テスト終了日の夜
夕食中に呼び出しがかかり教員室に行っていたミレイアが、自室に戻ってきた。
「お嬢様、ドロテア先生の用事は何だったんです?」
ノエルが、温め直した夕食をテーブルに並べながらミレイアに問いかける。
「解答用紙の裏に、ギンの契約印の紋様を落書きしちゃったんだけど……その件で」
「ん?……何故そんなことを」
「時間が余ってたのもあるけど、ちょっと思い付き?ドロテア先生に聞かれたから、ギンと契約したことを話してきた」
「それは……驚かれたでしょうね」
ノエルは苦笑いをしている。
ミレイアが夕食を口に運んでいると、部屋の壁に備え付けられた魔道具の掲示板が光り、文字が浮かび上がった。
――《明日は午前九時より各教室にて冬季休暇前の伝達を行います。午前中で終了となります。尚、講堂前に所属クラスごとの成績順位を貼り出します。》
「あ、あの掲示板って、実はセドリックのお母様のエリサさんが生み出した魔道具らしいわ」
ミレイアが掲示板を見ながら思い出したように語る。
「まあ!そうだったんですね。さすが、お嬢様の伯母様ですね」
「え?ノエル……エリサさんがわたしの血が繋がった伯母だってこと、知ってたの?」
「あれ?話していませんでしたっけ。まあ、あの後色々ありましたからねー。お嬢様が研究院で徹夜した日に、エリサさんから聞いたんですよ。シオンさんのお姉さんだってこと。私がアリアの妹だってことも話しておきました。エリサさんは私の名前を聞いた時からなんとなく気がついていたようでしたけど……」
「えー、知らなかった」
「それにしても、最近、お嬢様の親戚が立て続けに増えましたね。やっぱりただの偶然とは思えません」
「ふふ。ノエルもそうだしね。何だかまだ増えそうな気がするわ」
ミレイアは最近出会った肉親たちの顔を思い浮かべ、思わず笑みがこぼれた。
「明日で学園はしばらくお休みですね。お嬢様はすぐにノクシア領に帰省されるご予定ですか?」
ノエルが掲示板の文字を読みながら尋ねた。
「そうね……色々行きたい所はあるけど……」
ポロロン…♩
ーーその時、窓辺の机の上にある通信魔道具が淡い光と優雅な音で通信を知らせ始めた。