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時き継幻想フララジカ 第二部 『乱界編』  作者: ひなうさ
第二十節 「心よ強く在れ 事実を乗り越え 麗龍招参」
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~魔剣強化プロジェクト~

 7月下旬……学生達が夏休みへと入り、街中ではいつも以上に人で溢れ賑やかさを増す時期。

 それは白代高校も当然同様であり……部活に所属していないあずーにとっては、いわゆる「高校最後の試合」というものが無く、障害は僅かな宿題のみとなり悠々自適な生活を送れる一か月半となる。


 本来であればその期間に大学進学や就職活動を行うのが専らではあるが……彼女の進退は既に決まっているからこそ。




 当然行く道は……彼等同様、魔特隊への入隊である。




 眩しい日差しが照り付けるその日、久々に本部へ訪れたあずーを見た事情の知らぬ者達が驚きの声を上げていた。


「あれぇあずさん髪型変えたッスか? 前の方が尻尾っぽくて可愛かったッスよ」

「違和感はあるが……うむ、その方が戦いやすかろう」

「ヌッ、拙僧には見分けがつかぬ……お許しくだされ」


 その反応は様々ではあるが、特に魔者勢に至っては……彼等なりの妙な視点での意見を前に苦笑いする事しか出来ない。


 そこは魔特隊本部にある会議室……福留から要請があり、総員が集まる事となっていた。

 それに伴い、夏休みへ入ったあずーも収集される事となった訳である。


「私も最初見た時はびっくりしたもん……壮大なイメチェンかって」


 机の上で腕を組み顎を載せてそう答える瀬玲……「お隣さん」である彼女が気付かないはずも無く。


「あはは……でも何も変わってないから平気だよ~」


 相変わらずのニコニコした表情を見せる彼女の事を心配する者は最早居ない。

 事情を知る勇もまた、そんな彼女を前に安心した笑顔を見せていた。


「んでさ、今日は何があるの?」

「それはッスねぇあずーさん……ボクが遂に真価を発揮する時が来たッスよ……!!」

「真価ってアンタ……カプロ君ムキムキのバノさんみたいになっちゃうの?」

「え、それは嫌だなぁ……」

「違うッス!! それは『真価』じゃなくて『進化』ッス!! 面倒くさいッスね翻訳能力!!」

「え~わからないんだけど……」


 そんな会話が隅で話を伺っていたズーダーの笑いのツボを突いたのだろうか、途端「ブフッ」と盛大に吹き出す様を見せる。


「とにかく……ようやくボクの研究成果が纏まったんで皆に正式なお披露目する事になったッス。 度肝抜くといいッスよ」

「なんで『度肝抜く』とかいう言葉はわかるんだ?」

「そりゃボクが勤勉だからッスよ。 伝わらないのも嫌なんで今のは半分日本語で話してたッス」


 カプロが自慢げにそう語り、手に取った物を見せつける。

 そこに握られていたのは……【君が最強だったら僕は最弱でもいい】と表紙に描かれたライトノベル。

 それを見た『こちら側』勢はと言えば……全員が目を座らせていた。


「フッ、そんな熱い視線を向けなくても言いたい事はわかってるッスよ」


 果たして一体どこからそんな物を手に入れたのかは誰にもわからない訳ではあるが。




 そんな他愛もない雑談をしていると……不意に足音が聞こえ、間もなく福留が姿を現した。


「こんにちは皆さん、どうやら揃ってらっしゃる様ですねぇ。 えぇ、いつも助かります」


 指定した時間に訪れた福留がそう言いながら会議室奥の壇上にある椅子へ座ると、自身の懐からタブレットを取り出し操作し始める。

 器用な指先で画面を手馴れた様に操作すると、事務所内に存在する独立ネットワークへ何かしらのデータの送信を始めていた。


「早速ですが話を始めましょう。 幾人かはもうご存知の事だと思いますが……ようやく成果が出ましたのでここで報告をしようと思いましてね」


 そう伝えると、画面をタッチした手が細かく動く。

 途端、会議室にあるプロジェクタが光を照らし、スクリーンに福留が操作した映像が投射される。

 するとそこに映った画像を見た多くの者達が驚きの声を上げた。




 そこに映るのは魔剣強化プロジェクトという文字。

 そしてその傍らに僅かに映るのは……心輝達が見たプロット図ではなく、実物の写真であった。




 絵だけであればここまで驚く事は無かったであろう。

 既に計画が進んでいた事に、知っていた者達も驚きを隠す事は出来なかった。


「ズーダーさん、例の物を車に積んでいますので工房の物と一緒にこちらまで持ってきて頂けますか?」

「了解した、しばし待たれよ」


 ズーダーが指示の元、会議室から出ていくと……福留が引き続き話を始めた。


「カプロ君と魔特隊研究班の共同研究を行いまして……カプロ君の指導の下、皆さんの魔剣の強化案を実行に移しました。 とはいえ、当初予定していた『改造』という形では皆さんの魔剣をお借りする形と成ってしまう為に納得いかない方もいらっしゃるという事でしたので……今回は皆さんの魔剣への部品装着を行う事でその強化を図りました」


 スクリーンに映し出されたスライドが切り替わり、表が表示される。

 そこに映し出されたのは各々の強化案や強化の方向性を記した表であった。




///////////////////////////


藤咲勇……アラクラルフ代替品の製作、または別の方向性の検討(検討中)

田中茶奈……新造魔剣の製作着手(現在進行中)

園部心輝……グワイヴIIの製造(済)、グワイヴ・イグナイトへの強化パーツ製造(済)

園部亜月……エスカルオール・ラナンティへの強化パーツ製造(済)

相沢瀬玲……カッデレータ・エファへの強化パーツ製造(済)

レンネィ……シャラルワール・アイエットへの強化パーツ製造(済)

アージ……アストルディの調整機構モジュールの製造(済)

マヴォ……ヴァルヴォダ・デレッサ、イムジェヌ・デレッサへの強化パーツ製造(済)

ジョゾウ……新造魔剣・天之心得(あまのこころえ)の製造(済)

アンディ……レイデッターの調整機構モジュールの製造(進行中)

ナターシャ……ウェイグルの調整機構モジュールの製造(進行中)


///////////////////////////




「これが皆さんの魔剣の強化に関する現状の情報となります。 まだ間に合っていない方もいらっしゃり申し訳ありませんが……当初予定していた仕様はおおむねクリアしたので今回公開する事となりました」


 それぞれの強化に関する情報を見た各々の目が輝く。

 特に心輝の顔はまさに子供が新しいおもちゃを得たが如き眩い輝きを放っていた。


「さてここからは技術的なお話もあるのでカプロ君に直接説明して頂きますねぇ」

「了解ッス」


 指名をされるや、カプロが元気良く立ち上がり素早い動きで壇上へと足を運んだ。




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