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第49話 シャルウィーダンス?

 遅れてすみません。最近書いてて面白くない原因が判明したので修正しました。

 第47話にユーシアの指導者としての活躍を追記。

 第48話に不穏な未来の謎を追記&ネズミが対立相手として機能していなかったので大幅修正。

 熱い日差しが降り注ぐ獣人国ベスティエの平原で、ユーシアは魔王姫軍第三軍の魔獣ネズミたちと対峙していた。

 

 先頭に立つ人型をしたネズミが軽快にタップダンスを始める。

 先ほどユーシアの攻撃をかわしたので喜んでいるらしい。

「ハハッ! どうしたんだんだい? 君の実力はそれで終わりかい? 怖がらなくても、すぐに夢の世界へと旅立たせてあげるさ!」


 ユーシアは顎をなでつつ不敵に笑う。

「ほほう? たかが下等動物にできるのか? よかろう。やってみせよ」



 偉そうな物言いに、ネズミの眉間にしわが寄る。

 しかしすぐに笑顔になると両手を大げさに広げた。

「いいとも! やってあげるさ! 僕の作り上げたネズミーランドの必殺技、エレキテルパレードをね! ――さあ、みんなやるんだ! ハハッ!」


 地を埋め尽くす無数のネズミ人形が金色に光り始めた。

 バチバチっと白い火花が散る。


 巨大ネズミはの上から叫ぶ。

「ハハッ! それいけネズミたち! 10万ボルト! そのあと電光石火だ!」

「「「ピカァァァ!」」」

 無数のネズミたちが光った。


「くっ! そっちのネズミかっ!! ――恐れを知らん、バカどもめ!」

「「「ピカァァァ!」」」

 光ネズミたちが高らかに叫んだ。


 カッ! とまばゆい閃光が走る。

 ネズミたちから放たれた電光が無数の雨となってユーシアを襲う!



「ふんっ――収縮・暗黒闇星波ダークグラビトン

 

 軽く上げた右手に黒い波動が集まる。

 しかし、雷の早さに魔法が間に合わない!


 ドゴォォォン!


 ユーシアを中心に縛炎が巻き起こった。


 側にいたリスティアがアンナをかばいながら叫ぶ。

「ユーシアさまぁ!」

「ユーシアさまっ!」

 アンナもリスティアに守られながら叫んでいた。


 ネズミは飛び上がって足を叩き合わせて鳴らした。

「ハハッ! 間に合わなかったようだね! でも君はがんばったよ、うんうん!」

 満面の笑みで腹を抱えて笑った。



 ――が。

「ほう? なにを勘違いしている?」

「なにっ!?」


 煙が晴れるとそこには無傷のユーシアが立っていた。

 ニヤリと犬歯を見つけるように残忍な笑みを浮かべると、胸を反らして笑った。

「心配するのは自分の部下たちのほうだろう? ふははははっ!」 


「な、なんだって!?」



 煙が晴れると、ネズミたちの半分がぼろぼろになって倒れていた。

「い、痛いでちゅ……」「苦しいでちゅ……」「おるちゅばんでちゅ……」


「そんな――っ! いつの間に!」


「いつ守るために魔法を使うと言った?」

「えっ?」

「影か異空間からの投影かしらんが、移動や攻撃するときは実体化せねばならんのだろう? 我輩にはお見通しだ! ふははははっ!」


「くっ! いったいどうすれば……」

 ネズミが悔しそうに歯ぎしりした。


 アンナが金髪を揺らして喜ぶ。

「さすがですわ、ユーシアさま!」

「ユーシアさまを倒せる敵なんていないんだからっ!」

 リスティアも手を叩いて喜んでいた。



 ユーシアは仁王立ちして胸をそらす。

「ふんっ。貴様らの攻撃など効くわけがなかろう?」


 悔しがっていたネズミは急に態度を変えた。悲しげな顔をして両膝をつく。

「ごめん。謝るよ。君は想定以上に強かったよ、僕の負けさ、ハハッ」

「ほほう? なかなか殊勝なことを言い始めおったな? ……貴様、なにをたくらんでおる?」


 

