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四十四話

「リビリアは怒っているんですか?怒っているんですね!そうなんですね?ですが勇者も呼ぶようにしたとはっきり私は言いましたよね?何故怒っているんですか?」

「たしかにそうね。でも勇者は呼んでも部外者が混じっているんだから仕方ないのではないかしら?」

「ですがそれを言ってしまったら四天王も部外者ということになりますね!ではいっそフィブラも含めて殺してしまうのですか?貴方が言ってるのはそう言うことですよね!」

「もういいでしょう?フィンが止めたのだから話し合いとやらを済ませたらどうなの?」

「そうでした!フィンごめんなさい!そして勇者も椅子を用意するのを忘れてました!今からでも用意させた方がいいですか?その方が円滑に話し合いは進みますよね!」


 本当にふざけた喋り方をするんだなと思うのと同時に椅子を用意してなかったのは四天王を見ればわざとだろう。そもそも何故そんな笑顔で楽しそうなのか。


 フィブラの方を確認すれば魔力が術式が展開していてアキ以外を確実に殺そうとしてたのを見てこいつは味方ではないのだなと再確認する。

 しかしリビリアが真っ先に殺そうとしてくるのは予想外だ。どちらかと言えばレアラの方が殺しに来ると思ってたのだが…。


 ヘレスを見ればとりあえず話してこいと手を動かしているのでみんなに説明は任せたと思い僕はテーブルに近づき椅子に座る。


「椅子に座るのは僕だけでいいよ。それでどういう状況なのかな?」

「そうですか?私が呼んでおいて謝罪は必要かもですね?やはり一言くらい勇者の意見も聞いておくべきですよね!」

「レアラ黙れ。勇者…黒髪の君には私が謝る!久しいな!すまん!あーそれでフィン…改めてごめん…」


 テトが強気な口調で言いつつもしおらしくなったりとする。

 ただテトが喋りだしたことで楽しそうなのは変わらないがレアラが静かになったので助かったというべきか。


「テト喋り方が気持ち悪いわ」

「なっ!?貴様…貴様が少しは娘らしく振舞えと覚えさせえたのだろうが!」

「私は妹らしくあってほしかっただけで誰彼構わず女らしいあなたを見たいわけではなかったわ」

「くっ…」

「いいではないですか!私は可愛いテトを見るのも好きですよ!黒髪の君なんてどこでそんな言葉を覚えたのかも気になります!気になりませんか?私は気になるんですけどね!」

「もういい!話し合いも貴様が主催したことだ!私は黙る!」

「茶会ですよ!なんて言ったって私たち家族が全員ようやく揃うのですよ!何年ですか?何十年ですよね!喜ばしいことではないですか!」


 話しの流れについていけないまま三人の会話を聞くがテトに関しては置いとくとして、リビリアとレアラが何をするか分からない以上どうにも反応に困る。


「レアラ?…質問なんだけど?」

「フィンどうしたんですか?なんでも聞いていいですよ!」

「家族全員ってとこなんだけど…」

「もしかしてゴドーとギュスターヴのことを言ってますか?言ってますよね!フィンは気にしているのですか?すでに死んでいる者を今更嘆いても仕方のないことですよ!なによりおかしいですね?私はフィンが殺したと思ってたんですが?」

「…」


 思わずリビリアの方を見てしまうがリビリアはリビリアで不機嫌な顔から変わりはない。

 やはり人間を連れてきたのが悪印象だったのだろうか。

 そして僕が黙ったのを見てクスクスと笑いながらレアラは楽しそうに体を揺らしている。


「これじゃあまるで私がフィンを虐めてるみたいですね!先に言っておきますが死んだ者のことは誰も気にしてないので安心してください!」


 誰も気にしてないと言ったところでテトがレアラを睨んでいるのだが。明らかに気にしているだろう。

 それを意に介さずそのまま会話を続けていく。


「テトも喋らず。リビリアも不機嫌なままですね?おかしいですね?家族が揃ったのにこんなに楽しんでないなんておかしいですよ!私たちは生きているじゃないですか!」

「そもそもレアラもテトも急に私を襲ってきたじゃない。それで今更何を話すというのかしら?」

「急?リビリアはまたおかしいことを言ってますね?おかしいですよ!先に行動を起こしたのはどちらかもう忘れてしまったんですか?忘れたふりですか!いくらなんでもそれで誤魔化すのは都合が良すぎますよ?」


