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旧魔王VS.異世界魔王!~世界のすべては我輩のものだ!~  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第二章 旧魔王大躍進!

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第63話 エメルディアの本気!

 魔王姫城の地下にある天井の高い人形工場。

 エメルディアが泣きながら叫んだとたん、広い工場全体から、ガシャガシャと耳障りな音が響いてきた。


 それは人形の群れだった。

 作りかけだったはずの人形がユーシアへ向かって集まってくる。

 人形は歩きながら腕ができて頭が付き、すごい勢いで完成品の人形となった。

 とはいえ、髪や顔はなく、色もない。等身大のマネキンのような形だった。



 それらが次から次へと無数に押し寄せる。


「に、人形があんなにたくさん……」

 怯えた雷巨人ヤルンストラがドレスを揺らしてユーシアに近づく。


 ユーシアは無言で彼女の腕を取ると、作業台の上に引っ張り上げた。

「ここにいろ。ここが一番遠い場所だ」

「あ、ありがとうございます……」



 一方ユーシアはふてぶてしい態度を崩さなかった。

「しょせん、人形を作るだけの能力。子供の遊びにすぎん――だが、少しばかり面倒だな」

 天井や床、壁や柱を見ながらつぶやく。


 ――派手な魔法を使ってこの城の機能を壊してしまってはもったいない。

 ならば、呼ぶか。そろそろ頃合いであるし。



 エメルディアは涙を散らしつつ幼い声で怒鳴る。 

「今さら後悔しても遅いのじゃっ! 貴様はここで死ぬのじゃあああ!」

 ますます人形が集まってきた。


「ふんっ。我輩が死ぬわけなかろう。終わるのは貴様のほうだ」

「この期に及んで強がりを!」


「では見せてやろう! ――いでよ、究極かつ完全なる美男子たる我輩よ!」

 ユーシアが床を指さすと、カッと眩い光が放たれた。


 

 そして、光の中にユーシア、アンナ、リスティア、ゲバルト、シルウェスが浮かび上がる。

「ユーシアさま!?」

「二人もいる!」

「えっ、どちらが本物だ!?」



 二人のユーシアは声を揃えて笑った。

「「これほどの圧倒的な存在が、別人の訳がなかろう、フハハハハッ!」」


 ユーシア同士が豪快に高笑いしながら手を伸ばした。

 お互いが引き込まれるように重なり合って、一人になる。


 エメルディアが顔を引きつらせて一歩下がる。

「な、なんじゃと……さらに力が増えおった……なんという、荒唐無稽な奴なのじゃぁぁあああ!」


「ふむ。思い通りにいかないとヒステリーを起こすタイプか。ますます子供だな」

「くっ、言わせておけば! 押しつぶされてしまえ!」

 エメルディアが悔しそうに唇をかんだ。

 無数の人形がユーシアたちの周りに押し寄せる。



 ユーシアは黒マントをばさっと広げて指示を飛ばした。

「――さあ、我輩の忠実なるしもべたちよ! 子供のままごとに付き合ってやるといい!」


「ははっ! ユーシアさま! 今すぐに」

 真っ先にゲバルトが駆け出した。人形の群れに切り込んでいく。巨大な剣を一振るいするだけで、木製の人形は木っ端みじんに砕けた。



 続いてシルウェスがふらつきながらも細身の剣を構える。

「だいぶ魔力を失ったが……人形が相手なら問題ない。すべて燃やしてくれようぞ! 我が名シルウェストリスと契約せし、火の精霊イグニータよ! 呼びかけに応じ、燃え盛る剣となれ! ――炎剣召喚イグニスウォカーレ

