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四十二話

 僕が魔道具を弄ってるとヘレスが興味深そうに見てくる。


「これなにー?」

「魔道具だよ?とはいっても壊れてるから機能しないんだけど」

「じゃあ直してるのー?」

「いや直してもそよ風を送って夏場を凌ぐ程度の効果しかないから素材だけ解体して別のものと組み合わせる予定かな」


 そこまで説明すると僕が拾ってきたガラクタを見て汚そうにしていたが。術式の部分だけを取り除いて見せてあげたらじっと見ていた。


「どうしたの?」

「いやー…教会でも魔術は習うけれど魔法主体じゃなくて魔術を主に使うフィンちゃんが不思議なんだよねー」

「僕の場合は魔力暴走起こしてしまうから魔法として上手く発動しないだけだよ?」

「あたしは専門知識持ってないから分からないんだけどさー魔術も魔法も一緒じゃないの?」

「術式が平面な物だとしたら魔法は立体的に作り出すものだよ。魔力量によって暴走しやすさも変わるけどヘレスがやっている魔術もある意味魔法だよ。わざわざ術式を可視化してるのは無駄なところだとは思うけど」


 あとは詠唱だろうか。声には振動がありその振動を術式の形として形成して発動するものだがこれもたしか教会の治癒術の書物で書いてあった気がする。

 人間からしたら術式を可視化状態にして魔法を展開するものや詠唱で魔法を発動するほうが覚えも良くなるし良いのだろう。


 実際僕も人間のことは言えない魔法糸で魔術を紡ぐなんてまどろっこしいことをしている。


「フィンちゃんがやってる魔眼だけど、あれは魔法だよねー?なんで暴走するの?」

「肉体に付与するのは魔力がそもそも馴染んでるから簡単っていうのはあるけど…んー?なんでだろう?」

「魔法障壁は張ってないよねー?」

「あれは肉体の外に張ってる…放出した魔力を障壁として発動してるからだよ。魔力量が多いだけで障壁の代わりになる人もいるし障壁を無意識に術式として成立してる人もいるよ?」


 分かりやすい例としてスピラだが。そのことを話してもヘレスは見たことないので万魔とアキで例えていくしかない。


「アキが濃密な魔力で隙間のない障壁を無自覚に張ってるとして。魔王の子はほぼ無意識に障壁を張っていたんだろうね。魔族や人間も魔力によって障壁となってるけど案外隙間の空いた緩いカーテンみたいな物だよ」

「それをわざわざ魔眼で見て何かわかるの?」

「僕の場合は予備動作が分かりやすいってだけかな…。戦士なんかは筋肉の動きを見て読み取るとかは聞いたことあるけど。というか魔族はほとんど魔力頼りな生き物だから魔眼じゃないとギュスターヴの動きとかも読めないと思うよ」


 致命の一撃。あれは魔力によって矛を自由自在に動かしていた。なによりも恐ろしいのは速いことと威力が桁違いなことを両立させているという点だ。

 そもそもあんな魔術や魔法があればテトの時に苦労なんかしない。


「わかんないなー…それこそずっと魔眼生活してたら分かるのかなー?」


 それもあるのだろう。僕にとっては魔眼で魔法糸を操るのがノートの役割でもあったし。魔法糸も無理やりであれば人間の魔力程度は突き破ることは出来る。

 不可視の一撃というわけではないし無抵抗な人間に限った話しだが…。


 ヘレスが不思議そうにしてるので魔眼を付与してあげて僕が術式を紡いで教えてあげているとヘレスはヘレスで勝手に魔法で実現している。


「あたしのも魔術になるんだよね?」

「一応ね?ただほとんど魔力で作ってるでしょそれ、僕は一度魔法糸を作ってから魔術を作るって二度手間だからね?」


 試しに僕が小指の爪の半分以下の火を作る為に魔力で術式を練り上げようとすれば多すぎる魔力で暴発してちょっとした小さな爆発を起こす。


「一応フィンちゃんの魔眼で視てたんだけどもっと大きい魔法を使ったら暴走しないんじゃないのー?」

「一度やったことあるけどそれでも暴走したかな。そもそも僕の意志とは反して勝手に魔力が多い状態になったり小さい状態になったりするんだよね」


 僕の数少ない外出経験と言えば魔力暴走して隔離塔から吹き飛ばされて落下して外に出たりとかくらいだろう。その時には罵倒もされたが単純に治癒系の魔法を覚えてる魔族が少ないことも起因して呆れられていたくらいか。


