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鬼達の人情話ー唐突な戦いー



ごめんなさい

001


鬼と遭遇した翌日の朝。


僕は焦っていた。


さらに言えば、全力疾走していた。


「姉貴と遊びすぎたぁぁ!」



まぁこの台詞からお察しの通り、僕は姉貴と遊んでいたため、学校に遅刻しそうなのだ。


昨日、いや今日の朝、一度『完全吸血鬼モード』になってしまった僕は寝るに寝れず、姉貴とモン○ンをやっていた。


普段なら日の出と共に姉貴のテンションはドン底まで落ち、そのまま姉貴は寝てしまうはずだったが……。


「やったー!!やっと上位までいけたよー!!しおん、このノリで新装備揃えるの手伝ってよね!」


と、落ちるどころか上限を越えたようなテンションで、僕にゲーム続行の意を示した。


まぁ僕もそのテンションに乗っかったのが悪いのだが。


おかげさまで、姉貴は新装備をフルで揃え、僕は遅刻寸前というわけだ。


というか、今まで使ってた装備でもなかなか良いところまではいけるハズなのだが…、そこは僕の甘さが出たのだろう。


可愛い子には旅をさせろ、ただし軍隊一個大隊付き、みたいな!


…わかる人にはわかるだろう。


「しかし…バカか僕は…。姉貴の笑顔が朝から見れたのは嬉しかったけど…」


しかし、今までの無遅刻無欠席の実績と比べれば―――わりと釣り合うか?


いやいや、そんな馬鹿なことを考えている場合ではない。


それにしても、吸血鬼の力が使えないのを残念に思ったのは久しぶりだ。


あの脚力さえあれば…。


あんなに忌避していた力をこんな風に思えるなんて、僕も成長したもんだ。


…教育された、の方が正しいかも知れないが。


002


学校まであと200メートル、残り時間5分。


なんとか間に合いそうだ。


いつもならこの時間帯でも、学校生活に真面目に取り組まない生徒、所謂不良はそこら辺でたむろしている。


しかし我が校は先週から『遅刻厳禁挨拶絶対週間』だったので(先月やっていたのは『挨拶強化週間』とかもう少し優しいニュアンスのものだった)周りには誰もいない。


遅刻した場合は確か…生活指導担当の先生に5ヶ月間の雑用を言い渡される、だったかな?


よりによってその時期に遅刻しそうなんて、ついていない。


だが、要は遅刻しなければいいんだ、明日からは気をつけよう。


「ふぅ、なんとか間に合いそうだ」


すると突然


「おい、そこのお前。止まれ」


と声がした。


声のした方向を見る。


そこには紺のスーツを着た、二十歳過ぎに見える男がいた。


しかし、実際そのスーツはあまりにも似合っていない。


なぜなら、その髪は黒く、狼のように荒々しく逆立ち、髪と同じく漆黒のグラサンをかけ、極めつけはその頬に残る大きな三本の『傷痕』。


まさか、昨日の家からの追手?


いやしかし、何か雰囲気が違うような――。


いや違うというより――似ている?


似ていると言っても、あのやくざっぽい人にではなく…。


なんだろう?既視感と恐怖が頭を駆け巡る。


僕はこの感じを『知っている』。


「なんですか?僕は急いでいるのですが…」


今、頭によぎった感情を頭から振り払い応えた。


「お前、『梛川神音』か?」


スーツの男がよく通る声でたずねる。


「なんで僕の名前を…?」


「お前は『シュレディンガーの猫』というものを知っているか?」


男は静かに呟く。


「まぁ……聞いたことはあります。猫が生きてるか、死んでいるかの確率、それが重なっている。みたいな話ですよね」


「あれは生か死か、その2つにしか焦点をあてていない様に感じるのは俺だけだろうか?」


「…それ以外に何かありますか?」


「あるとも、あるとも、在りすぎる。例えば『その猫が放射性物質に適応したら?』」


男は突拍子もないことを言う。


「…そんなの…あるわけがないでしょう」


僕は笑ってしまった。


しかし男は大真面目な顔で話を続ける。


「いや、ありえる。某ゾンビゲームにも似たようなキャラがいただろ。ガメラだかバメラだか忘れたけど、アレは確か、放射線を浴びてああなったんじゃなかったか?」


「それは全てフィクションですよ。現実にあったら、たまったもんじゃない」


「現実にも似たようなものがある。というか、人間だってそうやって生まれたものじゃないか。言い方を変えればわかりやすい。『猫は進化した』とな」


「…進化なんてそんな簡単に行われませんよ。それこそゲームじゃないんだから。というか、僕には時間が…」


「なら別の例えをしようか。『その猫は実は化け猫だった』。半妖のお前には否定しにくい可能性だろ?」


半妖?――まさか


この男は僕の、僕の家族の秘密を知っている?


