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時き継幻想フララジカ 第二部 『乱界編』  作者: ひなうさ
第二十一節 「器に乗せた想い 甦る巨島 その空に命を貫きて」
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~突き進みて、先行隊~

 赤茶けた岩肌を有する空島……所々に木々が生え、光届かぬ場所には苔すら生い茂る。

 自然と出来たものにしては自然に取り込まれて久しいと思われる風体に、多くの者達がしきりと眺め、映像を記録に残す。

 島の外側には今なお暴風が吹き荒れ、台風の目とも呼べる島の上空からのみ、太陽の光が差し込み島を照らす。


 時刻は現在昼前……太陽がほぼ真上に身を晒し、輸送機が留まる平地を明るい日光が温かさを運んでいた。




 勇とジョゾウが島内部に潜入しておおよそ5分……。

 何事も無く一本の岩肌に囲まれた空洞を慎重に踏み出していく。


 空洞は人二人分程の高さを有し、横幅であれば10メートルはあるであろう程の大きさを誇っていた。

 内部には光が届かず、彼等の持つ魔特隊用のペンライトが暗闇を裂く様に光を放ち周囲を照らし続けていた。 


「……不自然極まりならん、自然に出来たにしてはやけに素直過ぎる道よ」

「真っ直ぐ過ぎますね……別れ道すら無いのか」


 時折妙な光る虫が飛び交い、勇達を避ける様に飛び去っていく。

 それに意を介さず、意識を正面に保ちながら確実に一歩づつ突き進んでいく。


 すると……不意に不自然さを感じる風景が目に留まり、二人の目が見開いた。


「これって……」




 岩肌が連なる様に続く道の先に……明らかに人工物と思われる、白い壁が現れたのだ。




「やはりここは……」

「間違いなく、人工の島ですね」


 ゆっくりと白い壁に近づき、おもむろに壁を叩く……すると「コォン」と反響を呼ぶ様な高い音が鳴り響き渡った。

 まるで金属の薄板が張り巡らされた様な感覚。

 だが強度はしっかりしており、命力を軽く込めて叩く程度ではビクともしない。


「随分硬いな……相当な文明度が無いとこんなの作れないだろ」

「うむ……この先罠があるやもしれぬ故、気を付けたし」

「ええ、俺が先行するので、何かあったら援護お願いします」

「承知仕った」


 勇は持ち前の技術である感覚鋭化により動体視力が向上し、反応速度が常人よりも断然に速い。

 多少の罠程度であれば即座に気付き対処が出来る自信があったからこその進言である。


 人工的な通路へと足を踏み入れ進む二人。


 だが罠の様な物は特に感じられず、ただ二人が歩く度に反響する音だけが虚しく響くのみ。

 曲がり角が何度も続き、先の視界を映さぬ様に入り組まれた通路。

 どうにも先が見えにくい作りに、慎重に慎重を重ねながら前進していく。


 道を進める度に徐々に人工的な光が周囲に浮かび始め、影を作っていた道がそのありのままの姿を勇達の視界に映し始めた。


 すると所々、地面に残る無数の靴跡と共に人外の足跡の様な痕跡が見受けられ、明らかに何かが居るという事を鮮明にさせていく。


 足跡に沿って進めば恐らくその先に乗客乗員達が居る。

 例えそれが罠であろうと、勇達に選択肢が無い以上進むしか道は無い。




 だがそんな事を思う中……勇は妙な違和感を感じ始めていた。




―――誰かが居るハズなんだけど……全く何も感じないな―――




 感覚鋭化により気配なども感じ取り易くなっているはずの勇だが、痕跡に関わらず人気(ひとけ)を感じない事に疑問を感じていた。


 相手は奥に隠れているのか?

 末端に人が行き渡らない程の少数精鋭なのか?

 警戒する必要が無いと思っているのか?


 疑問は多く浮かぶが答えは出るはずも無い……勇はフルフルと頭を振ると、余計な事を考えないよう頭を切り替え前進を続ける。


「静かなものであるな……かような空間が続くと眠気すら催しそうであるわ」

「はは、時々休憩しながら進みましょう。 気を張り詰め過ぎるといざって時動けませんからね」

「うぬ、だが心配は無用よ。 助けを請う者達が居る以上、一時も早くかの者達の下へ辿り着かねばならぬ故な」


 その言葉は魔特隊の隊員である以前に、彼の持つ正義感故。

 

 もはや人間との共存において最も前進している彼の心は人間すら愛してやまない。

 

 


 二人の戦士は慎重に、だが確実に前進を続ける。




 すると、二人の目の前に再び姿を現す曲がり角……そこをゆっくりと曲がると、その先に見えるのはT字路。

 

 地面に続く足跡は左に曲がる様に続き、彼らを誘う。


「行く道は決まっておろうが……茶奈殿と心輝殿に追い付かれても行き先がわかる様、目印が必要となろうな」

「じゃあ……」


 勇は手に持った翠星剣を掲げ、素早く壁に向けて剣を振る……すると正面の壁に『 ← 』という印が大きく刻まれたのだった。


「成程、これであればわかろうな」


 二人の戦士が明るく照らし始めた白き道を行く。

 最早二人の視界を遮る影は無い……そう感じた二人は徐々にその速度を上げ、足跡に沿って駆け抜けていった。


 二人を待つその先に、如何な試練が待っているかどうかは誰一人として知る者はいない。




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