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視線 3
アキの顔が、だんだん引きつってくる…
「マスター何言ってんだよ
彼女は星川さん、同じ会社の人だよ
今日は、仕事の打ち合わせなんだよ」
桜田の言葉に、マスターはマジメにがっかりしていた。
「なんだ…、彼女じゃないのか…
相変わらず、仕事ばっかりして出世してるのか
何か寂しいよな」
とマスターが言ったのに、桜田は無視だった。
「星川さんはビールでいいですか」
"打ち合わせなのにビール?"
『えっ… あっ、はい…』
と思いながらも、はいと返事をしてしまったアキ…
「マスター、ビール二つね」
と注文してすぐに桜田はこんな事を言った。
「すいません…
マスターが変な事ばっかり言って。
僕、ここの常連なんですよ。
高校を卒業してからなので、かれこれ七年通ってます」
少年の様なあどけない笑顔を見せる桜田を、アキは可愛いと思ってしまった。