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時き継幻想フララジカ 第二部 『乱界編』  作者: ひなうさ
第二十節 「心よ強く在れ 事実を乗り越え 麗龍招参」
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~激闘に倒れ静まれりし夜~

 突然の剣聖の登場にびっくりし唖然とする瀬玲であったが、そんな彼女へ遠慮する事も無く剣聖がつま先で彼女の足をゴンゴンと小突き始めた。


「いたっ、痛い、止めてよ!!」

「アイツも面倒くせぇがおめぇも相当面倒くせぇ!! 魔剣使いたぁ何が起きてもいい様に準備するモンなんだぁよォ~!!」


 彼にとっては相手が男だ女だといった事など関係は無い様で、気遣いなどする事も無く彼女を押し出していく。


「三対一でもいいからとっとと行けってんだぁよォ~いつまでも尻込みしてるとあいつらから見捨てられるぞォ!?」

「わ、わかりましたっ、わかりましたよ……行けばいいんでしょ? もぉ~……あーヤダヤダ」


 不本意ながらも剣聖に逆らう事が出来る訳も無く……渋々瀬玲も破れかぶれで突撃していくと、そんな様子を茶奈が目で追い見守る。


「なかなか面白れぇ事してるなぁと思って来てみれば、なんでぇやられ側が大した事ねぇだけじゃねぇか……」

「す、すいません……」


 不意に漏れる不満の声につい茶奈が謝ってしまうが、そんな事など耳に入ったのかどうか……その視線を映す事無く呟き続ける。


「まぁなんだ、アイツも相当やるようになったじゃねぇか。 これで人並み程度にも命力がありゃまだ見込みはあるんだけどなぁ」


 そんな話をしている間に、瀬玲が勇に叩かれ宙を舞う。


「アイツがやってる事は全てじゃあねェが……かなり的確だ。 アイツに出来るだけ近づける様にやってみな。 茶奈、おめぇならそれくらい訳ねぇはずだからよぉ」

「は、はい……頑張ります!!」


 二人のコンビネーションに押されながらも反撃により二人を翻弄する勇の姿を見て……剣聖の口元がそっと口角を上げる。


「体造りだぁな……おめぇはまずそこからだ」

「そこはボチボチ……あ、いえ、すぐに改善頑張ります……」

「おう」


 そして逆転を奏した勇がアージとマヴォを叩き伏せ、大きく肩を動かし息を上がらせながらも部屋内中央に立ち佇む。


 そんな姿を、剣聖は力強く見つめ―――


「終わった様だなぁ……面白れぇから俺も混ぜろや!!」

「え、剣聖さんが……!?」


 疲弊しきった顔で驚きの表情を作り剣聖を見つめる……だがすぐさまにも勇は顔を引き締め、鋭い眼光を浮かべて剣聖を睨み付けた。


「お願いしますッ!!」

「おう、ちったぁ手加減してやらぁな」


 弱った体でなんとか巻き込まれない様に床を這いずりながら逃げていく瀬玲達。

 そんな彼女達など気にも留める事無く剣聖が歩き勇へと近づいていく。


 腕をぐるぐると回し、体を慣らしながらゆっくり歩んでくる剣聖を前に、勇は身構え次に来るであろう一瞬をじっと待ち構えし続けた。






―――







「……まぁ、そうですよね」


 茶奈が目を点にしながらボソッと呟き、周りの者達も静かにそれに同意し頷く。




 そんな彼等の視線の先……コンクリート製の壁に突き刺さる勇の体。

 生きてるのかどうかすらわからない程に足が力無く左右に振れていた。




「おう、もうちっと楽しませてくれるかと思ったんだがなぁ~」

「い、いや剣聖さん、勇は連戦で消耗してたし!!」

「んなの言い訳にしかならねぇよぉ~……」


 剣聖はそうぼやきながら溜息を吐き……ガッカリとした表情のまま広間から立ち去っていった。


「あっ……勇さんあのままじゃマズいんじゃ」

「あっ」




―――




 その後、仲間達は慌てて勇を救助し……医務室へと担ぎ込んでいった。

 凄まじい攻撃を貰ったにも拘らず、幸い大きなダメージは無く……茶奈の軽い命力提供で済む程度で落ち着いていた。


 恐らく一撃に剣聖が細工を加えたのだろう。


 とはいえ、蓄積した彼の疲労は相当な様で……気を失ったままベッドに寝かされた勇の顔はまるで死んだかのように静かに寝息を立てていた。


「これでよしっと……勇さんおやすみなさい」


 そう呟くと……茶奈はそっと布団からはみ出した腕をその中へ押し込み、ゆっくり立ち上がった。

 そのまま部屋の外へと歩くと……不意に「パチッ」という音が鳴り、途端に部屋の明かりが消え青暗さが間を支配した。




 既に時刻は午後7時過ぎ……外は暗くなる時間帯。




 部屋で勇を看病していた茶奈を待つ様に、心輝達が彼女を迎え……共に歩いていく。


「今日は随分疲れたからなぁ~美味しい物でも食って来ようぜ?」

「いいねぇ~」

「あ、じゃあちょっと家に電話入れますね」


 そんな何気ない会話が廊下に響き、彼女達の後姿が階下へと消えていった。




 激戦を伴った、彼等の日常でもあるこの一日はこうして過ぎ去っていった。




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