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旧魔王VS.異世界魔王!~世界のすべては我輩のものだ!~  作者: 藤七郎(疲労困憊)
第一章 旧魔王降臨!

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第32話 姫騎士を陥落させる方法

 午後に日差しの降る荒野で。

 ユーシアはエルフのシルウェスと決闘していた。



 奥義を防がれたシルウェスは怯えながら剣を構えている。


 ユーシアは震える彼女へ手を向ける。

「どうした? 子羊のように震えておるぞ。――闇波ダークウェーブ


 右手から黒い波動がほとばしる。魔法というより、魔力の塊を飛ばしただけに近い。

「かはっ!」

 みぞおちに辺り、彼女は体をくの字に曲げて吹き飛ばされた。鎧が凹む。



 シルウェスは剣を手放しはしなかったものの、信じられないものを見る目付きでユーシアを見ていた。

 勝てる方法が見つからなくて戦意を喪失したようだ。


「さあ、どうした? なぜ反撃しない? ほら、次だ――闇波ダークウェーブ

 黒い闇の塊が右手から飛ぶ。


 ドゴォッ!


「うあっ!」

 太ももに当たり、彼女は地面を転がった。

 スカートが破れて白い肌が太ももまで見える。



 ユーシアはバカにしたような目で見る。

「避けることすらできんのか? ただの魔力弾を――ほらほら」


 ドッ、ドンッ!

 さらに2発の黒い光が右手から発射された。


 シルウェスの胸や腹に当たって、彼女は木の葉のように吹っ飛び、地面に落ちた。

 鎧は砕け、上着が少し破れる。滑らかな曲線をもつ肢体が日の下に晒された。

「ふははははっ! 最初の気合はどうした、小娘よ!」



 大木の傍で酒を飲んでいた獣人ゲバルトがぶるっと身震いをする。

「なんという恐ろしいお方だ……相手の奥義を受け切って、何をしても無駄だと知らしめた後で、一番弱い魔法で相手を痛めつけて実力差を思い知らせる……俺だったら引退を考えるほどの恐ろしい仕打ちだ」


「ですよね、ユーシアさまは最強の魔王さまなのです!」

「魔王姫軍の師団長を打ち破る雄姿、まさに勇者ですわ! 胸がドキドキします……」

 リスティアとアンナが正反対の想いを抱きながら喜んでいた。



 シルウェスは道に膝を付いてうずくまると、すらりとした手で美しい胸と足を隠した。

 赤髪が垂れて、背中や胸の白肌を隠す。


 もう立ち上がる気力もない様子。

 苦しげな呼吸でツンと上を向く胸を震わせながら、悔しさの滲む言葉を搾り出す。

「くっ、殺せ!」



 ユーシアが近付いて下着の見える半裸の彼女を見下ろす。

「貴様の覚悟はその程度か?」

「かっ、覚悟だと! 死ぬ以外に何があるというのだ!」


「ふん、なにがエルフの国のため、エルフの未来のためだ。貴様は何もできていないではないか! 口先だけだ!」

「こ、これが私の精一杯だ――」



 ユーシアが鼻で笑った。

「精一杯? なぜ集中砲火が効かなかったら次の攻撃に移らなかったのだ? 貴様は三重召喚ができる。まだまだ強力な組み合わせはあるはずだ。火水光などがあるな。しかし貴様は心が折れて地べたを這うばかり。――奥義が一つあるからと自己の鍛錬をおろそかにした結果ではないかっ! それのどこに国を守る覚悟があるというのだっ!」


「う……っ!」

 図星を指されて美しい顔を歪めた。言い返そうとするも赤い唇は震えるばかり。


「切り札が一枚だけで守れる国がどこにある! 何枚も用意してこそ意味があるのだろうが!」

「し、しかし、私は火が得意で……」



 ユーシアは彼女を指差して怒鳴る。

「しかしもへったくれもないわっ! 貴様の弱さの原因は、自分で勝手に限界を作ってそれ以上努力しなかったことにある! 少しは骨のある奴かと思えば、とんだ甘えん坊であったわ! ――さあ行くぞ、お前たち。今日中にエルフの国を滅ぼそうではないかっ」