「たくらむだなんて、僕は心から間違いに気づいたのさ! 君には勝てない。だから、どうしても謝りたいのさ。僕のダンスでねっ!」


「ダンスだと?」

 ユーシアは眉をひそめて睨む。


 しかしネズミは手を合わせて懇願を続ける。声が平原に悲しく響いた。

「一度敵対してしまった僕が、どれだけ言葉を連ねても心は伝わらない。だからダンスに乗せて謝罪の心を伝えるのさ」

「なるほど。芸術は心を表すものであるからな。それにネズミは踊るのがお似合いだ」


 ユーシアは深くうなずいたが、後ろのアンナが不安げに寄り添う。

「だ、大丈夫でしょうか?」


「案ずるな! なにが起ころうとも我輩が粉砕してくれるわ! ふははははっ!」

「うんうん、その通りさ! ユーシアさまはとっても強い! 僕なんかがどんな策を弄したってすべては無駄に終わるのさ、ハハッ!」



「わかっておるではないか、よかろう。踊ることを許可する」

 ニヤリと鋭い犬歯を光らせてユーシアは言った。


 その言葉に、ネズミは白い手袋をはめた手を叩いて笑った。

「わぁ~、ありがとう! ――これで僕の勝ちだよ、ハハッ!」

「なんだと?」



 ネズミは宙返りをして立ち上がると、片手を高く掲げた。

「レッツパーティー! ――ダンスホール、ビジョン!」

 パチン、と指を鳴らす。

 そのとたん、あたりの景色が蜃気楼のように歪んだ。


 

 ユーシアがネズミを見つめたまま叫ぶ。

「下がれ! アンナ、リスティア、ゲバルト! ――こやつ、異空間を生み出すぞ!」

「え、なんのことで……」「ふぇ?」「くうっ!」


 ユーシアが一歩踏み出したときには、すでにきらびやかなダンスホールに周りを取り囲まれていた。


 丸いホールは中央がステージで、客席が取り囲んでいる。

 客席にはネズミたちが着席して、ステージ中央にいるユーシアたちを拍手や口笛を吹いてはやし立てていた。

 壁は劇場のように二階三階の客席があって、貴族のような衣服を着たネズミが優雅に振る舞っている。



 丸いステージにスポットライトが当たった。

 燕尾服を着た尊大なネズミが、うやうやしくお辞儀をする。

「ようこそ、僕たちのダンスホールへ。どうだい? 夢の国にふさわしい催し物じゃない? ハハッ」


「極小の異次元を生み出し、世界のルールを変えおったな……。おそらく魔法や能力はすべて使えまい。――が、それは奴も同じはず」


 ネズミが満面の笑みでうんうんとうなずく。

「その通りさ! ここは暴力の禁止された世界。決着はダンスバトルで決める! ――まさか踊れないとは言わないよね? すでにダンスを許可したのは君なんだから! ハハッ!」


「ほう。互いの同意の上で、どちらが素晴らしい踊り手か競うというわけか……ネズミにしてはよく考えた、と褒めてやろう」

 あくまでユーシアは悠然とした態度を崩さなかった。



 アンナが修道服を揺らしてユーシアに近寄った。

 美しい顔が不安げに曇っている。

「ユーシアさま、どうしましょう……」


「ここでは奴がルールのようだな。乗るしかない」

「で、でも。ダンスなんて……」

 アンナはほっそりした指先でユーシアのマントをぎゅっとつまんだ。


 しかしユーシアはいつも通り胸をそらして高笑いする。

「畜生のダンスなど、踊り食いにしてくれるわ! フハハハハッ!」


 スポットライトの当たったネズミが観客へ呼びかけようとする間も、ユーシアの堂々とした笑い声がダンスホールに響き続けた。

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