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生変篇-2

この世界に生まれて1年程たった。この前1歳の誕生日を迎えた。

ある程度この世界の言語も理解してしまった。

僕の母は、リーネ。父はラージハルトという名前らしい。性はバルス。


父の知り合いが、父を呼ぶたびに目がぁ、目がぁと言い続けてきたが、その度泣いていると心配されるので止めておいた。


完全に理解してしまうまで、前世の赤ちゃんのようにふるまっていたが、ふと思い立って、母しかいない時に普通に挨拶をしてみた。


「初めまして、お母さん。僕の名前は何でしょう?」


そう、僕は自分の名前を知らなかった。

というのも、この世界の両親は、僕の名前を呼ばないのだ。赤ちゃんとか、天使ちゃんとか呼んだりしている。危うく自分の名前は赤なのか天使なのか、赤ならまだしも天使だとしたら、この世界にもキラキラネームがあったのかと絶望したほどだ。


挨拶ついでに自分の名前を聞いてみた。


僕を抱いていたリーネは、辺りをキョロキョロ見渡したあと、まじまじと僕の顔を見つめていた。僕が再び同じことを言うと、リーネはこれ以上ないほど目を見開き、金魚のように口をパクパクさせた後、僕をベビーチェアのようなものに乗せ、どこかへ走っていった。

直後にラージハルトを連れて戻ったリーネに、もう一度言って!と何度も懇願されたが、従来通り赤ちゃんのように振る舞っておいた。勘違いにつき合わされたと思ったラージハルトだが、怒ったりせず、リーネを宥め仕事に戻っていった。あれはいい父親であり、いい夫だな。

しかし、やはりこの年齢で言語を操るとなると、異端児でしかないようだ。面倒だがある程度の年齢に達するまでは、このままにしておこうと思った。


それからも事ある毎にリーネからは懐疑的に見られていたが、年相応に振る舞ったおかげで、それも程なく無くなっていった。


また、1年が365日だったのは思いのほか驚いた。

そもそも朝と夜。つまり、太陽と地球の関係性のようなものがここにもあるのだ。他にも前世との共通点が数多く見受けられた。


ふむ。もしかしたら、ここは地球の所謂―パラレルワールドなのかもしれない。



 生まれて2年がたった。このころには自分の身体能力の把握に努めていた。

初めて喋った時(本当は2回目だが)、両親は大層喜んだ。そして、徐々に喋る言葉を増やしていったが、それでも想定より早かったようで、周りは天才児だと囃し立てた。流石に異端児とは思われなかったようだ。

 だが、この両親ならそれでも変わらず愛してくれたような気がする。


 僕はここでも両親に愛されているのだな、と嬉しくなった。


 また併せて魔導書のなる物の解析にも入った。

 この世界には魔法があるようだ。前世ではおとぎ話かゲームの世界にしかなかったが、概念としては存在していた。実現不可能だと思われていたが、こちらでは原理の解析ができているようだ。

 大気や物質には、マナと呼ばれるものが含まれていて、それを感じれるものにしか魔法を扱う事は出来ない。

 さらには感じれるマナの中でも、大別すると火・水・土・風・光・闇の6種類があり、1種でも扱えると、王都で就職には困らないらしい。

就職活動いらずとは恐れ入る。(さりとて僕もしたことは無いのだが)その困難さは、前世の知識で持っていた。

 この世界で言う魔法とは、このマナに、詠唱にて語りかける事で指向性を持たせ、自分の魔力を混ぜ合わせる事によって、起こす現象の事を指すようだ。

 考え方としては多少複雑化してはいるが、やはり概ね前世の魔法と同じようなものだな。似たような設定の漫画やゲームも、あっちには溢れていたな。


 古書によると、極めて稀に生まれる2種のマナを感じれる者を、双属と呼び、各国々での争奪戦になるようだ。

 というのも、双属はマナに愛されると言われ、困難なマナの扱いが、それほど難しく感じないらしい。さらに生まれ持つ魔力も巨大らしく、同じ魔法でも起きる結果が大きく異なるという。

 3種扱える者は魔法歴上、1人だけしか確認されていない。

 それが大魔王を封印した(絵本で何度も見た)古の勇者らしい。といってももはや日本昔話レベルの英雄譚(絵本で何度も何度も見た)で創作感がもう半端ない。

 

 そんな魔法の事で、最近分かった事だが、どうやら僕には6種全て使えるらしい。


 そう。全種。コンプリート。



 さらにさらに驚くべきことに、僕の魔力総量は0。人より少ないとか多いとかの問題では無く、全くの0。


魔法に関して言えば、昔話レベルをさらに誇張に誇張を重ねた(であろう)古の勇者も泣いて逃げ出す全属性持ちの僕も、これでは結局魔法など使えないと酷く落胆したりもしたのだが、それでも魔法が使えてしまった。

 端的に行ってしまえば、僕の場合、マナに自分の魔力を混ぜ合わせるというプロセスが必要なく、マナだけで思い描く結果が起こせてしまうのだ。

 例えば、アイスという相手に氷の粒をぶつける下級攻撃魔法は、水のマナを感じれる者が、水のマナに【水よ、その力を解き放て アイス】という詠唱によって語りかけ、水自体を召喚し、さらに水を氷に変換し相手にぶつけるのだが、僕の場合は、アイスという魔法を使うという意識の基、【水よ】という前文だけで、詠唱という形式が終わり、指定の場所を指すだけで氷の粒が飛んでいくのだった。

 さらに威力に関しては、イメージするだけで意識的に決められるため、[この世が壊れるくらい]というリアルな想像を基に詠唱してしまうと、本当にこの世が壊れてしまうかもしれない。

 



 うむ。完全に異端児だったようだ。




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