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時き継幻想フララジカ 第二部 『乱界編』  作者: ひなうさ
第二十一節 「器に乗せた想い 甦る巨島 その空に命を貫きて」
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~駆け付けて、赤の空間~

『おう、お前等、何ノロノロやってんだ』




 突然響く、大きな聞いた事のある声。

 多重にエコーする音が通路一杯に響き渡り、彼等の耳に絶えず聞こえて来るかのよう。


「こっ、この声、剣聖さん!?」


 勇が顔を左右に振って周囲を伺うが、当然彼の姿は見当たるはずも無く。

 そして再び、クリアな音声が彼の元に響いてくると どこから漏れたか知れない声を聞き取る様に耳を澄まし聞き取る。


『そうだぁよぉ。 いいかよく聞きな、おめぇの居る所からすぐ近く、これから俺が指示する方向の先に捕まった奴らが居る』

「えっ……!?」

『その先に、おめぇが持つ剣の力を使ってぶち抜いてみな。 ただし、距離は172メートル……それ以上大きくなりゃ先に居る奴等が死ぬ。 小さけりゃ手前の壁の反力に負けてお前らに攻撃が返ってくる。 いいか、お前等の単位で172メートルだ。 わかったな!?』

「は、はいっ!!」


 剣聖の言葉を信じ、翠星剣を持つ拳に力を篭める。

 途端、大きな命力珠が強く輝き光を周囲に放ち始めた。


「勇殿!? やれるで御座るか!?」

「わからない……けど、やるさ!! ジョゾウさんは離れてて!!」


 勇の体の向きを基準に、剣聖が続き指示を出して方向を少しづつ変えていく。

 彼の言うがままに向けられていくのは……島中央、斜め上の方向。


『そうだ、その剣の向きに向けてぶちかませ』

「わかりました!!」




 魔甲の上に滑らせるように翠星剣を乗せ、見えない目標を見据える。

 アレムグランダの光が勇の周囲に展開されると、それに呼応して翠星剣の力が更に強さを増していった。




キュオオオオンッ……!!




「172メートル……距離感をイメージ……寸分変わらない位置へ……!!」




 極限まで剣の力が高まりを見せ、刀身に光が走る。




「うおォーーーッ!!」




 叫び、そして放たれる光の一突。




ギャアアアアンッ!!




 途端、翠星剣から放たれる一本の光が壁を貫き白に包む。




 衝撃に押し返された風や壁の破片が道に流れる様に吹き飛んでいく。




 その先端が、一つ、また一つと壁を突き破り……その先へと伸びていった。

 先に待ち構えるのは、一つの強固な壁。


「いけぇーーーーーー!!」


 命力を通じて感じる感覚が、壁を予感させ……そして力を篭める。




ドォーーーーーンッ!!




 壁に激突した光の槍は……その壁すらをも突き抜けたのだった。




 そして貫いた途端、光の槍がそのまま弾ける様に砕け……床へと吸い込まれる様に流れ、大気へと消えていった。




「ゆ、勇殿……無事に御座るか?」

「あぁ、平気さ……命力珠の力も半分くらいまだ残ってるよ」


 「ニカッ」と笑顔を浮かべ安心を誘う。

 それを見たジョゾウも返す様に笑い声をあげた。


「では勇殿、乗客乗員達が待っているであろう……先に進もうぞ!!」

「ああ!!」




 二人は声を掛け合うと、勇が作った「道」へと足を踏み出し掛けていく。

 斜め上に向けて作られた傾斜は所々抉った通路が剥き出しとなり、時折逃げ惑う魔者の姿もあった。

 だがいずれも襲い掛かってくる事無く脅えた表情を浮かべながら逃げていくのみ。


 この島にやってきていた魔者達は、どうやら全てが「死にたがり」では無い様だ。




 二人が道を駆け抜けると……その先に見えたのは広い空間。


 意気揚々と部屋へ飛び込む。

 すると……そこに居たのは脅えた顔を浮かべ座り込む人々の姿。

 いずれも突然の勇達の出現に悲鳴を上げ恐怖に身を震え上がらせていた。


「皆さん、助けに来ました!! 俺達は国連の者です!!」


 途端、脅えていた表情が歓喜の笑顔へと変わり、「おおっ!!」と声を上げる。


 だが続きジョゾウが姿を現すと……再びその顔が引きつる。


「な、なんと……拙僧は敵に御座らん!!」

「あ、この鳥の人も仲間なんで!! 皆さんもう安心していいですよ!!」


 すると「なんだぁ」と安堵の息を吐き、安心からか……周囲の者達と抱き合う等の落ち着き様を見せ始めていた。


「これで全員ですか?」

「いえ、数人奥に連れていかれて……」


 そう答えたのは機長らしき人物。


「わかりました。 でしたら皆さん、この鳥の人に付いて……」

「いや、奥にはもう怪物は居ない。 それにこの人達の中には連れ去られた家族が居るんだ……協力させてくれ」


 恐らくこうやって共に支え合う事で一体感の様な物が生まれていたのだろう。

 乗客達も機長に従う様に静かに頭を縦に振っていた。


「わかりました……皆さん付いてきてください。 ジョゾウさん、後ろは任せます」


 彼等の進言に従い、100人程となった集団が広場の奥に在る狭い通路へと足を運ぶ。

 その先に見えるのはもう一つの広い部屋……比較的暗く赤い光が部屋を包み、内部の状況がわかり難い様になっていた。




 だが、その部屋に入った途端……その状況を目の当たりにした勇の瞳が見開き、異様な光景に息を飲んだ。




 球形に造られた大部屋。

 そこには所狭しと楕円の何かが並び敷き詰められており、その中央には四角い何かのオブジェクトが立ち、その上には無数の光の粒が蠢き……彼等にとっての異様な様を見せつけていた。




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