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モヤモヤ

レオンは、一昨日の勉強会の帰りにミレイアが

「セドリックに話があるから」

と走り去ってから、ずっとモヤモヤしている。


昨日の午前、ミレイアの自室を訪ねた時には侍女のノエルから、

「セドリックさんが迎えにきて、一緒に彼のお母様が働く研究院に行かれましたよ」

と告げられた。


夕食前にもう一度訪ねた時には、途中でバッタリ会ったフローラに、

「ミレイア様なら、セドリック様と泊まりがけで研究をするそうです」

と言われた。


そして今朝、教室に来てみればミレイアの姿はなく、担任から「ミレイアとセドリックは揃って急用で休みだ」との報告があった。


「はぁぁぁ」

テラスでロイとクラリスと共に昼食をとりながら、レオンは今日何度目かわからない盛大なため息をついた。


「レオン、言いたいことがあるなら口に出して言ってくれ。そのため息はもう聞き飽きたよ」

ロイが呆れたように言う。


「殿下。もしかして、ミレイアが自分を捨てて、セドリックに乗り換えたとか思ってます?」

鋭い問いを投げかけるクラリスに、レオンは慌てて声を荒げた。


「な!そんなことは思っていない!どうせまた共同研究だろう?第一俺が負けるわけがないじゃないか。あいつがミレイアと一晩中一緒に過ごしたからって、どうってこと……」

強がりながらも、レオンの目は泳ぎ、またしてもため息が漏れる。


クラリスは苦笑して肩をすくめた。

「セドリックは殿下みたいにミレイアに軽々しく手を出したりしないから、心配いりませんよ」 


「だけど、俺のミレイアを独占するのはやっぱり気に食わない」

唇を尖らせうつむいたレオンを、ロイがクスクス笑いながら小突く。

「まったく、小さいやつだな。もっとドンと構えてろよ」


そのやり取りを見ていたクラリスが、少し真面目な声色に戻った。

「……セドリックよりも警戒すべき人物がいるかもしれません」


「アゼル・フェンリルのことか?」


「ええ、もちろんアゼルさんもそうですけど……。私が言っているのは、ベルトラン・イグニッツのことです」


「イザベルの兄上か?」

レオンが顔を上げる。


クラリスは淡々と続けた。

「星導祭でミレイアを見て以来、あの方はかなり公然と”気に入った”と触れ回っているようです。社交会では、二人の婚約が近いのではと噂され始めています」


「は?なんだそれ。顔を見ただけで、実際に会ったこともないんだろ?なんでそんな噂が……」


「ベルトランは、イザベルと並んで社交界では注目の人物ですからね。これまで縁談を全て断っていた彼が、初めて見初めたのがミレイアとなれば、話題になるのも当然です」


レオンはロイに視線を向けた。

「ロイは知ってたのか?」


「まあ、俺のところにも噂は入ってきてるよ。レオンは、ベルトランとは面識があるだろ?」


「ああ。イザベルが婚約者候補だった時に何度か……挨拶程度だけどな。イグニッツ侯爵は危険人物の一人だ。息子も同じじゃないのか?」


「それが、悪い評判は聞かないんだよな」

ロイが顎に手を当てて言った。

「イグニッツ侯爵は傲慢で有名だけど、息子の方は温和で気遣いができる。政治的にも有能。しかも顔も良い。社交界の女性からは絶大な人気さ」


「……だからなんだよ。ミレイアは俺と一緒になるんだ。誰にも邪魔なんてさせない」

レオンは不機嫌そうに言い切った。


「そうあってほしいわね。ただ……王妃はミレイアが王家に入ることを望んでいない。その王妃とイグニッツ侯爵は親しい関係。強引に息子とミレイアとの婚姻を進めてくる可能性はあるわ」

クラリスの言葉に、場の空気が重くなる。


レオンが低く吐き捨てた。

「イグニッツ侯爵が精神魔法を使う黒幕である可能性も消えてないだろ? 殺したいほど憎んでいる娘を、息子と結婚させるなんて……」


そこにロイが口を挟む。

「イグニッツ侯爵が第二皇子派の筆頭であることも忘れるなよ。ミレイア嬢が憎いんじゃなくて、レオンと結婚されることで反逆が起こせなくなるのを恐れているのかもしれない。もしそうなら、ミレイアを自分の派閥に取り込むための婚姻なら許す、そう考える可能性もあるんじゃないか?」


「……そんなこと、絶対にさせない」


暗く沈みこむレオンを見て、クラリスがなるべく明るく声をかける。

「ミレイアはそろそろ戻ってきて休んでいるかもしれませんね。放課後に会いに行きましょ」

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