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第16話 人質アンナ(王都防衛戦その3)

王都防衛戦その1とその2を修正して、人々の絶望的な戦いぶり、観念した王様の様子などを書き足しました。

 お天気日和の早朝。

 王都は人形主体の魔王姫軍に襲われて一方的な防戦をしいられていた。


 しかし、東の方から異様な地響きが伝わってきた。

 それは戦う兵士や町の人たちも察知した。


 石造りの町並みの中、荷車を押して物資を運んでいた補給隊が足を止める。

「なんだ……?」「魔王姫の新しい攻撃……?」「もうやだよぅ――えーん!」

 十代の少女は泣き出してしまう。


 そこへ見張り塔の上にいた兵士があらん限りの声で叫んだ!

「東方に展開していた魔王姫軍が消えた! 見えなくなった!」

「「「えええええ!?」」」


 とはいえ、異変があっても人形たちは黙々と攻めてくる。疑問を心の底に仕舞いつつ、人々は戦い続けるしかなかった。



 お城では玉座の間で倒れる魔術師モンテーニュをセーラム国王が揺さぶっていた。

「ど、どうしたのじゃ、何があった! 恐ろしい地響きもあったぞよ! 起きよ、モンテーニュ! 水晶玉で調べぬか!」


 すると兵士が入ってきて、赤い絨毯を無作法に駆けてセーラム王の下へ来る。

「申し上げます国王様! 東に展開していた魔王姫軍1万5000が消滅しました!」

「な、なんじゃと!? なぜじゃ!!」


「わかりません、隕石が落ちた後のような、巨大な陥没があるばかりで……そして南方に展開していた人形兵役1万がそちらへ向かいました」

「いったい何が起きておる……? 今日で世界は終わるのか……それとも?」

 セーラム王はしわだらけの顔に苦悩の表情を浮かべた。


       ◇  ◇  ◇


 王都の東にできたクレーターの中で、四天王シャルルとユーシアが対峙していた。

 ユーシアはアンナを後ろから抱き、細い首を掴んで悪い笑みを浮かべている。


 アンナだけが金髪を乱して悲鳴を上げた。

「えええええ! 勇者さまが人質を取るなんてっ! 冗談ですよね、いつもの勇者ジョークですよね、ユーシアさまぁっ!?」

 澄んだ声がすり鉢上の深いクレーターによく響いた。



 しかしユーシアは高らかに笑って胸を反らす。

「ふははははっ! シャルルよ、貴様がアンナと知り合いだと知っておったわ! だからわざわざ戦場に連れてきたのだ! 知らぬふりをすれば強気には出られなかったものを、自ら敵に弱みを見せるとは愚の骨頂! 貴様のような抜けた奴に、多数の部下を率いる資格などないわ!」

 ――もちろん、嘘だが。時には大胆な嘘も必要となる。


「一瞬で見抜いちゃうなんて! さすがユーシアさまです!」

 ドラゴンのリスティアが目をキラキラさせて喜んだ。


 アンナは眼を白黒させていた。

「そ、そんな~! 嘘だと言ってください~!」



 シャルルは端整な顔を歪めて悔しがった。眼帯がずれそうになる。

「ああ、アンナ! その美しい顔が苦しみに! ――なんて卑劣な! いったいあなたは何者ですか!」


「ふふんっ。卑怯結構、狡猾結構! なぜなら我輩こそが真の魔王! 魔王ユーシアさまだからだ! エメルディアのような偽物なんぞ足元にも及ばぬわ! ふははははっ!」


「ま、魔王ユーシア!? 聞いたこともない戯言です――いやしかし、実力は認めましょう――さあ、アンナを離しなさい。そうすれば命だけは助けてあげます」



 ユーシアが鋭い歯を光らせて睨む。

「立場がわかっておらんようだな、貴様。この場で生殺与奪の権限を握っておるのは我輩なのだぞ――だいたい、貴様がアンナを手に入れることは出来ないはずだ。力ずくで向かってきたとしても、その前に我輩の手が動く!」


 シャルルは眼帯を押さえながら、悔しげに吐き捨てる。

「くっ……! ――いや、あなたはアンナとすでに知り合いのはず! 手にかけることなどできないから、人質は無意味です!」



「ほほう? そんな口を聞いていいのか? 人質の使い方は命だけではないのだぞ?」

「え?」「え?」「ぇえっ!?」

 シャルルとリスティアが驚きの声を上げた。

 アンナだけは嫌な予感を感じたのか、美しい顔が泣きそうになる。


 当然のごとくユーシアの手が動き、アンナの後ろから胸を掴もうとする!

「やっ! やっぱりぃぃ! なにされるのですか、ユーシアさまぁ!」

 アンナは目尻に涙を浮かべて訴えた。


 リスティアが目を丸くして感嘆の声を上げる。

「利用できるものは知り合いでも利用する! さすが魔王さまですっ!」



 シャルルは頭を押さえて叫ぶ。

「うわぁぁぁ! な、なんて奴! 本当に魔王なのか!? ……いいでしょう、何が望みですか?」


「話が早いな。では、エメルディアとやらがいる場所を教えてもらおうか――さもないと……」

 ユーシアは修道服の上で空を掴むように動かす。


 アンナは可愛い悲鳴を上げて、頬を染める。

「ひ――っ! だ、だめですっ、ほんとに掴んじゃダメですよ!? ユーシアさまぁっ!」

 ユーシアの魔の手から逃れようと華奢な肢体を捻った。



「ほら、さっさと魔王姫城の場所を言わないか。さもないと、貴様がこの世で最も見たくない光景が、三日三晩ぐらい目の前で繰り広げられることになるぞ!」


 シャルルが土下座をして叫ぶ。

「うわぁぁぁ! なんて外道な! ――やめてくれ! せめて映像記録の魔導具を取ってるまで待ってくれ!」


 胸を掴みかけたユーシアの手が止まる。眉がピクッと動いた。

「なかなかよい趣味をしているな、お前……では尋ねよう。エメルディアはどこにいる?」



「そ、それは……」

「早く言わないか――でないと」

 またユーシアの手が蛇のように動き出した。大きな胸に指先が迫る――っ。


「いやぁっ! そんな、だめですっ――っ!」

 アンナの体を柔らかくひねって魔の手から逃れる。修道服を下から押し上げるように大きな胸が強調された。



 シャルルは、頭をガンガンと打ち付けて土下座する。

「頼む、やめてくえぇぇぇ! 音声記録魔導具だけでもおおお! ――いや、むしろこの状況の惨めなボクを撮影してくれたほうが、興奮するッッッ!」

 眼帯をしていないほうの目が血走っていた。


 その叫びに、ユーシアの手がピタッと止まった。

「こやつ、見た目より変態レベルが高い……っ! さすが四天王に登りつめた男よ……なかなかの好印象だぞ」


「えっ、あたし変態じゃない……魔王さまに愛想つかれたら、どうしようっ」

 リスティアは変な心配を始めておろおろした。



 頬を染めたアンナが、ぐったりとユーシアにもたれかかる。金髪が頬へ滝のように被さった。

「ユーシアさま……信じられないです……」


「ふっ、信じてないのはお前のほうではないか――まあよい、シャルルよ。どこに行けばぶちのめせるか、さっさと言うが良い」


 ユーシアはギラリと歯を光らせ、残忍な笑みを浮かべた。

改稿ヒントくれたyks719さん、ありがとうございます!

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