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視線 18
アキは味わう暇もなく、あっという間に食べ終えた
外に出ると、少し汗ばむような陽気だった
『もう夏か…』
アキにとっては悲しい夏
毎年夏はやって来る
夏が来るたびに、夏が嫌いになる…
夏なんてなくなればいいのに…
そんな事を思う…
別れの夏が辛かった…
『今の私には仕事が全て…
人を愛する事も、そして愛される事も忘れてしまった…
三年前に全て…
暑さになんて負けないんだから
頑張って残りを回りますか』
背筋をピンと伸ばし、胸を張り、気合いを入れてアキは歩き始めた