表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

144/189

通訳

ミレイアが気持ちよさそうに寝息を立てている横で、ノエル、クラリス、レオン、そして新しく加わった聖獣のギンがテーブルを囲んでいる。


「我の聞いたところによれば、主はアゼル殿の母、マーサ殿を探すために森へ転移したのだ」


「……お嬢様が、アゼル様のお母様を探すために森へ……へぇ」


ギンの言葉を理解できるノエルが、レオンとクラリスに向けて通訳をしていた。


「それで……病気で死にかけていたマーサさんを、お嬢様が治癒魔法で完治させた……って、うわぁ」


レオンとクラリスには、ギンの低い声はただの唸り声にしか聞こえない。その分、ノエルの説明を真剣に聞き入っていた。


「さらに……、ギンが闇に呑まれて暴走していたところを、お嬢様が浄化して助けてくれた……って、本当に!?」


ギンは遠い目をして当時を振り返るように語る。


「我は闇魔法の黒霧に覆われ、自我を失いかけていた。聖獣使いのイリウス殿と、その契約聖獣ユウに攻撃を加え、イリウス殿の肩を傷つけてしまったのだ。そこへ元聖女ユキア殿が現れて治癒を試みていたのだが、我は更に暴れ……。その時、類まれなる魔力で我を止めたのが主だった」


ノエルは通訳を忘れ、目を丸くして聞き入っていた。


「……今、ユキアって言った?それにイリウスって……。もしかして、ギンがいた森って……」


「西の森。聖域と呼ばれる場所だ」


ノエルは大きなため息をつく。


「ノエルさん?ギンは何て言ってるの?」

クラリスに促され、ノエルは慌てて通訳を再開する。


「ええと……どうやらお嬢様は西の森に行っていたみたいです。そこは元聖女ユキアと、聖獣使いイリウスが暮らす場所。……つまり私の祖父母の家。お嬢様にとっては曾祖父母の家です。そこでまた、例の如く大立ち回りをしてきたらしいですよ」


「待って。元聖女がミレイアの親族なのは知ってるけど、ノエルさんの祖父母!?あなたって……」


「え、クラリスさんご存じなかったんですか?殿下はご存知ですよね。私は、アリアの妹……つまり、お嬢様の叔母です」


クラリスは知らなかった事実に、驚きで瞬きを繰り返したが、やがて腑に落ちたように頷いた。

「なるほど。時々ノエルさんに人間離れした雰囲気を感じていたのは、その血筋のせいだったのね。聖獣や精霊の言葉がわかるのも納得だわ」


「それで……ミレイアが倒れたのは、やっぱり魔力切れだったんだな?」

アゼルとミレイアの長い口付けを見て以来、イライラを隠せないレオンがぼそりと呟く。


「そうですね。転移魔法に治癒魔法、浄化魔法……色々使ったようですし。それに、昨日はセドリック様と魔道具を作って徹夜だったみたいです。疲れも溜まっていたんでしょう。……まあ、こっそり出て行ったことは許せませんけど、人助けのためだったとなれば責めづらいですよね」

ノエルが苦笑する。


「アゼルのために無理をしたってわけか。……やっぱり、むかつく」

レオンの声に、クラリスは哀れみを込めて視線を送る。


「殿下……お嬢様が奔放な浮気者で、もう嫌になっちゃいましたか?」

ノエルが心配のあまり、極端な質問をする。


「嫌になんかなるもんか」

レオンは即答し、すやすや眠るミレイアを見た。

「ミレイアがもし俺の他に恋人を百人作ったとしても……俺はミレイアだけを愛し続ける自信がある。……だけど嫉妬はする。誰かに触れられたなら俺は十倍触れたいし……今は早く、アゼルなんかよりもっと深く……一晩中でもキスをしてやりたい」


真剣そのものの顔で語るレオンに、クラリスとノエルは顔を見合わせ、なんとも言えない沈黙に包まれた。


そんな空気をぶち破ったのは、昼寝から目を覚ましたモフィとスインだった。


「あれー!新しい聖獣がいる!ミレイアと契約したんだ!」

「仲間が増えたの〜!」


二匹は嬉しそうにギンの周りをクルクル回る。


「我はギン。古代より生きる銀狼である。其方らと共に主に仕える。よろしく頼む」

ギンは渋い声で堂々と挨拶する。


「わー!ギンさんかっこいい!銀狼なんてすごいや!ぼくモフィ、よろしくね!」

「ギンさん、わたしスイン。よろしくなの〜」


無邪気にじゃれあう三匹の姿はあまりにも愛らしく、言葉がわからないレオンとクラリスでさえ、思わず頬を緩ませた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