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王家からの書簡

レオンが嫉妬を爆発させた日から三日が経った。

あの日からアレクもアゼルも現れていないので、レオンのモヤモヤも、ミレイア不足も少しは解消されたようだった。


確認テストは半分が終わり、今日は中休み。寮に住む生徒たちの大半は、来週の試験に備えて部屋に籠っている。


王族寮の談話室では、レオンとロイ、クラリスがテーブルを囲み、ひとときの息抜きをしていた。


「この紅茶、隣国から取り寄せた葡萄の香りの茶葉を使ったんです。さわやかな香りで美味しいわ」

クラリスは、丁寧にカップを口へ運ぶ。


「ああ、落ち着く味だな。……それにしても、テスト勉強しなくても高得点が取れるレオンがうらやましいよ」


ロイが肩をすくめる。レオンはテスト勉強はせず、普段以上に王太子の執務をこなしている。ノクシア領に行く日を早めたいのだろう。


「テストなんて授業をちゃんと聞いていれば、解けるはずだが?」


レオンの何気ない一言に、クラリスは苦笑した。

「まったく。授業を聞いただけで理解できるなら苦労しませんよ。と言うか、テストには授業で習ったこと以外も出てましたけどね。殿下といい、ミレイアといい……。ミレイアなんて、答案を早く書き上げすぎて、裏に落書きをしていたらしいわ」


その時、談話室の扉がノックされ、執事が姿を現した。

「王家からの書簡をお持ちの、ベルトラン・イグニッツ様がお越しです」


三人は思わず顔を見合わせる。レオンは眉をひそめ、低く答えた。

「入ってもらえ」


扉が開き、ベルトラン・イグニッツが現れた。

穏やかな笑みを浮かべ、丁寧に一礼する。その背後には王家の護衛が控えていた。


「陛下より仰せつかり、直接お届けに参りました」


手には、王家の紋章が金で刻まれた紫の封筒がある。ベルトランは両手で恭しく差し出した。


レオンは受け取ると、一瞬視線を鋭くしたが、すぐに表情を整えて封を切る。

中には、第二王子の婚約発表パーティーへの招待状が入っていた。


ベルトランは深々と一礼する。

「確かにお渡ししましたので、これで失礼いたします。どうか良き日となりますように」

彼は最後まで笑みを崩さず、一瞬レオンに視線を送ると、静かに去っていった。


その背中が見えなくなってから、レオンは小さく息を吐き、書面を読み上げた。


「……弟が婚約? ずいぶん急だな」


ロイが招待状を覗き込み、顔をしかめる。

「第二王子派が動き出したか?パーティーの招待状は、うちやクラリスの実家にも届いているだろう。ミレイアさんの実家のノクシア侯爵家にもね。不穏なことが起きなければいいんだけど……」


「来年の最初の週末……冬季休暇の最後の日か。王命となれば、不参加は許されないな」

レオンは招待状を封筒に戻した。


クラリスがレオンを見つめて問いかける。

「殿下は……ミレイアをパートナーに誘うんですか?」


レオンはわずかに目を伏せた。

「誘いたいところだが……今、王宮に連れて行くのは危険だろう。一人で出席する。祝辞だけ伝えたら、すぐに戻るつもりだ」


その横顔には、抑え込んだ焦燥と苛立ちがかすかに滲んでいた。

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