あいつは最悪
人型精霊のアレクは、短時間ではあるものの毎日のように顔を出すようになった。
月曜日の朝、ミレイアが部屋でノエルに着替えを手伝ってもらっていると、アレクが入ってきた。
「わあ、いい眺めだな。やっぱりミレイアは色っぽい」
「か……、帰って!」
アレクが下着姿をまじまじと見ている。ミレイアは赤面し、とっさに目が眩むほどの光魔法を浴びせて追い払った。
その晩、枕元に降ってきたいつもの不思議な手紙には、
“人もどき精霊に心を許すな
あいつは最悪”
と書かれていた。
火曜日の夜には、ミレイアの入浴中にアレクが現れた。
ミレイアは裸を見られないよう必死で体を隠していたが、ノエルが激怒し、アレクにありとあらゆるものを投げつけた。
「変態精霊!もう二度と入ってくるな!!」
「アレク!主が嫌がっているのが理解出来ぬのか!?」
続けてアレクの前に立ちはだかったギンが、ミレイアを守るために強力な風魔法をぶつけて追い払った。
さらにノエルは、アレクが部屋に入り込めないように、モフィ、スイン、ギンと話し合い、アレクの気配を感じたらミレイアを隠す協定を結んだらしい。
その晩の手紙にも、
“人型精霊には攻撃してもいいよ
というか二度とくるな!”
と書かれていて、ミレイアは唖然とした。
こんな感情的なメッセージを送るなんて、差し出し人はアレクに個人的な恨みでもあるのだろうか。
部屋で会えなくなったアレクは、学園に会いに来るようになった。
木曜日には、いつものメンバーとの食事中に現れ、みんなを驚愕させた。
「彼は人間に見えるけど水の精霊。いないものと思っていいわ」
ミレイアはアレクを適当に相手することに、大分抵抗がなくなってきていた。
「ミレイア、君ほど素敵な女性は今後1000年現れないよ。俺はこの時代に君に会えて最高に幸運だ。レオンが1番と言うなら、俺は2番目でも構わない。一緒になろう」
「無理」
短く言い放つミレイアだったが、レオンは嫉妬して膨れっ面になっている。
ティナは人間離れした美しい精霊に興奮し、
「ミレイアって、めっちゃイケメンホイホイだね!」
と意味不明の言葉を口にした。
ルイスは、
「これはファンクラブに報告案件!みんな驚くぞー」
と鼻息を荒くし、
クラリスは、
「人外まで惹き寄せるなんて!ミレイア、あんたって子は……」
と呆れ返った。
ロイは隣に座るレオンの肩をたたき、
「モテる彼女を持つと苦労するな、レオン」
と、揶揄うように笑った。