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四十五話

 当然の反応と言えば当然だが。どうしたものかいきなり切り出し過ぎたか?


「僕が平穏に暮らすのに勇者たちを生かしてほしいと言うのは?」

「なるほど。レアラの言っていたことを気にしているなら忘れていいわ。あなたは人間ではなく魔族なのだから」

「いや、レアラの言うことは元々僕が思っていたことをたしかに的確に突いてはいたよ。僕は人間をどうにかしたいと思ってる…それでリビリアはどうかを聞きたいんだ」

「それこそ私ではなく人間に騙されていると言う方が間違いないわ。何を言われたのか知らないけれど――」

「違う、そうじゃないんだリビリア。言葉を交わしたのはそうだけど最終的に僕がそれでいいと決めたことなんだよ」


 これじゃさすがにリビリアは味方につかないと分かってはいる。分かってはいるが、はっきり言わないといけない。

 僕のことを愛しているのだと言ったのだからリビリアは。


「僕はレアラの言う通りリビリアに不信な点がいくつもあってもそれを放置した。それこそ騙されてもいい。期待されたのだからと思ってた。今でももっと聞くべきことはあるはずだけど一番大事なことを確認したいんだ」

「一番?」


 抱きしめていた腕を解いて、少し離れたリビリアはとてもではないが愛してると言った顔ではない。

 一体どういう理由で嘘を吐けないのかは知らないがそれでも本当に僕を愛してるのだろうか。


「そう…壊れてしまったのね」


 いつしか僕がケミリに言った言葉をふと思い出す。まるで僕が本来はリビリアの言いなりになる予定だったかのように。


「リビリア?」

「失敗したのね。それでもいいわ。失敗したならやり直せばいいもの…フィン?あなたはこのままいけば死ぬわ…いいえ、人間に殺されるわ」

「一体どうしたのさ。唐突に…さっきまで放置すれば滅びるとか言ってたのに」

「そもそも私が直接殺しておくべきだったわ。茶会なんてものにこだわる必要なんかどこにもないもの」


 これは…選択肢を間違えたのか。

 リビリアが何を言い出してるのか分からない。


「落ち着いて聞いてほしいんだリビリア。まず僕はリビリアを信じてる」

「信じてるならどうして人間の話しなんてしているの!?何故人間を庇うような行動をしたの!?」

「だからこその確認だったんじゃないか。僕は――」


 違う。魔眼を常時発動して捉えるのはリビリアの魔力が大きくなると感じた瞬間のその矛先だ。

 今のリビリアは僕を見ていない。そのことを感じてアキ達の方に体をずらせば意識が一瞬無くなる。


 白黒の景色に感じるこれは何か起きた?


「フィン?」


 口から溢れてくる黒いものは恐らく血だろう。今の僕はどうなってるのか判断できないがとりあえずリビリアを落ち着かせなければならない。

 だがどうしてか声が出せない。


 視界がノイズまみれで景色が白黒から黒だけへと塗りつぶされていく感覚。冷たくどんよりと体が重く感じる。


「あぁ…直さないといけないわ」


 そう言ってるリビリアの声ははっきりと聞こえるのに僕は体が倒れ動けない。


 その際に見える光景はリビリアとテトが争ってる光景が見える。




 僕はきっと間違えたのだろう。レアラの言う通り茶会の席でいっそ問い詰めた方が良かったかもしれない。それでも僕はリビリアの愛にも応えたかったというのは我儘が過ぎたのかもしれない。


 反省点はいくつも思い浮かぶが、このままリビリアの言うことを聞いても結局レアラとテトと戦うとなればこういう結末になっていただろう。

 いや?もしくはそれこそアキ達をここに連れてこないで切り捨てておけば僕は今頃リビリアと一緒に過ごして愛情を注がれていたのだろうか。


 何が正しかったのかは分からないができれば愛をもっと欲しかった。


「うぐぇっ!?」


 一瞬で吐き気が伴い視界がはっきりして血を大量に吐き出す。


 何が起こったのかは知らないが周りを見ればテトとリビリアが睨み合い。レアラが僕の近くに立っていてスピラが僕に何か魔法を行使している。魔眼を発動しようとすればスピラに軽く頭を小突かれる。