 毎回こんな会話をしていたのだろうか。ひたすらにレアラが言葉でリビリアを責めるように話している中テトは本当に黙ったままでいる。


 というよりリビリアもどうしてか一言二言話せばレアラの話しをそのまま聞き流しているだけだ。一向に何も話しが進まない。


 そんな中四天王であろう一人がどこから取り出したのかお茶?紅茶かな香りからして。それを一人一人に置いていく。

 姿はスピラとは違って頭に角を生やして身長も高い魔族だ。特に喋ることもなくそのまま下がっていきレアラは一口紅茶を飲んで一息ついてる。


 茶会と言ってたが本当に茶が出るとはあまり思ってなかった分のんびりしたものだなと。むしろ四天王たちはこれでいいのか?


「僕は分からないことしかないんだけど、この茶会は何故開かれたのかな?」

「そうでした!フィンは何も知らないのですよね!知らないんですよね?ですがその前にリビリアに確認を取らなければなりませんよね?リビリアはフィンになんと話したんですか?そこを聞かなければ私も言葉に困りますよ?」

「別に私は普通のことしか話してないわ」

「それは嘘…と言いたいですがリビリアは嘘を吐けないのでしたね!ですが真実ではありませんね?リビリアにとっての普通は違いますよね?齟齬を生んでしまうかのように話してこの場を逃げるんですか?」

「逃げた覚えはないのだけれど?現に茶会に賛同もしてこうして席に着いているわ」

「そうですか?そうですね、そうしておきますか!では私が何を話してもいいのですね?それならば好きに話させてもらいますね!」


 実際リビリアはレアラの言う通り濁して喋ってるような気はしなくもないが、それでいいのか?

 ただ疑問に思ってもレアラの勢いが止まることはないしリビリアの表情からは何も読み取れない。


「フィンはリビリアに何を話されました?いえ違いますね?どうやって唆されましたか?どうやってリビリアに騙されたんですか!」

「騙された…?」

「そうですよ!おかしいとは思いませんか?思わなかったんですか!生まれた雛は初めて見た者を親と思うように貴方は騙されたと思いませんか!肉親殺しを始める姉を見て何も疑わなかったと言えますか?」


 それに関しては何とも言えない。父上に関しては正直どうでもよいというのが僕の感想でしかない。

 リビリアが魔王になろうとしているという話しをするべきか?しかしそれを話したところでとも思う。


 というよりもそれ以前に騙されたというがリビリアが嘘を吐けないなら騙せないのではないかとも。もちろん今では疑問を抱く点はいくつかある。


 まず万魔の力についての疑問だ。僕の力はコントロールできないからと言って隔離塔にいた。だがリビリアにかかれば守護者の名の通り僕の力をコントロールできるようにしている。


 僕の能力が…万魔の美貌という話しであれば僕に渡した服についても能力を抑えると言っていたがその衣服を何回も着替えさせていたヘレスはそれこそ嫌悪感すら出していた。むしろ嫌悪感で止まっていたと言われたらそれまでだがリビリアは僕の姿に能力が反映されてるような口ぶりだった。


 僕が人間に、魔族に万魔を行使するたびに思い出すのはフィブラの狂喜乱舞するかのような最初の万魔の行使だ。だが実際にはそこまでの挙動をする者が今までいたか?という話し。


 断片的ではあるが僕にはたしかに命令する能力があるがリビリアの言っていた内容とフィブラの最初に使った態度もそうだし今も…後ろにいるフィブラは戦闘行動を停止せよという命令をしたにも関わらずいつでも殺せるように準備している。


 実際に要塞レディオンでは自我を失って挙動不審になる者はいたが僕がちゃんと自害しろと命令したもの以外は自尊心を削られたに過ぎない。


 落ち着こう…そもそもの話し僕はリビリアに騙されてもいいとは思っていたから別に騙されたとしてもそのことはどうでもいい。今の状況を冷静に考えてみればリビリアが味方になるか敵になるかの方が問題だろう。


