テスト開始
レガリア魔導学園の休暇前の確認テストは、一科目につき3時間も要する、内容の詰まった厳しいテストだ。午前中に一科目、午後から一科目があり、各教室で来週末まで続く。
昼食前、席の近いティナとルイスが、魔法基礎学のテストの予想外の難しさに悲鳴をあげていた。
「何よ、あのテスト。全然基礎の内容じゃなかったんだけど!」
ティナが肩を落として叫ぶと、前の席に座るルイスも頭を抱えた。
「本当だよ。3時間もあるから余裕だと思ってたのに、半分も解けなかった!」
「ミレイアはどうせ余裕で満点とっちゃうんでしょう?」
ティナが隣りに座るミレイアをちらりと見た。
「そんな、余裕だなんて。5問目の答えが9通りあって、全部説明を書くのに手間どっちゃったから、結構ギリギリだったよ」
ミレイアは軽く肩をすくめ、苦笑いを見せた。
「う……、やっぱりミレイアに聞いたのが間違いだった。その問題、わたしは1通りも答えられなかったわ」
ティナは落ち込み気味に問題用紙を握る。
「ティナ、心配いらないよ。俺もだから」
前の席からルイスが明るく肩を叩いて励ます。
「ルイスは半分も解けなかったんだよね!?」
ティナが驚き混じりに言うと、ルイスは元気に肩をすくめた。
「それより、ミレイア。今日はクラリスとソフィアも誘って、学園内のカフェにランチしに行こうかと思うんだけど」
ティナが提案すると、ミレイアの顔にぱっと笑みが広がった。
「いいわね!」
その提案に応えるように片手を挙げたミレイアだったが、後ろからレオンがすっと手を伸ばして、その手を握る。
「悪いけど、ティナ。今日は俺に独占させてくれない?」
レオンの瞳がいつに増して真剣に見える。
「えー、どうする?ルイス」
ティナがくすくす笑いながら訊ねる。
「うーん。ミレイア守り隊としては、二人きりにするのは心配だけど……。星導祭の日にミレイアさんの両親に殿下が認められたって聞いたし、クラリスさんもあんまり強く言わなくなったんだよなー。まあ、昨日の不憫な殿下の様子に免じて今日だけは許してあげるか!」
ルイスは身を乗り出して答える。
「は?何でいちいちルイスなんかに許可を得ないといけないんだよ。俺たちは恋人だぞ!」
レオンは苛立ちを隠さない。
「ミレイアファンクラブ会長だからさ。明日からはちゃんと、ミレイアさんを公平に分け合おう!」
ルイスは面白がっている。
「なに?」
レオンが眉をしかめ、ルイスの頭をグリグリ押し始めた。
「レオン!!ルイスが痛そう、やめてあげて」
「あ、悪かった」
ミレイアが注意すると、レオンは素直に手を離して謝った。
ティナはずっと楽しそうに笑っていた。
結局、二人は静かな東庭園のテラスで昼食をとることになった。周囲の喧騒から離れ、冬の柔らかな日差しが二人を照らす。レオンは、給仕が邪魔をしないようにと周到に用意したランチボックスを片手に、もう一方の手は自然にミレイアの指を絡めながら歩き出した。