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第21話 王位簒奪魔王さま!

 王都フェリクを襲っていた魔王姫軍をユーシアは倒した。

 王様に会うことになり、王都へと凱旋した。

 ユーシア、アンナ、それに少女の姿になったリスティアが大通りを進む。

 使者の用意した、幌のない馬車に乗っていた。


 人々は熱狂的にユーシアを讃えた。

「すごいです!」「ありがとうございます!」「あなたこそが、まことの勇者!」


「くくくっ、我輩を勇者と思うのも今のうちだ……魔王ユーシアとして国を奪い、絶望の底に叩き落してくれるわっ! ふははははっ!」

 ユーシアは胸を反らして邪悪な高笑いを響かせた。

 しかし、騒ぎ続ける民衆の耳には届かず、ただ勇者が人々が無事だったことを喜んでいるとしか思われなかった。



 王都中央にある城。

 その二階の謁見の間にユーシアたちは案内された。


 ところが周囲の者たちがざわついていた。

 アンナとリスティアは膝を突いたものの、ユーシアはふてぶてしいまでに仁王立ちをしていたからだ。


 兵士や官僚たちが騒いだが、正面の段上に座る王様は彼らをたしなめた。


 そして言った。

「よくぞきた! 魔王姫軍を退けた勇者よ! わしはアルバルクス王国の国王、セーラム7世じゃ。ユーシア、アンナ、リスティア、このたびの活躍まことに大義であった!」



 ユーシアはふてぶてしく腕を組み、セーラム王を値踏みするように見た。

 よぼよぼで短剣すらまともに振れそうにない老体。


 見れば見るほどに、内心でイライラが募った。

「ふぅん……貴様が王だと? 我輩は納得できん!」


「な、なにっ!」

 セーラム王は驚き、取り巻きが騒ぐ。

「なんて不敬な!」「王の御前であるぞ!」「由緒正しきアルバルクスの王族に向かって……」



「黙らんかぁぁっ!」

 ユーシアが気合を入れて一括すると、それだけで謁見の間にいた全員が震え上がった。

 その様子を見ても怒りが収まらず、ぎりっと歯を食い縛った。


 膝を付いたアンナが震えながらも見上げて言う。

「ゆ、ユーシアさま。どうしてそんなに怒っておられるのですか……? どうかお気を沈めください」


 ユーシアは内心で怒り狂っていた。

 ――どうして、だと?

 無能だからだ。無能が服を着て一番高い椅子に座っているからだ。

 


 しかしユーシアはそれを言わなかった。

 代わりにセーラム王をにらみつけると下腹に響く低い声で話した。


「貴様、今の戦いの間、どこにいた? その椅子にしがみついておったのではないか? 一番安全な場所にいて、それでも人々を束ねる王か!」


「うっ、しかしだな。わしが死んでは、それこそ国は滅ぶ……」


「だったらなぜ武器を取って戦わない! 老齢でできぬというなら、各部隊を見舞って励まさないか! テラスから姿を見せるだけでもよい! 王国の存亡の時に部下任せにするなど、上に立つ者としての心がなっておらん! それで王を名乗るとはおこがましいわ!」



 ユーシアの怒気に当てられ、誰も何もいえない。

 セーラム王は苦しげに顔を歪めて呻いた。

「ぐっ……確かに、そなたの言う通りじゃ……わしは何もできなかった。魔王姫軍に連戦連敗。もう、諦めておったのかもしれん」


「上が諦めたら勝てる戦いも勝てなくなるに決まってるだろうが! ――セーラムよ。貴様の役目は終わった。その場所を我輩に明け渡すがよい!」


「なっ、王位を譲れ、と!?」



 王様の横に立つ大臣が震えながらも口を開く。

「何をおっしゃいます、ユーシアさん。確かにあなたは強かった。しかしセーラム王もこれまで必死で国を支えてきたのです。どうかあなたは伯爵の地位を与えますので、それで――」


「ふざけるな、何が爵位叙任だ! ――では聞こう! 貴様に王都が守れたか!? 嘆く部下たちを救えたか!? 我輩は数少ない部下とともに魔王姫軍を倒したぞ! 強大な外敵を前にしている現状で、力なき臆病者が胡坐をかいてていい場所ではないわっ!」


 