「俺は別に適当な反例をあげて、過去の偉人の意見を冒涜するつもりは毛頭ない。ただ――」


男は一呼吸置いて、


「そういう『可能性』を出せば、俺みたいな奴も、認められるかな、って思っただけだ」


と、言った。


「『可能性』…」


「そうだ、『可能性』だ。たとえ天文学的な数字でも、そこに『可能性』を見いだせば、俺みたいな…中途半端な人間でも…」


男が言葉をにごす。


「……?」


「まぁ下らない話はここまでだ」


そして男は下らない話に終止符を打つ。


唐突に始め、唐突に終わる。


「『梛川神音』、早速―――手合わせ願おうか」


スーツの男はボクシングのような構えをする。


「今までの話はどこへ…。というか、いきなりすぎて理解できないんですが…。僕は他校にまで有名な不良とか、不祥事でボクシング界を追放された天才ボクサーとかじゃないんですけど…」


「グダグタ五月蝿い。そんなことは知っている。いいから構えろ」


男の目は本気だった。


先ほどまでのぬるい目ではない。


何度も戦場で見た事がある。


銃を握る熟練の傭兵のように。


この人は、この目は―――本気だ。


「待ってください。僕は争いごとが嫌いで――」


「こないならこっちからいかせてもらう」


男は僕の言葉を遮り、唐突に殴りかかってきた。


男の拳はまっすぐ僕の頭を狙っている。


「おわっと!」


首を曲げ、すんでのところで避ける。


しかしその拳は伸びきったところで軌道を変えた。


「俺のは『ボクシング』みたいな、対人格闘技じゃない。もっと、野性的だ」


「え?」


男は伸ばした方の拳を開き、僕の後頭部をガシッと掴む。


まるで万力に挟まれたような錯覚に陥る。それほどに強い力だ。


そして、そのまま腕を地面に叩きつけるようにした。


地面はもちろんコンクリートなので、そのぶん衝撃も増している。


そして僕は受け身をとる暇もなく、地面と接吻をかわした。


「っ……!」


接吻なんて甘い言い方とは正反対に、顔面に意識が飛ぶレベルの痛みが襲いかかる。


まぁ回復力が高いから気絶はしないんだけども。


「ふん」


男は僕の頭から手を離し、おもむろに話し始める。


「反射神経は中の上。耐久力は上の下。筋力も特別凄いわけではない。普通のそこらのガキだ」


「いってぇ…。……当たり…前…です。いきなり…なに…するんですか」


歯のどこかが欠けたようだ。最悪折れている。


僕は息も絶え絶えに言った。


「いったい…何の為に…」


「理由か?あいつが新しい『騎士』(ナイト)を、いや、『王子』(プリンス)を見つけたって言うから見に来てみたんだが…。がっかりだ、『梛川神音』」


勝手に身体能力を批評され、勝手にがっかりされ腹がたったが、それより身体が痺れて動かない。


まるで金縛りにあっているように。


「あぁ、身体は無理に動かすな。動かないようにする技をかけた」


身体を動かないようにする技?


