46/143
視線 9
怒りが収まらないアキは、強い口調で桜田に訴えた。
『課長、私の友達が今一人で苦しんでいるんです
私は一緒に居てあげたかった
だから、ここに来る事に迷っていました
でも、友達が言ったんです
私のために仕事を放り出す様な事はしないでって
だから、私はここに来たんです』
アキの必死の訴えに、桜田はただ謝る事しか出来なかった…。
「本当にすいませんでした」
『課長、貴方もエリートと呼ばれる人なら、たくさんのものを犠牲にしてきた貴方なら、仕事を選んでしまった私の気持ち分かりますよね』
アキは静かにそう言った
桜田は何も言わなかった…
嫌…、言えなかった…
アキの言葉が、分かりすぎるくらい分かるから…
アキはタクシーを拾い、その場を去った。