「考えは纏まりました?フィンはちゃんと考えるんですね!面白いですね?考えるのにリビリアに騙されるんですね!」

「レアラは何を…って僕が質問するよりもそうだね。ちゃんと答えておかないと話し合いじゃないよね。僕はリビリアに騙されてもいいと思っていた。だからリビリアに言われたことをそこまで気にしてないんだけどそんなに重要なことなの?」

「騙されてもいい…?そうなんですか?その結果が実の兄弟を殺すことになったというのにいいんですか?たしかに貴方は私たちとはあまり関わりのない生活を送ってましたがそう思っていたんですか…」


 なにか不味いことでも言ったのか先ほどまで楽しそうにしてたのと違ってきょとんとした顔でいる。

 一応何かされるかもと警戒はしてるのだが…。


「リビリア?貴方本当に何を話したんですか?いえ…これは私たちの行いのせいですか?おかしいですよ?貴方が提案したことでは無かったんですか?全ては貴方がやったことですよね?」

「落ち着きなさい?だから何度も言ってるでしょう?私は普通のことしか話してないわ、それにこんな戦争紛いのことをしだしたのは貴方たちでしょう?」

「陛下の思惑から外すことと貴方言いましたよね?実際はどうですか?陛下は死に、兄弟達が死んでいく…これが貴方の言うフィンを守る行いなのですか?」

「私が嘘を吐かないのは知ってるでしょう?フィンを守るためよ。それに全員でちゃんと同意したはずだわ」


 何の話しだ。リビリアは少なくとも全部を知ってるのだろうけどレアラの知らない何かをしてたということ…なのだろうけど。陛下というのは父上、魔王のことか?


「それで次は私たちをフィンに殺させるという算段ですか?」

「フィンは別に兄弟を殺していないはずよ?」

「…そう仕向けたのですか?」


 確信的な部分はだんまりというのがリビリアなのだろう。黙ったリビリアを見てクスクスと楽しそうに笑いだすレアラだが少なくとも目は笑ってはいない。


「ではフィン?貴方に聞きますが貴方は私たちを殺すつもりですか?」


 どうしたものか。このままではリビリアに魔王になってどうしたいのかを聞く前にレアラの問いに黙ってる部分を僕から引き出そうとするだろう。僕もいっそ黙るか?

 しかしそうしたらそれこそレアラが喋るだけの茶会だ。リビリアに僕から聞くのもリビリアが黙っていることを聞けばレアラが勝手に満足する結果になる。


「レアラ?僕は少しリビリアと二人っきりで話したいことがあるんだけど駄目かな?」

「何を話すんですか?また騙されたいんですか?そのまま使い潰されて貴方の心が駄目になるかもしれませんよ?いえ、貴方に心が無いのだとしても…無い…?無いですか?ありますよね?だって貴方は勇者を連れてきたではないですか?なんですかあの人間は?心がないと言うのですか?言わないですよね!」


 おかしいやつだとは思ってはいる。思ってはいるのだがそれ以上に万魔の知識と呼ばれる存在がどういうものなのか僕はどこか勘違いしていたのかもしれない。


「貴方は心を交わしたはずですよ?ギュスターヴを殺した時に感じたことは何もなかったんですか?魔族と交流し何も思わなかったんですか?ゴドーはどうでした?狂ったように壊れてしまった彼を見てどう思いました?勇者と一緒に人間と一緒に暮らしてきてどう感じました?連れてくると判断した貴方の心は自由な選択を与えたはずですよ?」


 一人で喋ってるだけなのに僕の考えにたどり着こうとしている。

 別に何も話してないのに。


「時間を与えましたね?その間どうでした?人間と過ごしてリビリアのことも疑いましたか?リビリアは敵なのか味方なのか確認したいんですか?真実を考えながらもそんなことすらどうでもいいように話してるのはおかしいですよ?真実を知りたいなら今ここで追及すべきではないですか?」


 間違ってない。だが誘導されてるようにも思える。そう感じるのは僕がおかしいからだろうか。

 レアラの話しを聞いていると僕が本当にレアラの言う通りの状態なんじゃないかと感じてしまうのはなんなんだろうか。だとしたら騙されているという真実もたしかにここで追及すべきなのだろうが…。