あの荒々しい攻撃の中にそんな高度なテクニックがあったなんて…。


「まぁ脳をいい感じに揺らしただけなんだけどな」


よくあるお母さんのテレビを修理する方法みたいな技だな、と思った。


「お前が動けるようになるまで、さっきの話の続きでもしようか。別に一生そこに這いつくばっててもいいが、通行の邪魔だし、早く起きることをオススメする」


男は一息ついてまた語り始めた。



「俺にはな、『人間』の才能がないと思うんだ。何にも出来ないとかの話じゃなくてな、何でもできるんだ。周りは俺をすごいと誉める。でも俺はお前達の方がすごいと思う」


男は目を細めて言う。


「どうしてそんな『人間』らしいんだ、ってな」


まるで自慢をしているような言い方だが、顔にはまぎれもない悲しみが表れていた。


そしてその言葉は僕の胸に深く突き刺さる。


だって僕も、姉貴も、僕の周りには『人外』と呼ばれてもおかしくない者がたくさんいる。


だからたぶん、共感してしまった。


哀れに思って、馬鹿馬鹿しく思って、でもやっぱり、共感してしまう。


「だから俺は『可能性』って言葉が好きなんだ。こんなにも『人間』らしくない『人間』がいたって、認めてもらえるような気がするんだ」


「…で、あなたは…誰なんですか?」


共感はするが、いつまでも黙っている訳にはいかない。


身体に自由が戻り始め、喋れるようになった。


遠くでチャイムがなるのが聞こえた。遅刻の言い訳に喧嘩は使えるのだろうか?


使えないだろうな…。


「ふん、回復力は上の上だな。2分たらずで今の技から起き上がったのはお前で13人目だ」


「意外に多いんですねっ!あとなんか不吉だ…」


「それじゃ第2ラウンド開始するか…」


ツッコミはスルーされた。


言うまでもないが、回復力はバッチリと吸血鬼の力の恩恵だ。折れた歯もたぶん治った。


「というか、第2ラウンドなんて御免ですよ!」


「いやいや、このままじゃ納得いかん。しょうがないから条件付きでやってやるよ」


「条件?」


「俺は左腕だけを使う、お前は俺を一度でも、一瞬でも、地に伏せることができたら勝ちだ。これで勝てなきゃただの雑魚だ」


いやはや、成人男性がか弱い中学生を見下し雑魚扱いするのを僕は生まれて初めて聞いた。


「いくぞ」


「えっ――またもやいきなり!?」


僕はマンガなどのあの戦闘中にぺちゃくちゃ喋るのが嫌いだったが、いきなりやられるのも嫌なものだなと思った。


今度のパンチは先ほどより速度が遅く避けるのは簡単だ。


しかし、ギリギリところで避けたらさっきの二の舞だ。


なので少し余裕を持って避けた。


「もう遅刻決定したし、この恨みを晴らすのは今しかない…。やられてばっかじゃ気にくわないし、こっちからも行かせてもらいます!」


僕は殴られる理由がない、故に避ける理由もないという超絶理論を展開する気は毛頭ない。


やられたらやり返す。


だから、次はこちらからの攻撃を仕掛ける。


これでも僕は『アイツ』のせいで、喧嘩慣れ、もしくは戦いに慣れている。


確かにこの人は強いが、左腕だけなら勝てるかも知れない。


しかしそれもさっきの条件があってこそだ。


あの男が提示した条件なら1つだけ、勝てるチャンスがある。


しかしそれには相手に孫悟空で言う元気玉、ブリーチで言う月牙天昇並みの、いわゆる必殺技を出してもらわねばならない…。


もちろん物理攻撃で。マンガじゃないんだ、本当にそんなもの出されたら勝機は消え去る。


とりあえず牽制として数発仕掛ける!


「ハッ!」


渾身の力を込めて正拳突き。


「ふん、なかなかの力だ。それでも中の上止まりだがな」


男は軽々と拳を弾く。


「まだまだぁ!」


弾かれた勢いに乗って、そのまま蹴りを入れる。


その蹴りは男の脇腹にヒット。しかし、わざと避けなかったように見える。


そしてそのまま連続で蹴りつける!


肩、膝、太股、鳩尾、etc…。


男はすべて避けなかった。

避ける必要がなかったのかも知れない。


「弱い、弱すぎる」


男が頭に向けられた蹴りを左手で掴み、頭上に持ち上げた。


「掴まれたらヤバいってのはさっき学んだよ!」


足を勢いよく回転させ男の手から抜け出す。


「チョロチョロしやがって…」


男が苛立ったように呟く。


「失望した。もう終わりにさせてもらう」


「どうした、必殺技でも出すのか?俺を倒すにはお前の全力を出さないと無理だと思うぜ?」


小学生でもわかる安っぽい挑発をした。


やったあとで後悔したが、男は今の挑発を気にすることなく言った。


「そんな大袈裟なもんじゃない。ただ形式があるだけだ…」


どうやら挑発に乗ってくれたようだ。


「まぁ、大袈裟じゃないと困るんだけど…」


男が深く深呼吸をする。


空気が…変わった?


