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魔導演舞

ミレイアは、レオンと10人の『守り隊』たちと別れ、自室に戻ってきた。星導祭の最後のイベント、魔導演舞の準備をするためだ。


「お嬢様、本当にこの格好で舞台に立つのですか」

ノエルが心配そうな顔を見せる。

「もちろんよ。どうして?」

「その、セクシーすぎるというか何というか……」

「昨日、港町の人たちにはもう見られているわよ」

「でも、今日は年の近い男性方がたくさんいますし、殿下やアゼル様も……」

「ふふ、心配しすぎよ。裸じゃないんだから、大丈夫よ。わたしは気に入っているのよ」

「……そうですか。わかりました。くれぐれも気をつけてくださいね」

「ん? わかったわ」


窓の外を見ると、すっかり暗くなった庭園に色とりどりの光の装飾が瞬いている。


「そろそろ行くわ」

ミレイアは衣装の上から外套を羽織り、中央庭園にある演舞ステージへ向かった。


この日のために作られたステージの前には、数千人が座れる座席が用意されている。その座席は、始まる20分前にも関わらずすでに満席。立ち見席にも続々と人が集まってきていた。


「ミレイアさん、魔導演舞の出演者は舞台裏に集まってくださいって」

実行委員のセドリックが伝えに来る。舞台裏に向かうと、他の出演者たちが用意された椅子に座っていた。出演者は全部で10名。一人5分程度の持ち時間が与えられており、魔法を使って人前で披露できるものなら、基本的にはなんでもいいらしい。


魔術科の生徒が多く、普段は会うことのない3、4年生の姿もある。ミレイアのクラスからは、ミレイアのほかにイザベルとマリエルも出演する。簡単な段取り説明の後、最初の出演者が舞台へ出ていった。観客の歓声が聞こえてくる。


出演者たちは緊張した面持ちで順番を待つ。やがて、イザベルとミレイアだけが残った。


「ミレイアさん、あなたはどうしても目立ってしまうのね」

隣に座るイザベルが話しかける。

「はっきり言うと、最初は気に食わなかったわ。社交界にも顔を出していなかったあなたが、みんなの注目を浴びて、レオンの心を奪って。だけど、認めるわ。あなた以上のライバルはこれからも現れない。……どうか、気をつけて」

「え……」ミレイアが何かを言う前に、イザベルは立ち上がって舞台に出て行った。



観客たちは、次々に繰り出される魔導演舞に歓喜していた。

ルイスとティナ、ロイ、クラリス、レオンのいつものメンバーも観覧に来ている。少し離れたところにソフィアが母親と座っていて、アゼルやユリウスの姿も見える。さらに、その少し前列にはミレイアの両親――ノクシア侯爵夫妻の姿もあった。夫妻は、娘の出番を待ちながら穏やかな面持ちで舞台を見守っている。


「氷魔法でお城を作って、最後は雪にして降らすなんてすごい演目だったね」

「わたしは、さっきの魔術科の4年生がやった風魔法と水魔法を融合させて大きな噴水を作ったやつが感動した」

「でも、最初の騎士科の3年生がやった炎を纏った剣舞もなかなか見応えがあったよな」

「あ、次が始まるみたい」


『魔術科1年 イザベル・イグニッツ』


深緑のドレスを纏ったイザベルが舞台に上がる。

観客に一礼すると、胸の前で両手を組み、澄んだ声で術式を唱え始めた。

「――水よ、昇りて柱となれ《アクア・ピラー》!」

足元から透明な水流が立ち上がり、瞬く間に柱を形作る。

続けてもう一節。

「大地よ、芽吹き、花を咲かせよ《フローラル・ブルーム》!」

土魔法が応え、プランターのバラが勢いよく成長し、大輪を咲かせる。

それらを水柱に絡ませながら空高く舞い上げ、

最後に詠唱を重ねる。

「昇れ、天を駆ける龍となりて―― 舞え《ペタル・シャワー》」

水と花は螺旋を描き、やがて龍の姿を象り観客席を飛び回った。

そして、パッと消えると、バラの花びらが観客の上にひらひらと舞い落ちた。


「わああ!!」

観客席から感嘆の声が上がる。イザベルが静かに礼をすると、大きな拍手が鳴り響いた。


「イザベルさん、すごかったね」ティナがクラリスに話しかける。

「本当ね。次は、いよいよミレイアの番よ」

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