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時き継幻想フララジカ 第二部 『乱界編』  作者: ひなうさ
第二十一節 「器に乗せた想い 甦る巨島 その空に命を貫きて」
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~震撼させて、巨影~

 けたたましい音が絶えず長い通路に鳴り響く。


 走れない者は若い物に背負われ、小さな子供は抱きかかえられ……皆が協力し合いながら細い通路を大勢の人間達が駆けていく。


 先頭を走るジョゾウが周囲に警戒しつつ前を走り、曲がり角等に注意を払う。


時折、勇が別れ道等を警戒し入り乱れる様に走る姿が見受けられた。




 どれだけ走っただろうか……周囲を走る人々も疲れを見せ始め、徐々にペースが落ちていく。

 急ぐ事も大事だが、100人を超えるこの人数を分散させる事は非常に危険……ジョゾウと勇が声を掛け合いペースのコントロールを行っていく。


「ジョゾウさん、後方が少し遅れてる。 ペースを落として下さい」

「了解した。 各々方、無理せず行こうぞ」


 疲れへたり込みそうな者を庇う様に肩を取り、勇が前進を促す。

 止まる事は、後から来るかもしれない魔者との遭遇の確率が増し、非常に危険である。

 

 余裕がある者に手助けする事を促しながら、疲れを(おし)て人々の進みを後押しする。




 すると、そんな彼等の前にとうとう入口前のT字路が姿を現した。




「間も無く外に御座る!! 外へ行けば助けに来た軍人達が待っておる故、安心召されよ!!」


 途端、歓喜の声が漏れ……疲れた表情を浮かべていた人々の顔に笑顔が蘇っていく。


 ジョゾウが曲がり角で彼等を送り出す様に立ち、腕を絶えず進路へ向けて奮う。

 それに応える様に人々が島の入口へと次々に進んでいった。




 すると、間も無くジョゾウの背後から足音が聞こえ……咄嗟に振り向いた。




「ジョゾウさん……?」

「おお、茶奈殿では御座らぬか!!」


 そこに現れたのは、研究員達を連れていた茶奈であった。


「良かった、間に合いました……心輝さんが私達を庇ってくれて……」

「そうであったか……しかしその問題は既に解決済みよ。 心配めさるな」


 既に先程、インカムを通してメズリ打倒完了の声が届いていた。

 勿論それは茶奈も知る所であるが、彼女の気持ちを察したのか……ジョゾウが優しく応え彼女の心を慰める。


「茶奈殿も先に行かれよ、ここは拙僧達に任せるのだ」

「はい、ありがとうございます!!」


 ジョゾウの好意を受け、研究員共々乗客達の中に紛れて茶奈も空洞の外へと走っていった。

 そして遅れて人々の末端が見え始め……勇も曲がり角から姿を現した。


「勇殿、茶奈殿が先に行き申した。 後方は拙僧に任せ先に行かれよ」

「わかりました、ジョゾウさんも無理せず」

「はは、ここまで来て無理なぞ出来ようもなかろうぞ」


 そんな軽い冗談を交わし、勇が子供を抱えながらジョゾウの前を過ぎ去っていく。

 それを見送り……ジョゾウは遅れた者達を励ます様に声を上げ、彼等の進みを促していた。




 乗客達が空洞からちらほらと姿を現し、それを迎える様に軍人達が彼等の下へと駆け寄っていく。

 そんな様子を遠巻きから眺める心輝達……その目に映ったのは茶奈と勇の姿。

 二人の姿が見えた事で、ようやく事の終わりを実感し大きな溜め息を吐き出した。


「ようやく終わりね」

「だぁーもう疲れた……早くベッドで寝たいぜ……」


 途端心輝がゴロリと地面に寝転がり、今にも寝そうな程に眠たげな表情を見せていた。

 「んもう」とあずーが声を漏らすが……彼女も安堵感から、それ以上の事は何も言う事は無かった。


「俺ぁどうするかぁ……ちっとここに残って探しモンでもいいが……戦争後の記録しかねぇんじゃ話になんねぇな」


 剣聖が求めるのは古代の戦争の発端である創世伝説の事……その後の話ともなれば既に彼にとっての興味の範疇外なのだ。

 もっとも、物珍しい物もある事を知っているからこそ、そちらを求めたいという気持ちはあるようだが。




 別動隊であった者達がこうして再び相まみえ、無事を確認する。






 全てはそれで終わった……―――かと思われた。






ゴゴゴゴ……




 突如鳴り響く轟音と振動……それに気付き、不意に気付き勇達が足を止める。


「なんだっ!?」




 それは彼等が居る場所から離れた場所……入口の空洞よりも大きな、何も無かった筈の穴。

 奥が振動で崩れ始め、突如人口の壁が現れた。


 壁が上に開き始めると……その奥から巨大な影が姿を現す。




 そして途端……その巨大な影が轟音を鳴り響かせ、巨体とは思えぬ速さで空洞から飛び出した。




 勇達の目の前に突如現れた黒い影。

 太陽の光を逆光に、黒の巨体を晒し空を飛ぶ姿に誰もが戦慄を憶えた。




 その巨体は形容するのであれば……まさしく『ロボット』というべき存在。




 鋼色の光沢を持ったボディに、短い四脚と四本の腕を持つその巨体。

 そしてその頂点部に身構えるのは、カラクラ族と思わしき一人の魔者。


 余りの衝撃的な状況に、その場に居合わせた全員の顔が引きつり強張る。

 脅え逃げ惑う者も居る中、勇達を含めた殆どの人間がその場に立ち尽くす他なかった。


「なんだ……あれはッ!?」


 目を見張る様に見開き、その巨体が近づいてくる様を見つめる勇達。




 だがその途端、その巨体の持つ腕部が勇達と心輝達へ向けられた。


「あれは……やべぇぞオッ!!」

「ううーーーーー!!」


 剣聖すら大声を張り上げ、自身の前に巨大な命力の盾を展開する。

 それに合わせて茶奈も精一杯の命力の盾を正面に向けて広げた。


 その瞬間、巨体の腕から弾丸が放たれる。

 光の筋を作り、連続で飛び出す光の弾丸が彼等に襲い掛かった。




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