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第14話 冒険者ギルドでの世間話から



「オークの鼻が50と、オーガのツノが5体分、ですね」

「はい」


 オークの鼻と違って、オーガの討伐証明は真ん中と左右の3本のツノを合わせて1体分になる。

 真ん中のツノがやや大きく、左右のツノは曲がる向きが違うので誤魔化せないようになってる。

 鼻だとそれがオーガだとは分からないらしい。人間との区別がつかないそうだ。


 ボーダントの町へやってきてからおよそ2カ月。

 やってきてからといっても、そのほとんどは森の奥の拠点での生活だけど。


 ボクの冒険者ランクはEランクになっていた。


「……エニシさん。護衛依頼、受けてもらえませんか?」

「いや、あんまり好きじゃないので……」

「でも……森の最奥でBランクのオーガを狩ってくる冒険者がEランクのままなんて困りますし……」


 ボクとしてもいつかは冒険者ランクを上げていきたい。

 でも、それはまだ少し先じゃないかとは思ってる。


 あの腐ったナタリー王国の王都を出てから、このボーダントの町がまともに人間と関わった最初の町だ。

 今はまだボクにとっては情報収集の段階でしかない。


 それに『Bランクの実力があるEランク』っていうのは、ある意味で目立つ。

 ボクのジョブが魔物使いってこともあって、ボーダントの町ならすでに割と知られてるらしい。


 約半月ほど前から、森の奥の拠点の軍団はオーガの縄張りに接触した。

 最初は軍団に被害も出たんだけど、それぞれの部隊にゴブリンの斥候役を置いたら戦況が大幅に改善した。


 ずる賢いゴブリンがうまくオーガを釣り出すから。

 あいつら、すごいよな。


 ガチンコのタイマンでもテイムしたブラッドベアーはオーガに勝つけど、オーガは単体ではあまり動かない。

 だいたい3体から5体くらいの小集団で行動してる。


 それを斥候役のゴブリンがうまく分断して釣り出すようになって、圧倒的な勝率を上げるようになった。


 もちろんボクが森の奥に行った時には、オーガもテイムしてある。

 今は強化期間だから軍団に少しずつ加えて戦わせてるけど、いずれは拠点の防衛主任みたいな感じでオーガを使いたいところ。


 オークよりも器用で、オーク以上の怪力がある。それに拠点をまるで人間の町みたいにしてくれるのもオーガを拠点に置きたい理由だ。


 べ、別に拠点で使うベッドをよりいいものにしたいとか思ってないから!?

 前よりもずっといいものにはなったけど!?


 ……残念ながら、ミカゲみたいにしゃべる鬼っ子娘はいなかった。


 まだ見つかってないだけかもしれないけど、どうやらボクのモンスター娘ハーレムはどうやらまだはるか先にあるらしい。


 まあ、ミカゲがいてくれれば十分だ。カワイイし。


 特に……こっちの宿屋に泊って、声を出さないように我慢して身震いする姿は……拠点でひたすらあえぐ時とのギャップでめちゃくちゃ燃え滾る……。


「あの……エニシさん?」

「……あ、ボクは、従魔たちが優秀なだけなので」

「その従魔たちをうまく連携させてるんでしょう? そうでなければオーガを5体も狩れませんよ」

「……秘密です」


 そのくらいの予想はできるのか。

 まさかオーガもテイムしてるとは思ってないだろうけど。

 それにもっと多くのオーガを狩ってるし。


「エニシさんにはせめてDランクになってもらいたいんですよねぇ」

「はは。機会があったら考えますよ」


 そう答えた瞬間だった。


「オレが先に取っただろうが!?」

「いやオレが先だ!?」

「ふっざけんな! やんのか!」

「ああ? やってやるぞ!」


 入口近くの依頼掲示板のところでケンカが始まったらしい。


「……ここのギルドってこんなに騒がしい感じでしたっけ?」

「違いますよ。最近、ああいう人たちが増えたんです」

「増えた?」


 奥からギルド職員が出てきて、仲裁してる。

 あ、仲裁というより、連行してるのか。


 どうやら訓練場があるっていう裏庭の方へ行くらしい。


「……隣国の王都でなんか、治安が悪化したとか、王都近くの森でホーンラビットが狩れなくなったとか……何が本当なのかは分からないんですけど、そっちから人が流れてきてるみたいで」

「……へー、そーなんだー」


 ……なんか、身に覚えがある話のような?


「聞いた話だと、ゴブリンか、あとはあんまりお金にならない虫系の魔物くらいしかいないらしくて。それで冒険者が各地に移ってるみたいなんですよね」

「なるほどー、そーなんですねー」


 つい、棒読みになってしまう。


 ボクの嫌がらせはずいぶんと地味な影響を与えたらしい。


「それに押し出されるように各地の冒険者が移動してて……別の町に新しくやってきた人は、ほら……誰も知らないところだから自分を強く見せようとしてしまうっていうか……だからああいうケンカが起きると、訓練場で職員と模擬戦させて力量を見つつ、殴って分からせてるところなんですよ」


 殴って分からせるだけの力量がここのギルド職員にはあるんだ。

 まあ、あんな感じで暴れるヤツは大したことないって話なのかもしれない。


「冒険者だけじゃなくて、庶民も王都から逃げてるって話もあって……この国は落ち着いてるから大丈夫ですけど、あっちでは何かあるかもしれませんね」

「はー、心配ですねー」


 ついつい棒読みになってしまう。


「あ、それでは討伐報酬が届きましたので、これで」

「はい。ありがとうございます」

「……エニシさんみたいな礼儀正しい方が増えてほしいんですけどねぇ……」


 ボクが礼儀正しく対応してるのは、ギルド職員が礼儀正しいから。

 相手によって態度を変えるのはよくないとか、そういう感覚は捨てた方がいい。


 ケンカを売られたら、ボクより弱い相手なら買うし、ボクより強い相手なら逃げるか、従魔で囲んでボコる。


「ではまた」

「はい。いってらっしゃいませ」


 一礼する受付さんとの世間話を終えて、ボクは出入口へ向かった。


 ついでに誰もいなくなった依頼掲示板を確認してみる。ここにいた連中は訓練場での模擬戦を見に行ったんだろう。

 たぶん、賭けでもやってるんじゃないかと思う。


 そこでボクが偶然目にしたのは気になる依頼。


 ……グリーンウルフの討伐依頼?


 それはボクのテイムしてる魔物に関係しそうな依頼だった。






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