教室へ
魔術科の教室へ向かう廊下を歩くミレイアとレオン。
ロイとクラリスは気を遣って、二人から少し距離を置いてついてきていた。
「殿下、授業が始まるの楽しみですね!」
心無しか機嫌が良さそうに見えるレオンに、ミレイアが明るく話しかけた。
「魔法のこと、ちゃんと学べるなんて、なんだか夢みたいだわ」
「……君が言うと説得力がないな。測定器を壊しかけるほどの魔力を持ってるくせに」
冗談めかしたレオンの言葉に、ミレイアは首を横に振った。
「魔力は少し高いかもしれないけれど、知らないことはいっぱいあるもの。それに、ずっと一人で学んでいたから、友人たちと一緒に学べるのが嬉しいの!クラスのみんな……わたしと仲良くしてくれるかしら……」
その言葉に、レオンは一瞬だけ何か言いかけて黙る。だがすぐに、
「大丈夫だろう、君なら」
と、小さく笑った。
教室の扉を開くと、すでにほとんどの生徒が席に着いていた。
ざわめいていた空気が静まり返る。
一気に向けられた視線に戸惑いながら、ミレイアの名札の貼られた席、1番後ろの窓際の席に座る。レオンは1番前の真ん中の席だった。ロイとクラリスも前の方の席だったので、ミレイアは少し心細い気持ちになった。
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「――では、はじめようか」
教壇に立ったのは、先程の魔力検査の際も指揮をとっていた白髪まじりのふくよかな男性だった。
「わたしはアデラン・ジュール。魔術科1学年の担任を務める。昔は魔塔で研究をしていたが、今はここで魔法学を教えている。厳しいのは覚悟してもらうが、無駄なことは教えん。無理なこともさせん。正しく、真っ直ぐに学んでくれ」
短くも重みのある言葉に、生徒たちは自然と背筋を伸ばす。
一通りの注意とこれからの授業概要、履修方法の説明が終わると、簡単な自己紹介の時間が始まった。