生変篇-1
どうやら僕は今生まれたらしい。らしいというのも現実感がまるでないのだ。
当然思考も出来るし、手も動く。声も出せれば喋る事も出来る。
どうも僕が発する言葉は、この世界に住民には聞き取れない単語らしく、赤ちゃんの泣き声のように聞こえるらしい。
涙も流さず泣く僕は、異端児のようだ。
そもそも、だ。僕は熊本県熊本市に住む15歳の水本 竜二という人間だった。…はずだ。
生まれた直後には病による死の宣告がされていた事と、そのせいで病院から一度も出た事が無い事、そもそもベットから起きる事が出来ない事を除けば、他の15歳の少年とさして変わらない人生を歩んでいたはずだ。
まぁそもそもその時点で他の15歳とは大きく異なっている事は否めないが。
両親は僕の病気のせいで、毎月の医療費の為に朝も夜も無く仕事に勤しみ、それでも僕の前ではそんなそぶりを見せずに、いつも笑っていてくれたのだ。
恨んでいた時など一瞬たりとて無かった。
また、そんな残念な人生でも唯一生まれ持った才能というものがあった。
ドラクエのステータスでいうとかしこさにあたるものだ。
自分でいうのもなんだが、初期ステータスでかしこさだけはカンストしてたような気がする。
でも、だからこそ、悲観する事も無かった。人間とは死ぬために生きていて、それが他の人より少しばかり早かっただけの事。
僕にとっての死とは、そんなものだった。
ただ、俺を愛してくれていた両親には幸せになって欲しかった。
僕が息を引き取る直前に思った事は、これでようやく両親が幸せになれるという安堵だけだった。
そう。やっと死ねる。と。
ふむ。言語が使えないだけで、身体機能は正常らしい。
前世といっていいものか分からないが、明らかに言語どころか世界観すら違うこの世は、前回生きていたところとは違う世界であろう。
もしかしたらこの世界では、前世の記憶を保ったまま生まれてくるのだろうか。
前世同様、考える時間だけはゆうに在る。幸いにもかしこさの値は変わっていないようだ。しばらく考えさせてもらおう。