冷酷
冷たい視線。もう馴れた。
それでもやっぱり嫌なものにかわりはない。
ひそひそと、ききたくもないのに聞こえてしまう悪態。
言っている方も言っている方でよく飽きないな。
窓の外をみる。
鳥が一羽飛んでいた。
ああ、今俺があの鳥だったならばどんなに幸せだっただろう。何も考えずに、ただひたすら自由に飛び交う。もうなんでもいいから、次生まれ変わるときは完全なものがいい。
人間でも無く虫でも無い中途半端など、もううんざりだ。
「おい、授業を始めるから席にもどれ。」
人間の男が叫んだ。教師とは呼ばない。
すると、遠巻きに避けていた生徒達が渋々というより嫌々と席に着いた。
俺の周りの席の奴らは少し時間をかけて座った。
それでも、俺の周りの席は人為的に離されている。まあ別に、だからどうしたという訳だが。
こうして俺の一日が始まる。
面白いことは一切ない。むしろ厭だ。
しかし行かない訳にはいかない。国が定めた事以上、俺等は逆らえない。俺等のような存在が確認されてから、日本は相当混乱しただろう。人間いわく昆虫人間である俺等は、普通は保護するか殺すかすればいいものを。
わざわざ人間と同じ生活をさせて、お互い差別の壁を取り払おうーーーなんて、人間は神のつもりか。現実をみろ。今にもこの教室には俺をみて泣き出しそうな奴がいるというのに。
結局口先だけなら誰だって何でも言える。
俺は、ふと隣の席をみた。
空席である。
俺が転入してきた時から休んでいたので、どんな奴かは知らない。だけどきっと、コイツが学校へ来て隣が俺だとしったら酷く絶望するだろう。まあ例えそうなったとしても俺は悪くない。そんなの知らない。俺はただ国の言うことを聞いているだけだ。
「起立、きをつけー」
また、意味の無い一日が始まった。