表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

140/187

古代聖獣

銀狼は、伏せているにもかかわらず、立っているミレイアと同じ高さに目線があるほど巨大だった。

その眼差しは、近づいてくるミレイアたちを静かに追っている。


「ごめんね。さっきはたくさん攻撃して……大丈夫だった?」

ミレイアは臆することなく駆け寄り、気軽に声をかけた。


銀狼はわずかに目を細め、頭を地面にこすりつけるように下げると、重みのある声を響かせた。

「……我は闇に飲まれていたようだ。浄化して頂き、助かった。感謝する」


「やっぱり、あなたは優しい聖獣なのね。元に戻ってくれてよかったわ」

ミレイアが手を伸ばし、銀狼の大きな頭を撫でる。

その瞬間、銀狼は驚いたように目を見開き、じっとミレイアを見つめ返した。


「じゃあ、わたしはもう行くわね」

ミレイアが向きを変えて歩き出そうとしたとき——。

スカートの裾を、銀狼が優しく噛み、引き留めた。


不思議そうに見つめ合うミレイアと銀狼。その間に入ったのはイリウスだった。

「ミレイア、この古代聖獣は……君との契約を望んでいるように見えるぞ。そうじゃないか?」


銀狼は小さく息を吐き、しばし考え込んだ。

「……我は……契約をしたいのか? ああ、そうか……そうかもしれん」

ゆっくりと頷き、言葉を続ける。

「我の主になって頂けないだろうか」


大きな鼻面をミレイアの頬にすり寄せると、彼女はくすぐったそうに笑みを浮かべた。

「わたしでよければ、喜んで」


銀狼の瞳に光が宿る。

「名を……もらえるだろうか」


「あ、そうだったわね。契約の儀式には名前が必要なのよね。あなたは……銀色の毛並みがとても美しいから……”ギン”。どうかしら? 安直すぎる?」


「……いや。ギン……我はその名、気に入った!」


次の瞬間、銀狼の体がまばゆい光に包まれ、その姿はかき消える。

次に姿を現したときには、子犬ほどの大きさになっていた。


「えっ!? 小さくなれるの?」


「うむ。本来は先ほどの姿だが……主と共に行動するなら、この方が都合がよい」

小さな体で胸を張る銀狼——いや、ギンに、ミレイアは思わず笑みをこぼし、抱き上げた。


その時、イリウスが声をかけてくる。

「契約の印を……見せてもらえないか?」

返事を待たず、彼はミレイアの袖をまくり上げた。


「ちょ、ちょっと!」

慌てるミレイアだったが、自分の腕に刻まれた新しい印を見て息をのむ。

モフィとスインの契約を示す二つの金色の印の下に、銀色の複雑な紋様が輝いていたのだ。


「わあ……きれい。金色じゃないんだ」


イリウスの目が鋭く光る。

「やはりそうか。古代聖獣の契約印は特殊だと、文献に記されていたからな」


聖獣使いの彼は興味津々で、腕をあらゆる角度から眺め回す。

「ちょっと……そんなに見られると恥ずかしいよ」

ミレイアは頬を赤らめ、ギンを地面に下ろすと慌てて袖を戻した。


ユキアが咳払いをして声をかける。

「さあ、小屋に戻りましょう。マーサたちも待っているし、一緒にお茶でも飲みましょう」


ミレイアとイリウスは顔を見合わせ、頷いた。

小さな銀狼を連れて、彼らは静かに歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