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第11話 村人断罪・前編!

11/19 大幅改稿しました

 大きな村の大通りには村人たちが集まっていた。

 通りに面した広場にはドラゴンと化したリスティアが大人しく丸まってうずくまっている。


 アンナは修道服を乱してユーシアに訴える。

「人の物を奪うなんて、やってはいけないことですわっ。どうして勇者さまなのに、そんなひどいことを……っ!」


「ふははっ! 我輩は魔王だから当然であろう! ――それに、ひどいのはこの村の連中だと思うがな? くくくっ」


「どういうことでしょう? この村の人たちは、とても良いかたばかりですわ」



 ユーシアは悪い笑みを浮かべて言った。

「では聞くが。お前は森の屋敷を隠れ家だといったな? 子供たちを育てる孤児院だと」


「はい、そうですが。昔に魔女が建てたといわれる隠れ家ですわ」


「そうだろうな。今まで子供たちを育てられてきたんだからな――それなのに、どうして急に人形兵どもがやってきたのだ?」


「え――あっ、まさか!? そんな……っ」



 ユーシアは最高に楽しそうな、あくどい笑みを浮かべる。

「この村に密告者がいる。間違いないっ!」


 ううっ、とアンナは泣きそうな顔になった。修道服が揺れ、金髪がなびく。

「そ、そんなはずは……みんな、いい人たちで……」


「ほほう? ――リスティア、この村を占領した時どうだったか言ってみよ」


 尋ねられたリスティアは、長い首をぐいーんと伸ばした。

「は、はい、ユーシアさまっ! 村長と、雑貨屋の店主が、魔王姫軍に森の隠れ家を教えていました! 自分の妻や子供だけは助けることを条件にしてましたよっ。他の村人たちは村長なら知ってるって!」



「ふははははっ! どうだ、我輩の推測どおりだろう! ――どうした? 反論はないのか? お前たちにも発言権をやるぞ?」


 大通りに集まる村人たちを眺めたが、みんな目をそらしてうつむいた。

 顔が青褪めている。

「いや……あれは」「その、なんだ」「あわわ……」 


 

 アンナはがっくりと華奢な肩を落とした。豊かな金髪が頬に掛かる。

「そんな……信じていましたのに……」


「いいぞ、今のお前の顔、最高に打ちひしがれた表情だ! ――しかし、村人たちよ、一つ言っておこう。すでに隠れ家は我輩のもの。子供たちは我が配下! 貴様たちは我輩にたてついたことになる! そこのところ、わかっているのだろうな?」


 村人たちが震え上がって土下座した。

「す、すみません!」「申し訳ございません!」「ユーシアさまの関係者だったとは知らなかったんです!」「命だけはお助けくださいっ!」



「いいや、許さん……といいたいところだが。我輩、魔王ユーシアの配下になるなら、命だけは助けてやろう! 恐怖と絶望の中でのた打ち回るが良いわ!」


「「「えええ~!」」」

 


 アンナが金髪を乱して戸惑う。

「そ、そんな! みなさんを恐怖で支配するなんてっ! せめて子供たちみたいに、慈愛と正義で導いてあげてくださいっ!」


「ほう? 何を勘違いしておる? こやつらは自分可愛さのために、簡単に魔王姫軍に寝返る奴らだぞ? これから我輩たちが去れば、また同じことをしないとどうして言い切れる?」


「あ……っ」

「戻ってきたら子供たちは連れ去られたあとだった、そんな状況もありうるのだぞ?」


 そう言いつつ、ユーシアは思う。

 ――まあ、我輩直々の結界を張ってあるから並の人間など近付くことすらできんのだがな。入れる部下も当然限定される。

 ただ、用心に越したことはない。

 そもそも多くの人が所在を知ってる隠れ家などというのが、甘いのだ。



 アンナは悲しげな顔をして考え込んでいたが、反論できない様子。

 ユーシアは威厳を込めて村人たちを睥睨する。

「さあ、貴様ら。魔王ユーシアの配下になることを誓うか?」


「まだ、判断が……」「心の準備が……」「もうちょっと考えさせてくだせぇ」

 取り乱す村人たち。


 だが、ユーシアは容赦なく睨みつける。

「まだ自分たちの立場がわかっていないようだな? 配下になるかならないかという意味ではないぞ」

「といいますと?」



「魔王姫軍に協力した裏切り者の村という烙印を押されて生きていくか、我輩の庇護を得て生きるか。その二者択一だと言っておる……まあ、これだけ言ってもわからぬなら、好きに生きるがよい」


「え、よいのですか?」「いまいち意味がわかんないけど」「助かった、のか」


 ユーシアは踵を返してリスティアに近付きながら邪悪な笑みで笑った。

「今後、王国を裏切った手前、魔物に襲われても騎士団は助けてくれぬし、魔王姫軍も裏切ったのだから、奴らも貴様らは助けぬ。誰にも守られず怯えて暮らすことになるだろう……くくくっ。それも一興! せいぜい自分たちの力だけで生き延びて見せるがいい。ふははははっ!」



「「「あああああっ!」」」

 村人はようやく事態を理解すると、ユーシアに駆け寄り足元にすがりついた。

「も、申し訳ありませんでした、ユーシアさまっ!」「お願いします、魔王さま!」「どうか見捨てないでくださいっ!」「助けてっ!」


 ユーシアは感極まった残忍な笑顔で、高笑いする。

「どうした、者ども! 先ほどまで怯えておった相手にすがりつくとは! 今の姿、とてつもなく無様だぞっ。……いいだろう、我輩の配下になることを認めよう。地獄に加担するがよいわっ! ふははははっ!」



「あ、ありがとうございます!」「なんて恐ろしいお方っ」「慈悲に感謝しますっ!」


 村人たちが土下座する中、掘り深い初老の男が立ち上がる。

 この村の村長だった。


「そ、それで、ユーシアさま。私たちは何をすれば……?」



「ふふ……まずは誠意を見せてもらおうか」

 ユーシアがチラッとリスティアを見た。


 すぐに気付いた村人たちが立ち上がる。

「わ、わかりました!」「今すぐに!」「お待ちくださいませ、魔王さま!」

 村のあちこちへ隠していた食料を取りにいった。


 その間、アンナは光の消えた青い瞳で、白い雲の浮かぶ真っ青な空を見上げていた。

「おそら、きれい……」と呟きながら。

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