いい友達
教室に入ると、一日休んだだけなのに、クラスメイトたちが次々に寄ってきて心配の声をかけてくれた。どうやら昨日の夕方、意識のない状態で運ばれてきたミレイアのことをクラリスがティナに報告し、ティナがルイスと一緒に教室で広めたようだ。
「ミレイアおはよう。もう大丈夫?あのまま目を覚さないのかと思って心配したんだから」
登校してきたクラリスが、後ろからロイと一緒に近づいてきた。
「おはようクラリス、ロイさん。心配かけてごめん。昨日クラリスが部屋まで来てくれたことノエルから聞いたよ」
「まったく。いつものことながらミレイアの行動力には驚かされるわ。とにかく、元気そうで良かった」
クラリスは胸に手を当て、心底ほっとしたように微笑んだ。
「よお、レオン。朝早く出たと思ったら、わざわざ貴族寮まで遠回りしてミレイアさんを迎えに行ってたのか。また、無駄足にならなくて良かったな」
ロイがからかうように肩を叩く。
だがレオンは笑顔を崩さない。
「ああ。早く会いたくてな。テストが終わったらミレイアがまた王族寮に来てくれることになった。それに、冬季休暇になったらノクシア領でしばらく一緒に過ごす約束もした。今日から執務の調整をするから、ロイも協力を頼むよ」
「……本当にそんな約束を交わしたのか?どおりでレオンの機嫌が良いわけだ」
ロイは「仕方ないなぁ」と呆れたように笑った。
「ミレイア〜!」
「ミレイアさーん!」
声を弾ませてティナとルイスが駆け寄ってくる。ティナは半ば飛びつくようにして両手を握り、ルイスは元気いっぱいに大声で言った。
「やっぱミレイアさん最高だよな、無茶してでも人助けに行っちゃうなんてさ!だけど、倒れたって聞いて心配した!」
「そうそう!わたしは心配で眠れなかったんだから!」
とティナも負けじと続ける。
そのやり取りに、周囲からも「本当だよな」「無理しすぎだよ」などと次々に声が上がり、教室全体が一気に明るくざわめいた。
そこへ、ソフィアが鞄を抱えてやって来た。
「今朝迎えに行こうとしたら、殿下に止められちゃったの。『冬季休暇までは自分が送り迎えするから、先に行っていい』って。……ミレイア不足なんだって」
肩をすくめるソフィアに、ミレイアは小さく笑って答える。
「ごめんね、ソフィア。わたしが心配かけちゃったせいなの。冬季休暇になる前に、またゆっくり話そう」
「うん。私だって寂しいんだから……」
ソフィアは頬を膨らませたが、すぐに安堵したように笑みをこぼした。
その隣では、セドリックがじっとミレイアの顔色を確かめていた。
「僕と徹夜して魔道具を作った後、また無理をして魔力切れを起こしたんだって?魔道具を作るのにも魔力を使っていたのに……本当に大丈夫?」
「大丈夫よ。セドリックとエリサさんが協力してくれたから、大切な人の命を救うことができたの。ありがとう」
真っ直ぐな感謝の言葉に、セドリックは照れくさそうに視線をそらした。
「みんな……ありがとう。もう大丈夫。わたしはいい友達をたくさん持って幸せね」
ミレイアがにっこりと微笑むと、クラスメイトたちが一斉に顔を赤らめた。