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ホーネット  作者: 心一
2/3

重圧



朝が来た。

窓のブラインドを開けて、陽射しを入れる。



日光はいい。浴びると生まれ変わったような気分になれる。

身体の中の不純を洗い流し、活性化させてくれる。

そうだ。俺達は日光さえ浴びていればいい。




しばらく日光に浸った後、俺はやむを得ず支度を始めた。

学校に行かなければならない。

学校に遅れてしまう。


こんなこと考えたくもなかった。


行きたくない、ただそれだけだ。しかし条約の上では、俺達が学校へ行かなかった場合、現在の生活を剥奪されてしまう。

それは困る。

今この小さなアパートに住める事が唯一の支えだ。

国が用意したアパートで、日本に10ヶ所ある。

そしてそこに住むのは、俺同様昆虫人間である。


隣も上も下も全て自分と同じ種族が住んでいる、というのはとても安心する。

しかしお互い決して仲がいい訳ではない。

同じ種族といっても、それぞれ違う。俺は蜂だが、縄張り意識の強い甲虫や喧嘩早い蟷螂、警戒心の強いトンボなど、様々だ。

特に、捕食されやすい蝶々なんかは、捕食禁止条例がだされても今だにビクビクしている。




つまり、みんなピリピリしているのだ。





当たり前だ。

こんな条例だらけの生活で、共存も糞もない。





学校の制服に腕を通した。

相変わらず嫌悪感しかない。

本来俺達は服なんかきなくていい。


人間のまね事のようで、酷く馬鹿馬鹿しかった。




俺は人間でいうと高校生にあたる年だから仕方なかった。




「………言い訳にもならねぇ…」





こんなことを思う自分も嫌いだった。









シンクに転がっている栄養水を何本か適当に鞄に詰め、もう一本を開けた。

そして、体内を洗い流すように飲んだ。


空になったボトルをごみ箱に投げ入れた。







そろそろ家をでなければ。

気が重い。


けれど家から学校まで徒歩で行ける距離なのが唯一の救いだ。

俺達はまだ電車には乗れない(乗りたくもないが)。だからといって羽根を使う事は許されていない。


ここまでやることが制御されてしまうと、俺達はもう本来の俺達ではない。

まったく馬鹿げた話だ。

とにかく不満が多すぎる。

人間の食いもんはまずいし。




「………出るか」








この玄関のドアだけがいつも重い。

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