眞王様交渉する。その2
俺は今、これ迄にない程最高に悪い顔をしているだろう。そんな気がする。
「さっきも言ったが俺は魔王だ。魔王だけが使う事が出来る特別なスキル、それは召喚魔法だ。それは知ってるよな?」
「それがどうしたって言うみゃあ?」
「いんや~ただの確認だよ。じゃあ1度召喚した奴を元の場所に転移させる事が出来たとしたらどうする?」
「それが一体何だって言うみゃあ?ミーは回りくどい言い方は好きじゃないみゃあ。」
此処まで言ってやっているのに察しの悪いデブ猫だなコイツ。まぁいい。分かりやすく説明してやるか。
「良いか?俺の今、隣にいるのは誰だ?お前も良く知っているリリムだ。聞けばリリムは淫夢族の長でもあり領主だ。つまりだ!全魔王軍を裏切った情報を此処にいるリリムを俺の転移で元の場所へと戻したら一体どうなると思う?リリムを介して他の魔族へと裏切りの情報が次々と回るぞ!確か前魔王が勇者に倒されたお陰でこの魔王領は絶賛内乱状態なんだよなぁ~?他の実力者も覇権を争ってるって言うじゃないか?次の魔王になる為に。まぁ次って言ってもそもそも俺が今の魔王らしいんだがな。それでも覇権を狙ってなくても領土の拡大を狙っている魔族もいるだろう。さて此処で問題です。ではこの魔王領で一番最初に狙われる場所は何処になるでしょう?」
とは言ってもコイツが他に根回しをしてればこの脅しも無駄なんだが、さっきの慌てた姿を見る限り根回し迄はしていないだろう。例え根回しをして万全にしていたとしても人間という生き物は欲深い生き物だ。他の全魔族を滅ぼした後で態々この場所だけ見過ごすとは到底思えないしな。さぁ!どう出る?
「んぐぐぐ・・・おみゃあさんミーを脅す気なのかみゃあ!」
「脅す?はッはッはッ!全く人聞きが悪い事言うなぁ。俺は事実を言った迄だぞ。それにこれから先の話はケット・シー。お前の態度次第だな。俺達に全面的に協力するなら良し。敵対する様なら・・・・・・分かるよな?」
ケット・シーは髭を触りながら少し間を置いた。今、この妖精猫は自分の領地にとって一番利になる様、損得勘定している筈だ。
「わ、分かったみゃあ。それで?おみゃあさんの望みは何だみゃあ?」
良しっ!掛かった。俺は内心ガッツポーズをした。此処までくれば話は早い。何なら吹っ掛けるだけ吹っ掛けてみるか?いや、待てよ此処で要求が多すぎてケット・シーの心証を悪くするのは流石に不味いな。ただでさえ今の時点で既に心証は最悪に近いのにこれ以上悪くするのも何だな・・・。俺はギリギリのラインでの落とし所を探りながら交渉する事にした。
「理解が早くて助かる。俺からの要求は3つだ。先ずは1つ目、此処からリリムの領地迄の地図及びお前達商人が使っているであろう最短距離で行ける裏ルートを教えろ。その2、旅をするに辺り人数分の水と食料を提供すること。勿論日数も計算に入れてだぞ。最後に3つ目だが、今後、俺達との関係を継続する事。これは謂わば同盟関係を結ぶって感じだな。以上だ。」
「むむむぅ・・・おみゃあさん随分と吹っ掛けてくるみゃあ。それに何故ミー達が裏ルートを知ってると思ったみゃあ?」
「そんなのは決まってるだろう?お前さん達、商人は正規のルートだと盗賊とかに襲われる可能性が高い筈だ。それにマトモな品を扱ってるとも思えないしな。だとしたら必ず人目に付きにくく比較的早く着くルートを確保していると思ったからだよ。それに情報は時として金になるからな。」
「にゃる程、おみゃあさん本当に魔王様みゃあ?寧ろミー達商人の方が合ってるんじゃみゃいか?それに3つ目の同盟はどういう事みゃあ?」
「ん?これか?さっきも言ったが情報は時として金になる。ならお前達商人と組んでる方がお互いに得するからだよ。俺はお前達の持っている独自の情報が欲しい。俺からは・・・そうだな、将来性を買って貰おうか!」
「プッ!にゃはははははぁ~!!!将来性と来たかみゃあ~!良しっ!良いみゃあ!魔王様の将来性をミーは買うみゃあ!」
「交渉成立だな!」
俺とケット・シーは握手を交わした。ケット・シーは流石猫だけあって肉球がプニプニしてて気持ち良かった。