眞王様レベルアップについて考える。
あれから俺はリリムの領地へと向かう道中ずっと、ある事を考えていた。ある事とはレベルアップの事についてだ。確かに俺は今の今まで一切の戦闘行為には参加してない。戦闘が始まっていたとしても俺はその場でボーッと突っ立っているだけだ。
何故かって?答えは至極簡単だ。それは俺以外の奴が全ての戦闘行為を受け持っているからだ。
先ずはサキュパスである【リリム】そしてホブゴブリンの【タロウ】に【ハナコ】その他にゴブリン8体。このメンバーの中で特にタロウ、ハナコが主攻でリリムが中衛・後衛を担い、俺の周りを他のゴブリンが固める布陣になっている。
道中目立つトラブルは無いとは言ったが、戦闘が全く無かった訳ではない。何度かモンスターと遭遇し、その度に先程言った感じの布陣で前衛で叩き、中衛・後衛でサポートし、モンスターを討伐していった。
そこで、俺はある1つの仮定を立てた。それは・・・俺の使役したモンスターが倒した経験値を1部俺に加算されるというものだ。
「おーい!タロウ君、ハナコちゃん、ちょっと来てくれないかい?」
俺は地図を片手に先導しているタロウ&ハナコペアを呼び寄せた。
「はい。何でございましょう?魔王様。」
「あぁ~急に聞くのもアレなんだが、君達の今のレベルはどれ位なんだ?それと俺に召喚されてからレベルアップしたのか確認したいんだが?」
「その事でしたら私共は魔王様に召喚された時点ではレベル5でしたが、今はレベル8でございます。他の者達も概ねそれ位かと。リリム様はもっと上のレベルだと思いますが。」
えっ!?そうなの!?約1ヶ月の間に3もレベルアップしてたのね・・・。他のゴブリン達にも聞いてみたが、タロウとハナコが言うように大体のレベルが6~8の間で皆レベルアップしていた。
因みにリリムのレベルって今、幾つ位なんだ?俺は右隣でトコトコ歩いているリリムにそれとなく聞いてみる事にした。
「なぁリリム、お前って今、レベル幾つなんだ?」
「なんじゃ?いきなり。藪から棒に。相手のレベルを聞くなんて女性の年齢を聞く次に失礼な事じゃぞ!主様はデリカシーが無い殿方じゃのう。」
「えぇ!?そうなのか!?だってタロウやハナコ達は普通に教えてくれたぞ?」
「はあぁ~。あやつらは主様に半ば心酔しておるから素直に教えておるが、何処の世界に自分のレベルをおいそれと相手に教える奴がいるんじゃ?レベルとはその者の強さの指標みたいな物じゃ。簡単に言うとじゃっ!私は今、これ位の強さですよと相手に教えている様なもんじゃ。じゃがあくまで指標じゃからそれが全てではないんじゃがな。何じゃ?主様は妾のレベルが幾つか気になるのかえ?」
「ん?あぁ・・・まぁな。ちょっと気になってな。」
ふーん。レベルってそういんもんなのか?と思っていたら大事な事に気がついた。じゃあ俺のレベルを他の奴等に知られたらヤバくね?だってほらっ!俺、レベル2だし!最弱だよ?ちょっと強い奴に小突かれたら大怪我しちゃうレベルだぜ?俺は内心冷や汗ダラダラで聞いていた。
「妾のレベルは38じゃ。」
リリムはサラッと自分のレベルを答えた。
おいおい!良いのかよ?俺に教えてと、俺が驚いた表情をするとリリムはそんな俺の顔を見てコロコロと笑っていた。
「何じゃ主様、そんな間の抜けた顔して。主様は妾の主様なのじゃから知っていて当然じゃろう?」
「えっ?そういうもんなのか?」
「そういうもんなのじゃ!」
「おっ!オウ。もう1つ。リリムのそのレベルって大体どの位の強さなんだ?全く俺には分からないんだが。」
「そうじゃのう。簡単に言うと前魔王様のレベルが80じゃった筈だから妾はその半分位じゃな。」
それって凄く強いんじゃね?だって魔王の半分位の力があるって事だよな?リリムって案外凄い奴なの?と思いながらリリムを見ていると何故か耳まで赤くして照れていた。何でそんなに照れてんの?コイツ。
「あ、主様・・・そんなに熱い視線で妾を見つめられると照れるのじゃ。」
「いやいや!見ただけだし、見つめてねーし!それよりも、お前と前魔王のレベルを聞いた後で言うのも凄く恥ずかしいんだが、俺、レベルが上がったんだよ。けれど何で上がったのか理由が今一分からないんだよなぁ。だってほらっ!俺、一切戦ってねーし。何でかなぁ?」
「フム・・・主様は因みにどれ位上がったんじゃ?」
「うぐっ!それ、俺に聞いちゃう?言わなきゃダメ?」
「言わなきゃダメなのじゃ。何がどれ位上がったのか聞かないと分からないのじゃ。」
「・・・2。」
「えっ?良く聞こえ無かったのじゃ。もう1度言って欲しいのじゃ。」
「だから!1から2にレベルが上がったんだよ!悪かったな!弱い魔王様でよ!ムキ~!!」
「そうか。1上がったのじゃな・・・。」
あれ?リリムさん?意外にも馬鹿にされるかと思ったが、思っていた反応と違う反応ので内心ちょっと驚いた。
「主様のレベルが上がったは理由は1つじゃ。主様は妾達を召喚し使役しておる。使役しておるという事は妾達は主様の一部分と思っていてくれて良い。その妾達が戦闘で得た経験値の1部は主である現魔王様の経験値へと加算されるという事じゃ。じゃが、経験値がどの程度加算させておるかは妾も分からぬがな。」
成る程。やっぱりそうか。俺のレベルアップの理由はそういう事か。じゃあ俺って何もしなくてもリリム達がどんどん経験値を俺に献上してくれるって事か!素晴らしい!お前ら俺の為にどんどん働け~!俺がそんな事を考えてニヤニヤしていると横にいるリリムから衝撃的な一言が。
「主様が何を考えてその緩んだ顔をしているのか敢えて詮索はせぬが、妾達がもしも倒された場合、妾達の主であるそなたの魂も傷付くからの。」
はっ!?何言ってんのこの幼女は?意味不明な事を事も無げにサラッとほざきやがったんですけど!?