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黒猫カイくん家出する 強制的に休暇を取らされたので、異世界で無双します。  作者: WR-140


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8/22

これ、知らん顔したらダメですか?

〝だけどさ。

何だか話が大きくなりすぎてない?

ボク、遊びに来たんだよね。休暇中だし。

美味しいものを食べたら、こんなややこしい世界とはサヨナラしたかったのに、これでは難しそう。

だって、ボクがいなくなればネフィは多分…。

それ、後味が悪すぎるよ。

ボクは所詮通りすがりの猫だもん。この世界がどうなろうと構わないはずだけどさ、この陰謀が進む道には、まだまだ多くの犠牲が積み重なるのはわかってるんだ。

これを計画した連中はもう止まらない、いや、止まれない。賽は既に投げられてしまったのだから。

目的はどうせ、金か権力なのだろう。

だから既に幾つもの危ない橋を渡り、少なからざる資本を投下したはずだ。

愚かすぎて言葉もない。自分たちが何をやらかしたかまだ気付きもしてないなんて。

それから、対ガイノア結界だって?

笑止だね。

ガイノア侵略からまだたった2週間しか経っていないのに、この程度のテクノロジーで、それに特化したシールドを構築したって?

あり得ない。そんなこと、この事態を招いた側でもなければ、出来るわけないよね。

思わず笑ってしまうほどのご都合主義。

何か企むなら、頼むからもう少し緻密にやれって言いたくなっちゃうよ。

つまり。

この神殿を擁する勢力こそが黒幕だってこと、わからない方がどうかしてる。


まあだけど、そんな小さなことはどうでもいい。

問題は、このままではこの惑星の全てが滅びるという事実だ。


カイは、神殿のシールドの解析を通じて、この世界と自分の世界との成り立ちの違いに気付いていた。

カイの世界にある魔法や魔術、呪術のたぐいは、通常テクノロジーとは別物と扱われているが、ここでは違う。

テクノロジーそのものに幾らか魔法的な要素が組み込まれているのだ。これはこれでなかなか興味深い。

しかしあまり長居する場所ではないようだ。カイの好みからして、冷徹な理論と正確な演算のかわりに、職人芸とか個人の素質がどうとか言われてもな、というのが正直なところである。

名人の技には敬意を払うカイだが、安全保障に関することや生活に深く根ざしたテクノロジーについては、確実性と再現性は必須と考えずにいられない。

名人の手並みを頼らずとも、誰にでも安全確実に利用できてこその技術であろう。

検索してみたら、魔法師だの結界師だのと専門分野に特化した技能職があって、それなりにエキスパートとして幅をきかせてるみたい。

今回の件にも、多くの専門家が絡んでいるだろう。専門家は、自分の専門についてはプロフェッショナルかも知れないが、果たして全体が見えているかは疑わしい。

無論、彼ら職能集団を使役している側だって、全体像など見えているはずがないのだ。

だから、こんなことになったのに、まだ誰も気付いてすらいないなんてね。

思わずため息が漏れた。

カイは、何度も繰り返し解析を行ったが、結論は変わらない。


このままではこの惑星は滅びる。確実に。


〝ボクの解析だけじゃ不安だしなあ。でも、休暇中だし。

まあいいか。解析に多少のミスがあったとしても、結論は変わらない。滅亡する範囲が僅かに変わる程度だから。〟


後は、被害をどう最小限にとどめるか、それが大問題だよね。


「んー、それにしても、んまい♡」

カイの声に、ネフィルがギョッとした表情を浮かべた。

「ち、ちょっとカイ、聞こえちゃうよ?」

2人は今、神殿の裏手にある果樹園にいた。ここから少なくとも2台のカメラが見える。通常の監視カメラで、隠蔽はされていない。

果樹園はさほど広くはないものの、美しい場所ではあった。

実りの季節だから、綺麗に手入れされた果樹のあちこちには、たわわなフルーツが実っている。

赤、黄、緑のブドウみたいなものや、どこか瓢箪を思いださせる形の真紅の果実、青く透き通るゼリー状の果肉を持つ、クラゲみたいな奇天烈な形のものまで、初めましてが目白押しだ。

カイにとっては正にパラダイス。

「心配いりませんよ、ネフィさん。ここのシステムは今、ボクの支配下にありますから。」

カイは長〜いさやインゲンそっくりの果実をためつすがめつ、のんびりと答えた。

〝これ、どっから食べるのが正しい?〟なんて、絶賛悩み中なのだ。

カイが人知れず支配下に置いたのは、この神殿の監視システムだけじゃないが、まあそんな些細なことより、目の前の果物の食べ方が大問題である。

「支配って、それどういうこと?」

「例えば今から、ボクとあなたがダンスしながら愛を語ったとしても、誰もそれを認識出来ないってことです。」

「…はい?意味わかんないんだけど?あ、愛ってあのー?」

「あー、つまり、何をやっていくら騒いでも大丈夫ですってこと。ん?顔が赤いですよネフィさん?熱は、と?」

カイは赤外線をざっと見て、発熱はなさそうなことを確認した。

「それより、コレどうやって食べたら?」

「あ、ああ!シラミキアね。それ、下半分を食べるの。上の方は少し苦味と毒があるから気をつけてね。」

「そうなんだ。変わった果物ですね。」

「でも美味しいわよ。私は好きかな。」

「なるほど。」

カプリと一口噛んでみて、カイは頷いた。

「確かに好きな味です、ボクも。」

「でしょでしょー!」

果実は見た目と違い、桃の香りとマンゴスチンに似た食感を持っていた。豆の鞘みたいに丈夫そうな皮は見た目よりずっと柔らかく、中の白い果肉部分と一緒に食べられる。満面の笑みでもう一口、味わおうとしたカイだが、悲しいかなそれは無理みたいだった。

「ネフィ!」

カイは叫ぶと同時に人型をとる。

猫の姿の方がしっくりくるけど、今は致し方ないのだ。

変身したカイの姿を見たネフィルが、大きな目を更に大きく見開いて固まるのを視認しつつ、カイは彼女を抱きしめて、シールドを展開した。

神殿の中の連中までは知ったことか。

「か、カイ?」

「少しの間、ボクから離れないで、ネフィさん。危険ですから。」

言い終わると同時に、世界が弾けた。

周囲の全てが白く溶けて、視力を奪う閃光が閃く。

一瞬遅れて轟音が大地を揺るがした。


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