褒賞
控室は、レオンとロイのためだけに用意された静かな部屋だった。重厚な扉が閉じられ、外の喧騒とは一線を画している。
レオンは優勝の褒賞として受け取ったルミナクリスタルを手に取り、淡く揺れる光を見つめる。
「これ、神官シオンが学園に寄贈したものらしい。先代国王の指示で暗殺された、あの神官だよな……」
「そうだ。神に近い存在と言われた神官シオンと、その妻の聖女アリアは、この学園の卒業生だったらしい。このクリスタルの噂は前から知っていたよ。眠っている魔力を引き出す力がある。お前の魔力と共鳴すれば、かなりの力を得られるはずだ」
「しかし、なぜ今これを褒賞に?」
「……そうだな。寄贈された年から15年か。何か意味があるのか……わからないな」
レオンはため息混じりに視線を上げ、言葉を選ぶように話し始めた。
「実はな、さっきの準決勝の最中に、アゼル・フェンリルに言われたんだ。『もし本気でミレイアとの将来を考えているなら、直接ノクシア侯爵に聞くがいい。ミレイアの出生の秘密をな』って……」
ロイの表情がわずかに変わった。
「……それは気になるな。俺が調べた限り、ミレイア嬢はノクシア侯爵夫妻の実の娘だ。出生記録にもそう書かれている」
レオンは首をかしげながら答えた。
「俺はずっと、ミレイアはノクシアに迎えられた養女だと思っていた。初めて会った舞踏会の日、本人から聞いたんだ。両親は過保護だけど、血は繋がっていないって」
ロイは少し考え込み、続ける。
「確かに矛盾しているな。ミレイア嬢が勘違いしているとか?」
レオンは視線を遠くに向け、静かに言った。
「このズレが、ミレイアの出生の秘密に関係しているのかもしれない……」
その時、通信機が震え、クラリスからの連絡が届いた。
「ノクシア侯爵が今、ミレイア嬢の部屋に来ているそうだ」
レオンは背筋を伸ばし、覚悟を決める。
「会いに行ってこようと思う」
ロイも真剣な表情で頷いた。
「何があっても、支える」
二人は控室を後にし、静かに闘技場を離れた。