冬季休暇前
教室に続く廊下を並んで歩きながら、レオンはミレイアにウキウキした声で話しかける。
「諸連絡が終わったらいよいよ冬季休暇だな。今日は終わったらすぐに王族寮に来てくれる?」
「あ、すぐには無理なの。夕方まではソフィアと過ごす約束をしてて……その後行くのでいい?」
「ああ、わかった。待ってるよ」
ミレイアが小さく頷くと、レオンは満足げに微笑んだ。
教室に入ると、レオンはミレイアに軽く手を振って前列の自分の席へ向かう。
手を振り返しながら後列の座席に向かうミレイアに、ティナとルイスが勢いよく飛びついてきた。
「ミレイアおはよう!!」
「おはよー、ミレイアさん!」
「おはよう。ティナ、ルイス」
二人の様子が、部屋に帰ると大喜びで飛びついてくるモフィたちのようで、思わず笑みがこぼれる。
「成績順位表みたよ。1位なのは予想通りだけど、びっくりな加点だったね。どんな技を使ったの?」
興味津々で問いかけるティナに、ミレイアは首を傾げる。
「うーん、技なんて使った覚えはないんだけど……。みんなより早く解き終わったからかしら」
「ん?……早く解いたからって加点はもらえないよね?」
ティナがルイスと顔を見合わせる。
「ははは。ミレイアさんなら何でもありえる気がする!」
ルイスは楽しそうにお腹を抱えた。
「ねえねえミレイア。昨日の夜、兄が通信したんだって?勝手に連絡するなって言ってあったのに……急にごめん。兄はどうしてもお礼をしたいんだって毎日のように急かしてくるんだけど、本当はただミレイアに会いたいだけなのよ。だけど、わたしもまたミレイアとお茶会したいし、休暇中に時間取れそうなら会いに来て!」
席についたところで、隣の席のティナが手を合わせる。
「ありがとう、ティナ。是非行かせてもらうわ。予定が決まったら連絡するわね。ーーあ、そういえばルイスのご家族からも通信があったわよ」
前の席のルイスが驚いた顔で振り返る。
「え!聞いてない。誰だよ直接ミレイアさんに通信を繋いだやつ」
「あー、繋いだのは多分ウララちゃんだけど、ご家族みんな一緒みたいだったよ。声を揃えて“会いに来て”って言われちゃった」
ミレイアが思い出してはにかんだ笑顔を見せる。
「悪いねー。うちの家族も港町のみんなも、全員ミレイアさんのファンになっちゃったみたいでさ。俺も近いうちに帰省するし、良かったら冬季休暇中にティナと一緒に会いに来てよ」
「え!何でわたしも?」
ティナが目をぱちぱちさせて身を乗り出す。
「ティナにも会いたいってうちの家族は言ってたし、それに……休暇中ずっと会えないなんてつまんないよ。ティナだって寂しくなるだろ?」
「な……何言ってるの!別に寂しくなんてないから!」
真っ赤な顔であたふたするティナを、ルイスが嬉しそうに見つめている。
「わかった。ティナと一緒に必ず行くわ!」
ミレイアがルイスに向かってはっきりと言い切る。
「やったー!」
小刻みに揺れて喜んでいるルイス。
「もう、仕方ないわね!」
ティナも心なしか口元が緩んでいる。
そこに、担任のアデラン教諭が冬季休暇前の伝達のため教室に入ってきた。