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大きなベッド

作者: 牛革子

大きなベッドの話しです。

掌編、内容はありません。

大きなベッドは、大きかった。本当に、本当に大きかった。わたしがあと十人寝転んでも、 まだまだ余裕があるくらい大きかった。

シーツの色は青だった。枕の色は白だった。枕はたくさん置いてあった。それはお行儀良く、並んでなどいなかった。まるで枕投げをして、大急ぎで別の遊びにとりかかったように、シーツのあちらこちらに、ばらばらに飛んでいた。

大きなベッドは本当に大きかったので、わたしが以前使っていたベッドを十個並べても、まだまだ余裕があるくらい大きかった。

青いシーツにはところどころシワが寄っていた。陽の光が落ちているところは、落ちていないところよりも、薄い色に見えた。

大きなベッドはとても大きくて、だから大きなベッドが収まっている部屋も本当に、本当に、大きかった。けれどわたしは大きな部屋の大きさを実感することはできなかった。なぜならそれは大きすぎて、わたしが立っている場所からは、横にも前にも後にも、壁を見ることができないからだ。

まるで部屋など無いような気がした。けれどベッドがあるということは、それが収まる部屋があるということだ。一般的にはそれは寝室だけれど、もしかしたらリビングや客間や縁側やキッチンかもしれない。トイレやバスルームは考えにくいけれど、可能性はゼロではない。

大きなベッドがどれくらい大きいかというと、わたしが以前住んでいたアパートを十個並べても、そのアパートがある街を十個並べても、まだまだ余裕があるくらい大きかった。ベッドの端は見えなかった。枕の数はとても多かった。わたしは枕の数をかぞえてみるのだけれど、652個までかぞえて、馬鹿らしくなってやめてしまった。

大きな、本当に大きなベッドの向こう側に、わたしは目を凝らしてみる。何か、別の家具が見えないだろうか。ええ、見えませんでした。いいえ、見えませんでした。

わたしの目には延々と続く、青いシーツのベッドしか見えなかった。水色の空間を横切る、青い直線しか、見えなかった。違う。それは直線ではなくて、真ん中が少しもりあがっていた。ベッドのシワは、良く見ると微妙に形を変えていた。枕も、微妙に位置を変えていた。

大きなベッドは、大きかった。

わたしの、何か、認識が間違っているということは、きっと間違いではない。

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