと呼ばれた王は……途端にやりと笑みを浮かべ、訪れた者へ流し目を向けた。


「ウィッウィ……なんだぁそんな事(・・・・)か……問題無い、奴等にバレた所で作戦は既に収まりが付かんだろうよ……それにな、やられたのはそいつらが悪いのよォ。 チンタラやってたのが裏目に出たに過ぎねぇ」

「そ、そうか……わかった」


 そう返されると、訪れた者はそそくさとその個室から離れていく。

 そして再び静けさが戻り、王はまたしても椅子にもたれ掛かった。


「……そろそろ始める頃合いかぁ……さぁて、皆どれだけ命張ってくれるかねぇ……ウィッウィッウィ……!!」




 不敵な笑みが室内に木霊する。

 彼が目を向けるのは、一体何に対してなのか……それを知る者は仲間内とて誰一人として居ない。


 ただ静かに……変わりゆく戦況でその命を奮うのみ……。




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