 治癒系と言えば教会の治癒は欠陥品の治癒を扱っている。寿命を減らして治癒をするという荒業。

 その肉体から補填して部位を治していくのではなく時間の加速のようなやり方だ。実際に加速してるわけではないが老けるわけではないし。


「この風起こす術式便利ねー」


 呑気に風を心地よさそうに発動しているのを横目に僕は新しい魔道具を拾って弄る。


 再現性は低いが恐らく風を使えばテトの一撃や致命の一撃の再現が出来るのではと風の出力を弄ってるのだが爆弾みたいな代物しか作れない。

 僕も僕で魔道具の専門知識を持ってるわけではないので仕方ないのだが全方位に一撃を放ったら相手も僕もただでは済まないだろう…。


 そんなことをしているとアキやダルガン…に連れられてやってきたナナシとヘレスが話し合いになる中無言で弄ってるとナナシから視線を感じたので念のため魔力爆弾じゃないことを告げておく。


 魔法障壁を吹っ飛ばす魔力爆弾じゃ確実に仕留めきれないだろうし今やってることは間違ってないとは思うんだけど。何がおかしいのだろうか?そもそも威力を高めるだけでは足りないというのであればやはり方向性を制限しなくてはいけない。


 何かで代用するか。


 そう思って新しい魔道具を拾いに行くとアキが何故かついてきて何を話すのかと思ったらまた異世界話しが出てきて相槌を打とうとしたが。しかしアキなら異世界の知識を持ってるかもと思って聞いてみようと思った。


「アキは最初の魔王の子ギュスターヴの致命の一撃を防いでたよね?」

「ん?おう。そうだな?」

「あれってどうやってたの?」

「どれが致命の一撃か分からないからとにかく夢中で俺の危険なところを逸らしてただけだぞ?」


 全部が致命の一撃のはずなんだけどわりと直感頼りだったのか?でも反撃もしていたはずなんだけどな。


「じゃあアキはギュスターヴの攻撃と同じことをやるってなったらどうする?魔法寄りな考えだと助かるんだけど」

「魔法かぁ…教えてもらった水を出したりとかなら出来るけど。それこそ高圧洗浄機みたいにするんじゃないか?ちなみに高圧洗浄機は濃縮した水を一気に飛ばすって感じなんだけど俺も詳しくは分からないな」


 風ではないのか。それなら温水の魔道具があったけどあれの威力を弄ればなんとかなるだろうか?

 一応飛ばすということもあって風の魔道具も探すがわりと回収されているのか多分東の生き残った魔族たちが持って行ってるからあまり時間をかけて探すわけにもいかないしな。


「もう行くのか?」

「うん。復興も大分進んでるようだしね。多分商人が崩壊したのを聞きつけて生き残りの人たちと何かしてるんだと思うよ」

「そっか…じゃああまり外に出歩けなくなるな」


 東の一部だけに限った話ではあるが。それでも使えそうなものは集めて持っていくだろう。食料調達はナナシに任せておけばいいだろうが、単純に茶会の期限も近いというのもある。


 さすがに二人の返事をそろそろ聞いておかないといけない。


「アキは僕の事結局どう思ってるの?」

「え?えーっと…そうだよな。返事待ってるんだもんな。明日には決める…それじゃだめかな?」

「別に明日じゃなくても」


 たしか次のフィブラが来る日はと考えて六日後…その時までに決めてもらえばいいか。

 決めたその時にはフィブラの事を話して茶会に連れて行ってもらえばいいし。そうでないなら僕だけで行こう。


「六日後に答え聞いてもいいかな?それでも分からなかったら分からなかったでもいいよ。ゆっくり考えるといいと思う」

「ありがとう。ごめんな」


 分からない場合は国に一旦帰ってもらおう。ヘレスに説明しておけば上手いことやってくれるだろうとも思うし。


 それから他愛ない話しをしながら部屋に戻り魔道具を弄る作業へ取り掛かろうとするとナナシが珍しく足音を立ててみんなの注目がそちらに向く。



「オレは…みんなと一緒にいることが楽しいんだと思う」


 一体なにを言い始めるのかと思ったらダルガンと同じ思いだったようだ。ダルガンをちらりと見れば満面の笑みになっている。良かったな。


「だから…これからはもっと仲良くなろうと思う…以上だ…」


 ナナシが意味深に僕を見てくるのでもしかしたらこれがナナシにとっての解答なのか?と思うがここで穏健派がどうだのと話したらヘレスが怒りそうなので黙っておく。


「ナナシさん吾輩もそれは思っていた!嬉しく思う!」

「何を言うのかと思ったわー…けどとても良いことだと思うわよナナシちゃん」

「ナナシの話しも俺は聞きたいと思ってたんだ。色々聞かせてくれよな」


 それぞれ思い思いのことを話しているので十分だろう。ヘレスも満足いってるようだし、あとはアキの返事と茶会について考えるだけで良くなった。


 魔道具を弄ってるとしばらく沈黙が続いていることに気づいて周りを見たら僕の言葉をみんな待っていたみたいだ。


「フィンちゃん…空気読んで…」

「え?うん。いいと思う。ナナシさんはそれでよいと思ったんでしょ?」

「あぁ…むしろ怒ってるのかと思ったが…駄目だったか?」

「僕は嬉しいよ」


 もう隠す必要性も特にないと思っていたが面倒くさいものだと笑顔を作ると、これまた珍しいことにナナシが微笑んでいた。


 ナナシがどうしようと別に構いはしないが。やっぱり感情をもっとあるように見せないとだめだな。ヘレスが普通にしてくれているし、アキも問題ないようにしているから大丈夫だと思っていたがもっと表情豊かにしないと誤解を生んでしまうようだ。