「―――闘ノ型、壱」

男が左腕を後ろに引いて腰を低く構える。


なんか嫌な予感がする。予感というより予想だが。


「やっべー、挑発ミスったかも…」




「――『虎突拳』(コトツケン)」


引いた左腕の拳が低く構えた下半身と共に弾丸のように放たれる。


放たれた拳はまっすぐ僕の身体を狙う。


速い、速い、弓矢のごとく一直線に進む。


そしてそれは、速く、重く、僕の身体を貫く――――ように思われた。


003


「―――なっ!?」


男が驚きの声をあげる。


男がコトツケンだかなんだかを出した数秒後。


男は地面に倒れ込んでいた。


「梛川神音流護身術、人間モード時の唯一無二のカウンター技『白紙』(はくし)。まぁ、僕の勝ちってことで」


時間にして1秒未満。


威力が高い技というのは、当たり前だがほとんどが勢いも強い。


その勢いを利用し、相手を投げる技。


僕は相手の拳をギリギリまで観察し、勢いが最高に達した後、相手の腕に自分の腕を絡め、背負い投げの要領で勢いの軌道を変える。


本来地面で相殺されるはずだった勢いは行き場、いや、止め場を失う。


一度空中に浮いた身体をその勢いに乗せて投げるのは簡単だ。


この技は基本的には普通の武術(柔道など)にも似たような技がある。


しかしそれと決定的に違うのは『タイミング』である。


『超視力』は動体視力を一時的に極限まであげることもできる。


それにより、完全なタイミングで、相手の勢いを自分の技に変換する。


これが『白紙』。


ちなみに攻撃技はありません。だって人間だもの。


押さえ込みも少しできるけど…それはまた機会があれば。


「はぁ、なんとか勝った…。というか、なんのために戦ってたんだっけ?」


今さらだが唐突に仕掛けられた喧嘩の割に僕はノリノリだったなと思った。


「てか、学校遅刻しちゃったよ…。とりあえず行くか――」


「ハハハハハ!」


男が急に笑いだした。


男は、いやぁと続け


「地面に倒されたのは『3年ぶり』だ!テンション上がっちまったわ」


と本当に可笑しそうに言った。


今…『3年ぶり』と言ったか?


いやいや待てよ。


そんなことより。


確かに一時的に地面に伏せるのが、勝利条件だ。


でもこの技は相手の技が強いほど、威力も上がる。


さっきの勢いなら、『気絶』、良くても数分は動けないはず…。


「どんな身体の造りしてんだよ、この人…」


ひとしきり笑って、男は


「しかし条件付きでもこんな子供に寝かされるなんてな!やっぱ『2割』じゃ新しい『騎士』には勝てんな!」


と言い、また豪快に笑いあげた。


『2割』と言うのは何だ?


もしかして…。


「今までのやつ、『2割』の力で戦ってたんですか?」


「あぁ。でも勘違いすんな。『人間』相手には最高3割あれば絶対負けないだろうし。そういう意味ではお前はよくやった。お前の今の基本スペックを考えれば、俺はお前を尊敬すらする」


