眞王様痛恨の一撃を貰う。
「妾が留守の間、特に変わりなかったかえ?」
「はい。始祖様が突然現れた魔方陣が消えてしまわれた後、一時混乱しましたが、必ずやまた戻って来られる事を信じ皆始祖様のお帰りをお待ちしておりました。」
「世話を掛けたのう。」
「いえ!とんでもございませぬ。始祖様が無事に戻られたと知れば皆喜ぶと思います。」
「そうかえ。他の皆は息災かえ?」
「はい。皆、変わりなく過ごしております。」
何だこれ?俺の事は見えていないとばかりに話が進んでいるのだが?寧ろ俺、空気じゃね?
しかもこの第1村人、リリムを前にして膝躓いたまま畏まった会話をしているんだ?それに始祖様って・・・。
あれ?もしかしてリリムって物凄く偉い人か何かか?
俺は肩肘でリリムを小突く。
「何じゃ?主様。」
「なぁなぁ、さっきからお前の事を始祖様とか言ってるけど、どういう事なんだ?俺にも分かる様に説明してくれよ。」
「ん?あぁ~妾はその者が言っておるように始祖なのじゃ。ん~分かりやすく言うと妾の領地に住んでおる妾の種族は全て妾の子であり孫なのじゃ。つまりは妾が【婬夢族】の祖と言う事じゃ。この説明で分かったかえ?」
「えっ!?って事はお前今、一体幾つなんだ?もしかしてスゲーバッ、ぐはぁッ!!!おま・・・何しやが・・・る・・・。」
カクッ・・・・・・。
痛恨の一撃。
俺はリリムからの強烈なボディブローを貰いその場で崩れ落ちて気絶した。
「始祖様この方は?」
「妾の主様じゃ。この地を治めるべき新しい魔王様じゃ。つまりはお主らの主にも当たるゆえ宜しく頼むぞえ。」
リリムはそう言うとケラケラと笑っていた。
「あ、新しい魔王様でございますかっ!?宜しいのですかっ!?
魔王様にその様な真似をして・・・反逆行為ではありませぬかっ!?」
第1村人は青ざめた表情でリリムに詰め寄る。
「だいじょーぶじゃ!そんな事で怒る程、肝の小さき男では無いしヤワでも無いから安心せい。それよりも此処で伸びている我等の主様を妾の屋敷迄運んでくれたもう。」
「・・・・・・。」
第1村人は色々と突っ込み所満載だと感じながらも言うのを半ば諦めながら、伸びている俺をリリムの屋敷へと運んだ。
「うっ・・・ここは・・・?」
目を開けると其所は全く見に覚えの無い天井が目に入った。どうやら俺はベッドに寝ていたようだ。
おや?この布団は中々どうして程好い感じに感触が良いぞ。折角だしもう一眠りしようかな・・・そう思ったのも束の間。
「どうやら目を覚ましたようじゃのう。」
そう言ってリリムが俺の顔を覗き込む。
「うわっ!!」
咄嗟の事で驚き、勢い良く上体を起こしたら・・・。
ゴンッ!!!
「痛ッつ!!!」
「痛ッた―――――!!!」
会心の一撃及び痛恨の一撃。
「イキナリ何をするのじゃっ!!」
「うるせーっ!!大体お前がイキナリ人の顔を覗き込むのが悪いんだろうがっ!」
「なっ!?何て酷い事を言うのじゃ!妾は主様が心配で仕方なかったのに~のじゃ。」
「なぁにが心配で仕方なかったのに~じゃ!大体お前が俺に思いっきりボディブローをくれたからこんな事になったんじゃねーかっ!」
「それは主様が乙女の年齢を詮索するから悪いのじゃっ!」
「はぁ~?なぁにが乙女だっ!さっきの話からお前は既に乙女じゃなくて寧ろバ・・・ッてヤメローっ!!」
禁断の言葉を口にしようとした瞬間、リリムが周りには邪気が漂い本当いつ生成したのか水魔法による巨大なハンマーが俺の頭上に掲げられていた。
「うん?どうしたのかえ?主様。何か妾に言いたそうな感じがしんたんじゃがのう。」
リリムは笑みを浮かべながら、言っている。顔は笑っているが決して目は笑ってはいない。かえってそっちの方が怖い。
「いえ・・・何でもありません。」
「うむっ!解れば宜しい。」
これじゃあ一体どっちが主か分かったもんじゃない。