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とある少女の最期

 …はぁ、はぁ。


 一体どこまで逃げれば、私は救われるのだろう。


 …はぁ、はぁ。


 「待ちなさい!」と男の怒号が背後に近づいてくる。着実に、その距離は短くなっている。


 …はぁ、はぁ。


 脚はもう動かない。仕方ない、何日も水しか飲んでいないのだから。生きているのがやっとなのだから。


 もはや自由には動かない脚が縺れ、気づけば私は泥に塗れていた。気づく余裕なんてなかったが、いつからか雨も降っていたらしい。口の中まで泥水が流れ込む。もはや、そんな味を感じることもままならない。


「余計な手間をかけさせられると困るんですがね!」


 追いついた男は乱暴に私を掴む。これから、何をされるのだろうか。


「わかっているでしょう。あなた処刑されるんですよ。…勇者様を召喚するためにね。」


 男の拳が一発、鳩尾に突き刺さる。視界が揺らぎ、目の前が暗くなる。

 …そして、次に気づいたときには儀式の処刑台に吊るし上げられていた。手足は十字架に縛られ、動かすこともままならない。もっとも、そんなことされていなくても動かす気力などもはや微塵も残っていないのだが。


「すまぬな、フーリ。一介の町娘にすぎぬお主に恨みなどないのだが…。国を救うと思って、どうか我らを許しておくれ。」


 そんな道理など私の知ったことではない。私の人生は私のものだ。国を救うとか、勇者を呼ぶとか私には関係ない。関係ないのに…。

 国王が手をかざして合図する。魔術師が頷き、杖を私に向ける。そして、炎の弾が私に向かって放たれる。身体を覆うには充分すぎる大きさの火球が私に迫りくる。私の人生は、確実にここで終わる。


 …おのれ、国王。


 …おのれ、魔術師。


 …おのれ!勇者!


 いつの日か必ず、必ず復讐してやる。その息の根を私自らで止めてやる。必ず、必ず。


 燃え盛る自らと視界、その意識が完全に消失する間際。下方の魔法陣が紫金に輝きだす。私はそれに向かって最期の力をふり絞り手を伸ばす。光の中心に人影が薄っすらと浮かび上がったところで、私は人生を終えた。齢17歳。短い人生が終わった。…はずだった。





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