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とある女子大生の決意

作者: 木村アヤ

 今年で19歳ですが、私は携帯電話を持っていません。言葉遊びではないので当然スマートフォンもiPadの類も持っていません。自分用のパソコンもないので、僕が使えるデジタルデバイスは通っている大学のデスクトップPCだけです。なぜ買わないといけないのでしょう。私にはわかりません。

 とはいえ、大学一年生の時は私もスマートフォンを持っていました。iPhone6です。当時の最新鋭です。しかし、お母さんには毎月七千円くらい払ってもらっていました。お母さんはパートなので、そんなに余裕はないはずです。

 お父さんはいません。

 母子家庭なのです。

 イエイ。

 なので三月くらいに解約しました。そんなに使いませんし。

「つまり、友達がいないってことかな?」

 英語の授業が一緒な奈々子ちゃんはそう突っ込んできます。皆でお昼ご飯を食べているときにそんな風に言わないでほしいですけど、これに関しては私にも責任があります。わざわざそんな場で暗めの、しかも時勢に反するようなことを言わなければよかったのです。しかし私は話を振られたから広げてみただけで、振ってきた方にも責任があります。結局、誰のコミュニケーションスキルも完璧ではないということなのでしょうか。

「友達がいない大学生活なんてねぎとチャーシューと海苔とスープ抜きのラーメンだよ」

「それただの麺じゃん」

 奈々子ちゃんのボケにツッコミを入れたのは私ではありません。本来なら私が入れるべきツッコミだったでしょうか? 

 まあでも、私以外にも黙ったままの人はいますし、今日はよくしゃべった方の私が彼女らを見下しているかというとそうでもありません。彼女らも同じように私のことを見ていてくれてると信じます。

 共学なので、テーブルを囲む中には男子もいます。彼らがいると自然とそんなに場が荒れません。

 問題なのはその男子三人の内の二人がラクロス部で、何やら変な格好をしているということです。

 片方はもう昼食を食べ終わって、手持無沙汰に半袖の運動着の中にカメみたいに両腕を引っ込めて、まだ食べ終わっていない私達のご飯をじろじろ見ています。

 もう片方はだいぶましなのですが、だいぶ前に椅子からずるずると滑り下りて行って、私からは顔と右手に持ったスマートフォンしか見えません。画面をじっと見つめて親指がぱっぱと動いています。ゲームをしているのでしょうか? 

 ああやって知っている人の前で堂々とゲームができるのはすごいなと思います。いえ、実は私、iPhone6を持っていたころは、通学の電車の中で、一時間くらいずっとオンラインゲームをしていました。でもなんだか知り合いにゲームをやっていることを知られるのは恥ずかしいのでこういう場ではやりません出来ません。

 でも聞いた話によると、寮の中には皆が集まるスペースにWiiが置いてあるものもあるそうです。友達とスマブラをやったりするんだとか。

 奈々子ちゃんは寮生ですが、どうでしょうか、やったことがあるのでしょうか。

「ねえ、奈々子ちゃん……」

 とは口に出していません。危ないところでした。今話題は全然違うところにあります。こんなことを聞いたら変に思われるだけでしょう。

 いえ、変に思われることはないのでしょうか? 単なる話題の転換ということになるのでしょうか。話ができる人は、そこらへん、あまり気にしないのでしょうか。

 だとしたら私は会話に向いていないと思わざるを得ません。

 とうじうじ私が考えている間にも、中心で会話に参加している三人は、楽しい時間を過ごしているのでしょう。

 会話は技術だよ、と奈々子ちゃんは二人きりの時に私にそう言いました。ならばうまく喋れない私は、技術的に劣っているということで、それならば私の前には選択肢が現れます。

 その1。技術的に劣っている、だからうまい人を見て向上しよう。

 その2。技術的に劣っている、だから諦めて何か別のことをしよう。

 私はその2を採択しました。明日からこのランチに参加することはないでしょう。楽しくない時間になるとわかっていながら参加するのは、体に悪いと知りながら煙草を吸うのと、あまり変わりがないような気もしますしね。

 

 

 

 

と思っていながら結局また行くんですよね、大体は。


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