「はぁ、そうですか…」


「ただし『人間』としてお前を見たとしたらな…」


「……そういえば、どうして僕の秘密を…」


「それはまた後で。それより見たくないか?」


男はニヤリと笑って言った。


「『人外』を相手にするときの『力』」


「それってどういう――ん?」


男はほんの数秒前まで道の真ん中に座り込んでいた。


しかしいつの間にか『消えていた』。


目を反らした覚えはない。つまり相手は――。


「僕の自慢の眼でも追えない速さで移動したぁ?、ってかぁ?大正解だ」


一瞬。


まさに一瞬の出来事。刹那という言葉がふさわしい。


男は僕の背後に立っていた。


気配なぞ微塵も感じなかった。


「いつの間に――っ!?」


男が僕の頭に手を置いて『握った』。


「ガァァァァアァァァァアァァァアァァァァ!」


「うるせぇ。近所迷惑だ」


男は僕の叫びと反対にのんびりと注意をし、ゆっくり手を話した。


さっきも頭を掴まれたが、『桁が違う』。


さっきのが万力なら、今のは工場で使われている電磁スクラップだ。


掴まれたら――潰される。


そして薄れゆく意識の中で僕はさっきの既視感に気づいた。


この人は、『父さん』と、いや『化物』と似ている。


「まぁ少し寝てろや」


そして僕は気を失った。


004


それは数十分だったのか数時間だったのか、僕にはわからなかった。


ぐっすり気絶していた。


久しぶりの気絶、嬉しくはないが。


「というか…ここは?」


僕は安っぽいベッドの上に寝ていた。


天井には白いタイル、周りの景色を遮断するカーテン。


どうやらわが校の保健室のようだ。


「いっつ!まだ痛いなぁ、頭割れるかと思った…」


僕は変な男に絡まれて…、んで気絶させられて…。


「あの男は!?」


「あっ!しおんちゃん起きたぁ!?」


アレ不思議だな。耳が音の波を受け取り拒否したいと訴えてくる。


しかし実際、鼓膜を開閉する機能は人間と吸血鬼にはついてない。


他の動物がついているかも知らないが。


シャー、とカーテンという名の薄っぺらい壁が消え去る。


どうせならカーテンより、本物のコンクリの壁で僕を囲って欲しかった。


なぜなら、向こう側に見えるのはまぶしい太陽光の反射と――『アイツ』の姿。


「いっそ殺せぇ!」


「まてまてまてぇい!会って1秒足らずで死を選ぶなんて、どんだけ嫌われてるんだよ俺様は!」


「そんだけだよ!」


そこにいたアイツ――神取いろはは、相変わらずの純和風な黒髪が腰まで伸びている姿と俺様言葉が似合っていなかった。


ざるそばにタバスコをトッピングした感じで。


ミスマッチなんて言葉を挟む隙もないほど合っていない。


「いったん落ち着こうかぁ。しおんちゃん♪」


「…なんでいろはさんがここに居るんですか?」


「しおんちゃんが心配だからだよぉ♪」


「僕の首をはねろ!」


「話が進まないなぁ…」


困ったような顔をするいろはさん。さすがにふざけすぎた。


「まあ心配云々は置いといて。それだけの理由ですか?」


僕にはそんな小さな理由でこの女が動くとは思えない。


「まぁあとは…身内の不祥事の後始末は身内がやらないとねぇ…」


どこか遠くを見ている。その視線の先には――


「……ふぅ」

――お茶を飲んで一服ついている『スーツの男』がいた。


………。


「…身内?…あのスーツでグラサンで頬に三本の熊にひっかかれたような傷痕がある男の人が?」


「熊じゃない。虎だ」


男がゆっくり喋る。


「そう。アレが身内。まぁ身内って言っても二等親、つまりお兄ちゃんなんだげどねぇ」


にんまり笑う姿は不気味だ。(そう感じるのは僕だけかも知れないが)


というか、え?


「お…兄…ちゃん?なんか…キャラ違いません?」


「まあまあ。とりあえず紹介するねぇ♪私の身内であり家族であり兄でありボディーガードであり奴隷であり『騎士』の神取虎鉄さんでぇす♪」


ノリノリで紹介してるが、紹介の中に家族に対しておおよそ使うことがないであろう単語が混じっている。


そして、この女が普段使うことがないであろう単語も混じっている。


しかし、そんな妹の言動を気にすることなく、彼、虎鉄さんは今更ながらに挨拶をする。


「さっきはいきなり殴って悪かった。改めてよろしく、『梛川神音』」


なんだろう、急に姉貴に会いたくなってきた。



次回予告!


唐突に現れた神取虎鉄


そして神取いろはから語られるこの町の異変


町に現れた一体の鬼


そして鬼塚家の秘密


神音はもう逃げられない



PS、次回は12月中旬を目指します


遅れた理由は…聞かないで。


どうしても聞きたいなら感想を下さい!(必死)


ではでは、またいつか…

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