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本当の姿

「おかえりなさい!」

小屋の前に戻ってきた三人に、パミルが嬉しそうに声をかけた。ミレイアの聖獣ギンと、イリウスの聖獣ユウも傍らに並んでいる。


「ただいま、パミル。外で待っていたのかい? パパに置いていかれて寂しかったか……ごめんな」

アルスが娘の頭を撫でようと大きな手を伸ばす。だがパミルはひょいと身をかわし、長い髪を揺らして父を見上げた。


「いやだわ、お父さま。子供扱いはやめてちょうだい。わたし、今からギンの本当の姿を見せてもらうところなの!」


「ギン? ミレイアの契約獣か。子犬の聖獣かな」

不思議そうに首を傾げるアルス。


「我は古代より生きる銀狼である。これは仮初の姿にすぎぬ」

低く響く声と共に、ギンの体が大きく震える。次の瞬間、銀の光が弾け、目の前に現れたのは小屋の屋根と同じ高さにそびえる巨大な銀狼だった。


「わあ! これがギンの本当の姿なのね!」

パミルが両手を胸の前で組み、瞳をきらめかせる。なぜかユウまで誇らしげに胸を張り、その様子にミレイアは小さく笑みをこぼした。アルスとノエルは言葉を失い、ただ呆然と口を開けたまま見上げている。


「危険が迫れば、すぐにこの姿へ戻ることができる」

銀の毛並みを風に揺らしながら、ギンがミレイアのもとに鼻先を寄せる。


「なんだか、前よりも大きくなったんじゃない?」

ミレイアは背伸びをしながら、その鼻先を優しく撫でた。温かい吐息が頬に触れ、少しくすぐったい。


巨体が窓からの光を遮り、影が小屋の中に落ちる。驚いたユキア、イリウス、マーサの三人が慌ただしく外へ飛び出してきた。


「うわ、大きい……」

見上げたマーサが思わず声を漏らす。


「やはり銀狼は美しい……」

イリウスが感嘆の声を上げ、足を踏み出そうとした瞬間、ユキアがその袖を掴んで引き止め、全員に呼びかけた。


「ギン、その大きさでは小屋に入れないよ。小さな姿に戻っておくれ。昼食の準備ができているから、みんなで一緒に食べよう」


ユキアの言葉に、ギンは再び光をまとい、元の子犬の姿に戻る。すると遅れてノエルが声を上げた。


「ギンがあんなに大きくなるなんて! びっくりした!」


満足そうに尻尾を振るギンはノエルの腕に抱かれ、そのまま小屋の中へ入っていった。後ろからイタチ聖獣のユウがちょこちょこと足音を立ててついていく。


「お姉ちゃんは、ほかの聖獣や精霊とも契約しているの?」

パミルがきらきらした目で問いかける。


「ええ。今日は留守番させているけれど、呼べばすぐに来るわ」

ミレイアが柔らかく答える。


「お姉ちゃんは学園でどんな勉強をしているの?」


「わたしは――」


矢継ぎ早に質問を繰り出すパミルに応えながら、ミレイアも小屋の中へ入っていく。その後ろで、立ち尽くしていたアルスがようやく我に返り、慌てて皆の後を追った。

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