「クハッ!存外タフだなぁ…さて?我はこの場合どうするのが良いか?レアラ?」

「むしろよく働いてくれますね?なぜですか?霊長が動くなんておかしくないですか?おかしいですよ!」

「気まぐれに等しい。むしろここまで来てフィブラはともかく他の奴は本当に貴様の言う通り見ているだけのままごとよな?」

「ままごと?茶会を壊したのはリビリアですよ?それまで上手くいっていたのにどうしてリビリアはああなったのか…本当…おかしいですね」


 また死にかけたのかと呆れるが、ちゃんと僕の味方…?をしてくれたのだなスピラ。


「どうなって…?」

「無理に喋るな。しかしいかんな。何を話したかは知らんがリビリアをどうする?」


 どうすると言われても、今のリビリアを見れば慈しみを持っていた雰囲気すら消えて殺意を感じるんだが、これに関してどうしろと。


「テト?どきなさい?直せないわ?」

「貴様がやったことだぞ、今更何を」

「霊長に頼らずとも私ならフィンを直せたわ?」


 治せたというのはその通りなのだろうが…治すというには殺意を感じるのは何故だろうかと思っているとスピラがはっきりとリビリアに言うように伝える。


「直すというのは一度こやつの頭を吹き飛ばしてから直すということか?その際にどう弄るのかも考えながらやるのが貴様の直すか?」

「そうよ?壊れてしまったもの…でもさすがフィンね。霊長すら心を動かしてしまうんだものとても素敵だわ予想以上に予想外でだからこそ壊れやすい」

「まともではないのぅ」


 何が起こっているのかいまいち理解が追いつかないのだが、とにかく守られてる現状だけは把握した。


 もう一度冷静になって考えよう。少なくとも僕はスピラに治癒されてレアラに守られている間に思考をまとめないといけない。


 何故僕を壊れたと判断したかは人間が駄目だったのか?それともリビリア以外をそばに置いておくことを反発したのか。

 その程度でここまで殺意を向けられるというのだろうか、弄るというのは僕の何を弄るのかも分からない。


「スピラ…話し合いをさせてほしい」

「後ろで控えてる方が利口だが…まぁ貴様がしたいようにするといい。ただレアラから離れないようにしておけ」

「わかった…」


 まずはどうしたものかと思うが、レアラに聞いた方がいいのかもしれないな。


「レアラ?リビリアと争った理由聞いてもいい?」

「私のことをようやく信じてくれるんですか?この状況で先にすべきことがリビリアではなく私を選んだんですね?そうですね!」

「できればリビリアを煽らずに教えてくれると助かるんだけど…」

「いいですよ?簡単なことですよ?リビリアは貴方が危機的状況にあると話して私達を騙していたんですよ!今ではもう4人しか残ってないですが?」

「騙していたくだりをもう少し詳しく…」

「詳しくですか!私に対してそう言ってくれたのはフィン貴方が初めてかもですね?ですが実際のところリビリアが黙ってばかりいるので不確定要素が多いんですよ?ただあまり好きではないですが端的に話すのですが、フィンを陛下から救うためには私達と、姉妹兄弟の関わりを一切絶って過ごすことだと提案してきたんですよ」


 陛下…あぁ魔王か、しかしそれならあれか?僕を隔離塔に入れていたのは魔王の指示ではなくリビリアの指示だったみたいなものだろうか。


 半分どうでもいいと思えるが、半分は何故?となる。その何故と思う部分がレアラの言う不確定要素か。


 そりゃリビリアは嘘を吐かないのだからそんな提案されたら信じるだろうし、もしかしたら実際に魔王が何か考えていてそれを阻止したかったのかもしれない。事実魔王を殺したと言ってたのもリビリアだ。


 何故となる部分がなんなのか。


「リビリア質問がある」

「フィン待ってね直してからにしないと」

「リビリアの言う平穏な生活がなんなのか知りたい」

「その言葉の意味の通りよ?」


 平穏か。だがリビリアが何かから僕を守っていたとしても僕はアキ達がいなければ何度も死にかけていたんだがその点はどうなのか。


 計画通りというわけではないだろう。ヘレスも含めて殺そうとしていたし勇者以外はどうでもいい扱いをしていたはずだ。勇者は治癒魔法を扱えないのだから僕はどこかで死んでいた。


「レアラ、今ので意味分かる?」

「難しいですね?できれば質問を私にさせてもらえたら少しは分かるかもしれないですが…」

「何を聞いたらいい?」

「では私達を殺そうとしている意図を聞いてもらえますか?」

「目の前でやりとりしてるから分かると思うけどリビリア、兄弟達を殺そうとしてる意図を聞きたい」


 僕から質問したからと言って答えるわけではないのかリビリアは無言で僕を見る。何の感情なのかも分からないような顔で瞳で…。

 魔眼で様子を見たいと思ったがスピラに小突かれたのを思い出して、確かにスピラの近くで魔眼を使えばスピラの魔力しか映らないだろうと思って控える。


「リビリアは僕に愛してると言ってたのは嘘だったのか?」

「いいえ愛してるわ。だからこそよ?」

「愛してるならお互い話し合ってほしいんだけど?」

「まだよ…だって…おかしいんだもの。いずれ平穏な時が来てそうなるはずなのよ」

「もう一度聞く。兄弟達を殺すようにした目的を教えてほしい。以前魔王になるためと言ってたよな?じゃあどうしてそう答えないんだ?」

「そうね。魔王になるためよ」

「それ以外は?」


 僕とリビリアの会話を聞いているレアラを見るがクスクスと笑い出し何か分かったのかと期待するが目線はリビリアというよりテトだろうか?


