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7 入学式で

厳かな鐘の音が響き渡る中、生徒たちが次々と大ホールに入っていく。

その中心へと、静かに足を運ぶミレイア。――周囲の視線が、刺すように熱い。


ーーこれは、思ったよりも……。


想像以上のざわめきに、ミレイアの頬がかすかにひきつる。


同性の尊敬と羨望、異性の憧れと恋慕――あらゆる感情が、一斉に彼女へと注がれていた。


遅く着いた新入生が着席し、入学式の開会が告げられた。


――落ち着いて。魔力を……暴走させないように……。


なるべく誰とも視線を合わせないよう、ホールの入口に飾られた初代学園長の肖像画に視線を向ける。

真面目そうな顔、感情のない瞳。うん、ちょうどいい。

とにかく、今は挨拶に集中を。


壇上へ上がると、空気がぴたりと静まり返った。

やがてミレイアは、穏やかでよく通る声を響かせた。


「ノクシア侯爵家より参りました、ミレイア・ノクシアと申します。

本日はこのような栄えある席にて、入学生を代表する大役を賜りましたこと、心より光栄に存じます」


丁寧な口調に込められた品位と礼節。

若いながらも、領地運営と商会経営を担ってきた者の風格が、自然と滲み出ていた。


「ーー魔力は、生まれながらにして与えられるものでありながら、扱い方ひとつで人を守る力にも、傷つける凶器にもなり得ます。

私たちはこの学び舎で、力に溺れず、正しく導く術を身につけていく必要があります」


一言一言、噛み締めるように語られる言葉に、教師たちが思わず頷く。


「……未熟な身ではありますが、皆さまと共に、真摯に学びを深め、よりよき魔導士を目指してまいります。

どうか、これからの学園生活を通じて、多くの絆と叡智を育んでゆけますように。どうぞよろしくお願いいたします」


深々と頭を下げるその姿に、ホールは一瞬、静寂に包まれ――

やがて、拍手が割れるように広がった。


……よかった……無事に終わって……。


安堵して顔を上げたとき――


ミレイアの瞳に飛び込んできたのは、壇下からまっすぐにこちらを見つめる、琥珀色の瞳。

レオン・エルヴィス・レガリア。


王太子であり、かつての婚約者候補。

そして――彼女の初恋の相手。


……レオン……殿下?


その目は、まるで宝物を見つけたように、優しく、愛しげに細められていた。

ふと、ミレイアの胸が――きゅん、と高鳴った。


次の瞬間。


「――っわあっ!?」「風っ!?」


会場の床が震え、突風が壇上を吹き荒れた。

ミレイアの足元で小さな竜巻が起こり、演台が持ち上がって、空中で回転を始める。


「みなさん、落ち着いて!」


すぐに教師たちが手を掲げ、制御魔法を展開した。

風はたちまち鎮まり、演台も静かに床に戻された。


がくりと膝をついてしまったミレイアのもとに、駆け寄る人影があった。


「無理をしたな、ミレイア。大丈夫か?」


背中を支えたその声に、ミレイアは目を見開く。

銀色の髪に淡い金の瞳――彼の名はアゼル・フェンリル。


魔塔で名を轟かせる天才魔術師であり、ミレイアの魔力の“治療”という名目で何度も領地を訪れていた人物だ。


「……ありがとう、アゼル……もう平気……」


ミレイアの頬に触れるその手は、どこか慣れているように見える。


壇下のレオンの視線が、鋭くなった。


……なんだ、あの距離感は……。


レオンの胸に、初めて生まれる奇妙な感情。

それは――わかりやすい、嫉妬だった。


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