 みんなの会話を聞きながら前と同じようにするとダルガンがやたら話しかけてきて邪魔だったのでヘレスを何度も視線を送ってダルガンを引き離してもらいようやく魔道具を弄れる。


 それからは魔道具の水で水分補給したほうが人間には良いと思っていたが瘴気が薄れたのもあるし魔法で十分だろうと判断して温水の魔道具を本格的に分解して高圧洗浄機とやらを試しに作り始める。


 どれほど高出力にしても良いかなど考えることはあるが、これも爆弾のようになるため一回限りの魔道具になりそうだ。

 出力を上げた時点で術式そのものが破壊されるから今ある部品だと耐久性的に爆弾のようなものしか作れない。


 そして六日とは言ったが五日経ってもアキの返事が来ることはなかったので茶会を真面目に考える必要性の時だ。


 爆弾に関しては問題ない。成功するかは置いといて高出力の水を風で抑え込んでから後は風の隙間から勢いよく飛び出るようにしている。

 多分実際に動かしたら風の出力バランスが上手くいってないとかで結局全方位に致命の一撃もどきが出るだろうが無いよりはマシなので壊れないようにひたすらに球状に風の術式と水の術式を組み立てていった。


 使ってみたいがこれも一発勝負のものだし温水の魔道具みたいに勢いよく出る水の術式だけを解読してそれに耐える素材がないので球状が壊れながら最終的に前方に致命の一撃もどきが出るという…まぁ。これだけ勿体ぶった言葉を並べ立てても部品の耐久性が足りないから爆弾だ。


 とりあえず後で何か言われても面倒くさいので致命の爆弾とか適当にヘレスには言っておいたが物騒な名前と言われて気味悪がれたこと以外は特に問題はない。


「それにしても何を作ってるのかと思ったら結局爆弾なのねー…」

「むしろ頑張ったほうだよ?ガラクタしか集まらない中で作れたんだから」

「それこそあんたポーションとか作りなさいよ。薬師もやってたんでしょー?」

「あぁ、それ嘘だから」


 むすっとした顔をされても薬なんて専門外だ。資料をみたことはあっても名前しか知らない草花を見た目も知らないのに作れるわけがない。


「それとヘレス。明日から旅立つから」

「フィンちゃん?そういうのはね前もって言ってくれないと何も先立つ物集めてないわよ?」

「大丈夫。人間の国に帰るか進むかはまだ決まってないし」

「帰るのー?進むならまだしも帰るってことは何も解決しないんじゃないかしら?」


 ヘレスの言うことも分かるが帰るのは人間だけだ…って今更隠し事をヘレスにしても仕方ないか。


「明日僕は万魔の招集に出迎えがあるんだよ。それでみんなに付いてきてもらうか帰ってもらうかって感じかな」

「付いていくしかないんじゃないのー?フィンちゃん一人じゃ勝てないんでしょ?」

「敵対したら僕は死ぬだろうね。一応爆弾も作ったし念のためなんとかなるかもしれない物もあるから大丈夫だとは思いたいけど、まぁ大丈夫だよ」

「それでアキちゃんねー…実際にフィンちゃんは勇者がどういうものか見てるから分かってるかもしれないけれど、アキちゃんは成長途中だしむしろあたし達が足手まといって線は?」

「それもあるね。でもアキが付いてくる判断をしたときは僕がなんとかしようとするだけだよ」

「不安な話しね…」


 リビリアのことを話すかは迷ったけど。これもまたアキの判断次第だろうしリビリアの目的が不明瞭な状態なら話すべきじゃないだろう。

 人間の国を滅ぼすと言った時点で人間とは敵対するわけだし。


「それなら明日の件、軽くあたしの方からみんなに話しておくわー」

「ん。分かった」


 面倒事を引き受けてくれるならありがたくそうしてもらおう。僕は無いよりはマシの爆弾を作っておく。


 ヘレスは本当に軽く話してきただけなのかわりとすぐに戻ってきてベッドに横たわる。


「明日アキちゃんとどんな話しをするのかわからないけど…あたし達を人間の国に帰すとしても浄化の魔術だけみんなにかけてよねー?」

「そうだね。最後になるかもしれないしね」

「なんとかなるんじゃなかったのー?」

「んー…。どうなんだろうね」


 そもそも実力差は明らかだ。致命の一撃をもってしてもギュスターヴではテトに勝てないという。

 それなら致命の爆弾でも無理なものは無理。


 結局リビリアがどういう判断を下すかによって変わる。


 念のため作った致命の爆弾に似せたただの暖房爆弾をとにかく増やしておく。少しはかく乱できるように。

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