 テトの方を見れば臨戦態勢ではいるがリビリアと一定の間合いから一切動く気配がない。

 遠距離戦ならともかくテトでも勝てないのか、はたまた殺すまでにはテトが考えてないのか。


「おかしいですね?貴方も愛するフィンがこんな状況でも尚貴方を信じたいと思って質問しているのに黙るんですか?やはり偽りですか?違いますね?いつからそうやって騙すようになったんですか?フィンが生まれた時ですか?そうなんですね?」


 もっと思い出さなければ、リビリアは他に何と言っていた?

 少なくともレアラがそれを聞けば何かしらのヒントになるかもしれないとリビリアと交わした短い言葉を思い出そうとするがどれもこれも他愛ない話だったはずだが…。


 最初から他の兄弟達を殺すように言ってきて…むしろ自分も殺してもいいみたいなことを言っていて…。


「魔王の血を受け継ぐ逆賊?って関係あるのレアラ?」


 そう聞けばレアラも一瞬きょとんとしてまた笑い出す。


「平穏ですか?平穏ですね!それはとても平穏なことですよ!なるほど逆賊ですか?私達が?いいえ違いますね?フィンの言葉が正しいのだとしたら逆賊は全員ですね?おかしいですね?それともフィンは違うと言うのですか?」

「フィン、どうして言うことを聞いてくれないの?」

「そうですか?フィンは最後まで貴方を信じてたんですよ?それこそどうしてですよ!フィン…貴方は一旦逃げた方がいいですよ?」


 今のが答えなのかは知らないがレアラなりに何か分かったのか。それならぜひとも聞きたいのだが。


「なんなのか分からないんだがレアラ」

「そもそも魔王の血を受け継いでる者なんているわけがないんですよ?陛下の血を受け継ぐ逆賊なんて言葉が出るのだとしたらそれはフィンですね?フィンは魔王とはなんなのか考えたことがありますか?」

「魔領の王?いや、それなら別に、魔族の王?」

「フィンの知識が偏ってるのも原因の一つですか?だとしたら嘘を吐いたことになりませんね?なるわけがないです!実際陛下の呼び方なんて自由ですものね。それを狙ったのだとしたらリビリア貴方は真実を隠すために捻じ曲げたんです――」


 リビリアが一瞬にして練り上げる魔法はほぼ目に見えない速度でレアラの上半身を吹き飛ばすがドロドロになりながらもレアラが凄い速度で再生していきまた何か喋ろうとするが魔法の速度の方が早くレアラの体を飛ばしていく。


「やめないかリビリア?レアラを吹き飛ばしても貴様じゃ早々に殺せないぞ?」

「まるで自分が殺されないかのような言い方ねテト」

「魔王は魔王でいいじゃないか…何故魔王に固執してるんだ…」

「いい加減戦争ごっこも終わりかしら?でも大丈夫よフィンがいるんだもの」


 その言葉を言ってる間にもレアラの体は再生と破壊を繰り返しながら元に戻っていく。こんなやつと戦わせる気だったのかリビリアは…。

 それなら僕に勝ち目なんか最初から無いに決まって――。


「フィン…最後のお願いよ」

「え?」

「レアラに死ぬよう命令して」


 ふとレアラを見れば再生と破壊を延々と繰り返している。テトも止める気がないのか止めようとすれば自分が死ぬのか。

 そんな中わざわざ僕に頼むということは今の僕が命令すればこの状態のレアラは死ぬのか?


 テトが悲しそうな瞳をこちらに向けて来る。


「分かってると思うがフィン。貴様が命令すればレアラは死ぬぞ…それでいいのかフィン?」


 魔眼が使えてない今レアラの魔法障壁がどうなっているのか分からないがここまで破壊されてる今なら僕の万魔が通じるということなのだろう。

 何を思ってリビリアが行動してるのかレアラが答えを言おうとしていた。いやテトも恐らくもう分かっているのではないだろうか?


「スピラ…リビリアの言う魔王を教えてくれないか?」

「我に聞くのか?知ったところでどうする?」

「僕は今のままだとリビリアの最後のお願いを聞いてしまいそうになってる…それを止めたい」

「では殺すかどうかレアラから直接聞いてこい…」


 そう言ってスピラはリビリアの魔法を防ぐように魔法障壁を張って攻撃を逸らす。


「あぁ…霊長…何故なのかしら」

「味方をするただの口約束だ」


 その時点で見事に超再生を起こして満面の笑みでレアラは元に戻る。


「話すには時間が惜しいですね?霊長が協力してくれるならリビリア大人しくしたらどうですか?フィンも考える時間を与えなければいけないですよね?」


 諦めのようにリビリアは攻撃をやめた。

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