 それをしてしまったらアキ達を救うという手段が減る。今ここで僕がするのは後ろにいるみんなを無傷でこの茶会という茶番を終わらせてリビリアに真意を聞くこと…。


「黙れレアラ。貴様じゃ話しにならん」

「テト…?」

「って言っても私も話し合いは得意じゃない…。フィン、貴様は何が目的だ?リビリアと話したいと言っていたな?ということは、その…報告か確認したいことがあるんじゃないのか?」


 強気にレアラを止めたかと思えば、優しい口調でそれこそ話し合いが得意ではないのだろう。

 僕としてはその通りだし、とりあえず頷いておくとテトは紅茶に口を付ける。


「では話して来い。リビリアも行け…ただ戻ってこい」

「テトおかしいですよ?そうしたらまた騙されてしまうんですよ?今までの行いを貴方は許してはいないのですよね!」

「言っただろう?話しにならん…リビリアはともかくフィンが話さないのであれば、貴様でも無理だ」

「そうですか…ですが、そうですね?せっかくの茶会なのに話しが進まないのは悲しいですね!」


 テトに救われたと言ったところだろうか。

 言葉に甘えて僕は立ち上がり、リビリアに視線を向けると何とも言えない顔をしたまま座っている。


「リビリア。話しがしたいんだけど…」

「そうね、この場で先に言った上でフィンと話すわ。私はフィンを騙してなどいないと。行きましょうか」


 とりあえずどこまで距離を離せば会話が届かない距離になるか分からないのでリビリアに先に歩いてもらい後ろを追いかけるように歩く。


 レアラとテトはその間なにか話し合っているが、レアラは変わらず笑っているのに対してテトはどうにも悲しそうな寂しそうな表情をしている。

 僕が兄弟を殺したことにも反応していたし思うところはあるはずだ。それでも僕に助け船を出したことや最初に謝ってきたこともそうだけどテトはどこか信じていい気がする。


 ある程度離れた距離まで歩きリビリアがそこで立ち止まり僕を抱きしめる。


「無事で良かったわ…」

「えっと…さっきまでと反応が違わない?」

「そんなことないわ。本当にあなたが無事で良かった。ずっと心配していたのに邪魔され続けてフィブラから報告を聞くたびに今すぐにでも向かいたい気持ちで溢れていたわ」


 リビリアは嘘を吐かない…しかし語ったことは真実である…か。

 実際に向かいたい気持ちなどはあったにしろどういう思惑なのかレアラに聞かれても一切を答えないのは何故なのかなどあるが魔王云々に関しても疑問は尽きない。


「ありがとうリビリア。ただ最初に言った計画とは大きく変わっているけどそこは気にしなくていいの?」

「些事に過ぎないわ。一番の問題はまだ残っているけれどゴドーを打ち破った時点でレアラの切れる手はほとんどなくなったに等しいわ」

「そうなんだ?一番の問題っていうのはレアラのこと?」

「そうよ。はっきり言ってこんなに厄介だとは思わなかったわ。あの引きこもりがここまで行動するなんて想定していなかったもの」


 リビリアが自信を持って言えるほどの引きこもりだったから本来の予定とは狂ったということか。

 だとしてもフィブラから作戦変更など打てる手はあったんじゃないだろうか。それすら出来ないほどの強敵だった?


「リビリア、僕は確認したいことがあるんだ」

「何かずっと話したがっていたわね?ただレアラの前で話さなかったのは正しいわ。あれに話せば勝手に話しが進んでレアラの独壇場だったでしょうね。それでなにかしら?」

「正直どれから聞けばいいのかまだ分かっていないけど。リビリアは魔王になったあとどうしたいのかがまず聞きたいかな」

「そんなこと?別にあなたが生きて平穏に暮らせれば良いと思っているわ」

「じゃあ人間や亜人と戦争して滅ぼそうとかは?」

「思ってないわね。むしろ放置していたら勝手に滅ぶんじゃないかしら?」

「勇者たちを生かしたいと僕が言ったらどうするの?」

「…。フィン?意味が分からないわ?」

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