 刀身から炎が上がる。


 人形たちの攻撃を軽やかにかわしつつ、的確に肘やひざ、腰などの関節を破壊していく。

 そして燃え盛る剣が触れただけで人形は次々と炎に包まれた。


 またゲバルトが破壊した人形に追撃して燃やすことも忘れなかった。



「よーし、あたしもやっちゃいますよ~! それっ!」

 リスティアも日傘で人形を叩き壊していった。



 ユーシアも腕を振るって人形を瓦礫の山へと変えていく。

 ハエでも叩くように無造作に。彼の顔はつまらなさそうだった。

「ふん、なんの面白みもない」


 ユーシアの陰で縮こまっているアンナが首をかしげる。

「それは、人形が弱いからでしょうか?」

「我輩の相手をするには力不足! 魔王姫軍四天王のほうがまだ骨があったわ!」



「くぅぅ! 妾の可愛い人形たちをバカにするとは許せんのじゃ! 後悔させてくれようぞ!」

 涙ながらに怒りをぶちまけると、エメルディアは果てしなく広い工場の奥へと走っていった。


「何をする気だ?」

 ユーシアが眉をひそめて眺める。


 エメルディアは広々とした場所へ出るとしゃがみ込んで床にぺたんと手を突いた。

「妾の力を思い知るがよいのじゃ! ――いでよ! 古代巨人人形エンシェントギアドールよ!」


 カッ! とエメルディアが手を突いた床を中心にして光が放たれる。


 そして床の下からゴゴゴッと地響きを立てて巨大な人形がせりあがって来る。

 全長18メートルを超える巨人を模した人形。仁王のように怒りの形相をしている。

 しかも機械式の人形なのに、戦斧や鎧まで装備していた。


 ユーシアが目に楽し気な光が宿る。

「ほう? 少しは楽しませてくれるようだな? ただ残念だったな。大きいだけの傀儡では何の意味も――」



 巨人人形が全身を現すと、エメルディアはパンッと手を叩いた。

 すると、巨人のみぞおち辺りが開いた。中には椅子や計器類がある。コクピットのようだった。


 エメルディアは巨人の足を踏み場にして一気にコクピットへと飛び込む。

 中の椅子に座ってレバーやボタンを操作しながら激しい怒りをぶつけてきた。

「これぞ妾の究極の力! ――妾が直接操る古代巨人人形エンシェントギアドールの力の前に屈するがよいのじゃ!」


 みぞおちの扉が閉まっていく。



 それを見ながらユーシアは歓喜の表情で体を震わせた。

「おおおおおっ! やるではないか! そんな奥の手を隠し持っておったとは――ッ! 人形の強さに直接指示を出す操作性! 最後の最後で弱点を克服した武器を出してくるとは敵ながらあっぱれ! ――これは我輩も負けてはおられん!」


 アンナの美しい顔に嫌な予感が走った。

「い、いったいどうされるおつもりで?」

「決まっている! 真っ向勝負あるのみ! ――いでよ、闇魔神石像ダークゴーレム!」


 ズドォォンッ! と重たい地響きを立てて、見上げるほど高く巨大な石像が召喚される。相手と同じ18メートルほどの全長。

 ただし、エメルディアの巨人人形に比べると、石製のためか少しずんぐりしていた。



 アンナがびっくりして青い瞳を丸くする。

「えええええ! ここから魔法を使えば倒せそうですのに! どうして巨大石像で張り合ってしまわれるのですか!」


「そんなもの、巨大化して戦うのは男の浪漫だからに決まってる! これぞまさしく最終決戦! 男と男のプライドを賭けた戦いだ!」


「相手はどうみても可愛らしい女の子さんでしたよっ、ユーシアさま!」


「男と男の戦いに性別など関係ないわ――ッ!」


「もう、言ってることめちゃくちゃです、ユーシアさまぁっ!」

 金髪をふり乱して叫んだ。

 が、テンションマックス状態のユーシアの耳には入らない。



 ゲバルトは大剣を振るいながら感心する。

「相手が誰であっても決闘を正面から受け止める。さすがこの世でもっとも強いお方だ」


「相手に秀でたところがあれば女子供でも力を認めるとは、ユーシアさまの心広さには感服するばかりだ」

 シルウェスもまた変なところで感心していた。



 一方、ユーシアは黒マントを翻して巨大ゴーレムの肩に乗る。

 巨人の頭に手を当てつつ、右手で巨大人形ギアドールを指し示す。

「さあ、神々と戦いし闇のゴーレムよ、あの人形を蹴散らせ!」


 ウォォォン!


 ゴーレムが吠えて一歩踏み出す。ずしんと重い音が床を揺らした。



 エメルディアの操る巨大人形ギアドールもまた、背中から柄の長い戦斧を引き抜いて両手で構える。

「妾とギアドールのシンクロ率120%! もう誰にも止められぬであろう! いくのじゃ!」


 ギアドールが駆け出した。巨大な体格に似合わぬ素早さで。


 部下たちが固唾をのんで見守る中、ユーシアだけは笑っていた。

「フハハハハッ! よいぞ、よいぞ! この迫力は本物! 楽しもうではないか、フハハ――ぐわぁ!」 


 ガァァンッ!


 ギアドールの戦斧がすさまじい速さで繰り出され、ゴーレムは防ぐ間もなく吹き飛ばされた。

 工場の天井を支える柱を何本もなぎ倒しつつ、ゴーレムは埃を上げて床に突っ込む。


「いやぁぁぁ! ユーシアさまぁぁ!」

 アンナの痛切な悲鳴がだだっ広い人形工場に響いた。

時間が空いてすみません。あと2~3話で終わります。

次話は明日更新。


新作始めました。

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