 リスティアが黒瞳をキラキラ輝かせて喜ぶ。

「さすがユーシアさまですっ! ユーシアさまこそ、あの玉座にふさわしいお方です!」


 アンナが金髪を揺らして立ち上がる。

「王さま、皆様。わたしは聖女アンナです。ユーシアさまは勇者だと、わたしは信じております! 魔王姫エメルディアは恐るべき魔王。ユーシアさまが幾ら強くとも、孤軍奮闘では倒せません。今こそ強い指導者によって一致団結する時ではないでしょうかっ! ――ユーシアさまの言葉、どうかご一考を」


 アンナの演説に、人々の心に衝撃を与えた。

 兵士や官僚が、動揺して戸惑っている。



 セーラム王は玉座の肘掛を握り締めて震えていた。

 しかし、急にがっくりと肩を落とした。


「聖女が認めるものこそ、真の勇者なり、か。――そなたの言う通り、わしは臆病者であった……結果、三人の王子たちは全員戦死してしまった。もう血縁も残っておらん。勇者アルバルクの血はわしで途絶えた。……わしこそが先頭に立って討って出なくてはならなかったのじゃ……」


「それがわかっているなら話は早い――代わってもらおうか」

 ユーシアは段上の玉座に向かって一歩一歩と上がっていく。



 セーラム王は呟くような声で言う。

「一つだけ尋ねたい……ユーシアよ、そなたはエメルディアを倒せるか?」


 階段下から睨み上げつつ、不敵に笑った。

「誰に向かって言っている! 最強の我輩が盗っ人になど負けるはずがないわ! ふははははっ!」



「盗っ人……? まあ、よい。わかった」

 セーラムは立ち上がると玉座の横に退いた。頭から王冠を外し、ユーシアの頭へ乗せるために掲げた。


「お、王さま!」「セーラム王、正気ですか!?」「ぽっと出のやからに!」



 セーラムは反対者たちを見渡して悲しげな声で言う。

「次も、あるのじゃぞ……?」

「「「え?」」」


「人形兵は無限に生み出される。四天王はまだ3人残っている……次もまた10万以上の大軍で襲われるのじゃ……今回の失敗を踏まえて20万、30万で襲ってくるかもしれん。ユーシアの機嫌を損ねて我々だけで凌げると思うておるのか? そのような策があるなら、ぜひとも披露してもらいたいものじゃ」


 騎士も、官僚も、大臣も、貴族も、全員が唇を噛んで俯いてしまった。

 策など何一つ進言できなかったからこその現状であった。



 玉座まで上がってきたユーシアは、ふむっと感心して頷いた。

「無能な老人かと思っていたが、状況を判断できる智慧はあるようだな」


「まあの。わしにできるのはもう、人々が平和に暮らせる可能性が一番高い道を選ぶことだけじゃ。――そして、ユーシアが欲するものを与えぬ限り、人々に未来はない……受け取るが良い」


 セーラムは手を伸ばしてユーシアの頭に王冠を乗せようとする。

 しかしユーシアは彼の手から王冠をむしり取った。紙製かと思わせるほどに、くしゃっと握り潰す。

「他人の手など借りぬ! 我輩は欲しいものは自分手で奪い取る!」


「なんと!」

 セーラムは驚きつつも「いや、これでこそ勝者の生き様か」と呟いて納得した。



 ユーシアは玉座の上に飛び乗った。仁王立ちして高らかに笑う。

「ふははははっ! 我輩が今日からこの国の王だ! しかもただの王ではない、最強中の最強の王、魔王ユーシアだ! 王冠はしかといただいた! 貴様ら、魔王ユーシアの部下となり、地獄のような日々を送るがよいわっ! 逆らうものは、はらわたを引きずり出し、くらいつくしてくれる! ふははははっ!」


「「「えええええ!」」」

「魔王だって!?」「そんな!」「嘘だろ!?」「いや、絶対普通の人間じゃないとは思ってたけど!」


 ぞっとするような血なまぐさい発言に、人々は恐慌をきたした。

 さすがのセーラムも口をぽかーんとあけていた。


 リスティアが段上のユーシアに駆け寄り「さすがですっ! かっこいいですっ!」と褒め称える。


 アンナだけが顔を真っ赤にして、勇者です、ユーシアさまは勇者なのです! と騒いでいた。

評価1万Ptありがとうございます! というわけで作者名戻しました。

これからも更新頑張ります!

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