 ユーシアは踵を返してアンナたちのいる大木へと歩き出す。


 すると、シルウェスは細い腕を伸ばして、彼の後ろからマントを掴んだ。

 隠されていた体が、日の下にさらけ出されて震える。


 美しい瞳に涙を浮かべて訴えてきた。

「ま、待ってくれ……。エルフの国だけは、滅ぼさないでくれ……何でもするから。私を好きにしていいから……」



 ユーシアは肩越しに振り返り、片方の眉だけを上げて見下す。

「ほう、何でも? ――では聞こう。一つの国と釣り合うほどの価値が『今のお前』にあるのか? まさか自分は美しいから価値があるとでも言うのではないだろうな?」


「う……」


「言っておくが我輩にはあるぞ! 国どころではない、世界と釣り合うだけの価値がな! さあ、貴様はどうだ? エルフの国と釣り合う価値があるのか。――我輩が尋ねておるのだ、答えよ!」


 ユーシアの迫力ある怒声に、シルウェスだけじゃなく、観戦していたアンナやリスティアまでもが震え上がった。



 彼女は細い体を震わせて目を伏せた。荒い呼吸に、長い睫毛が震える。

 美しいエルフとして、気高い王女として、そのプライドが答えを阻む。

「……ぃ」


「聞こえんな!」


「私に――価値はない――ッ! ……くぅっ!」

 叫んだシルウェスの目尻から、清らかな涙がこぼれた。なだらかな頬を伝い、華奢で美しい鎖骨まで濡らす。

 涙は砕けたプライドの破片かもしれなかった。


 シルウェスはユーシアを下から見上げるものの、翡翠色の瞳からは涙が止まらない。

 雫はキラキラと光ながら地面へ零れた。



 ユーシアは急に優しい笑みを浮かべる。

「では、聞こう。百年後になら、貴様は一国と並ぶ価値のある女になれるか?」

「えっ? ――それなら、なれる!」

「どうやってだ?」


 シルウェスは一瞬息を飲んだが、頭を振って涙を散らすと即座に言った。

「剣技の鍛錬。精霊召喚による合成魔法の研究。軍隊運用。――いや、それだけではなく王女として国家制度、農業の発展、物流の改善、国民の政治参加、すべてを勉強し直して、どんな国でも発展させられる人物になろう!」



 ユーシアは腕組みをしていたが、うむっと頷く。

「まあ、だいたい正解か。では、それを50年ではできるか?」

「で、できる!」

「10年では?」


 シルウェスの翡翠色の目が少しだけ泳いだ。

 しかしすぐに言う。

「できる!」



 ユーシアはにやりと笑うと、指を突きつけた。

「ならば3年で国と釣り合うほど価値のあるエルフとなれ! ――もちろん、我輩にとって価値のある人物だぞ! できるか!?」


 シルウェスはぐっと歯を噛み締めて、目を強く閉じた。

 すぐに顔を上げてはっきりと言う。

「はい、ユーシアさま、やってみせよう!」



「よかろう。ならば貴様の願い、叶えてやろう! ――我輩の左手薬指は赤の三番! シルウェストリス・フトゥーラを真紅三席トリオストルムに任命する――召喚従者契約ギアス!」


 半裸の彼女の胸元に左手薬指を押し付ける。

 赤い光が指先に集まり、彼女の体を貫いた。

「あぁ――っ!」

 びくっと震えて、地面に倒れ込む。赤い髪が広がった。


「エルフ国の存続は今日から三年間の、貴様の努力に掛かっていることを忘れるな! 奴隷のように働くがいい! ふははははっ!」



 アンナがシルウェスに駆け寄り、ローブを掛ける。

「大丈夫ですか? ――万能回ふ」


 しかしユーシアが鋭い声で止める。

「待て、アンナ! 回復はするな!」

「え? ――はい、何かわけがあるのですね。わかりました……」

 アンナは悲しげな表情を作りつつも、彼の言葉に従った。



 シルウェスはローブで裸体を隠しながら言う。 

「お、お前はやはり……聖女」

「ええ、そうです。勇者さまは偉大でしたでしょう?」


「……力だけの存在ではないことは身を持って知った。回復させないのもきっと私の至らなさに対する罰なのだろう」

「ユーシアさまのために頑張ってくださいね」

「当然だ……頑張るしかなかろう……エルフのために」

 痛めつけられた肢体を庇いつつ、シルウェスは唇を噛んだ。そんな痛々しい姿も絵画のように美しかった。


 一方、ユーシアの傍には獣人ゲバルトがひざまずいていた。

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