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三十三話

 起き上がって周りを見ればヘレスが隣のベッドで眠っていた。

 ここはどこだろうかと窓を少し開けてみれば…要塞レディオン…の廃墟というべきか。


 またどれくらい眠っていたのか気になる。フィブラの話しでは僕がゴドーに挑んで1カ月後、春には魔王城で決戦が行われていてリビリアが危険の可能性がある。


 そして服が僕の予備の服になっていた。そしてなんか嗅いだことのある匂いだなと思ったら以前ナナシが寒いだろうと思って被せたことのあるやつだ。

 さすがに臭いので浄化しておいて、近くを見ればちゃんと僕のリュックがあったので血まみれのリュックを浄化して綺麗にしておいた。


 結構な大立ち回りをして明らかに不自然な存在の僕をわざわざ介抱したということは起きたことを知られたら色々きかれるかもしれないな。

 ただ今の状況も聞きたいし…なんて言い訳しておくか今のうちに考えておかなければならない。


 僕は部屋のドアを開けると直立不動の男ナナシを見て、そっとドアを閉じた。

 怖すぎるだろう。なんでドアを開けたらいるんだよ。心臓ばくばくだよ。


 深呼吸してもう一度ドアを開けるとナナシは相変わらずいたので少しどかして扉を閉めてから話しかけることにした。


「ナナシさん。なにしてるの?」

「…むしろこちらが聞きたい…」

「いや、普通に起きただけなんだけど…」

「それは分かるが…そうではない…死にかけないといけない病気かなにかなのか?」

「そんなことないよ。むしろ最良の手段を選んだよ」


 ナナシが珍しくしかめっ面をしてるのでなんなのかと思ってしまう。表情に出すなんて珍しい。

 心配してくれていたのは分かるけど、魔力爆弾がなければ正直あいつを倒せる気なんて全然しなかった。


「オレが…来た時には死にかけていた…」

「あれも爆弾起動まで少しだったんだよ…」

「それで倒せなかったら…どうするつもりだったんだ?」

「それを聞かれるとなんともいえないけどさ…」


 実際最終手段というかせめてもっと早くケミリの使わなかった魔力爆弾に気づけば同時爆発で1人でも倒せたと思う。


「さすがに…胴体が分かれて焼け爛れた仲間を見るのは気分が悪いぞ…?」

「え?そんな状態だったの?良く生きてたね僕」

「なんでそんな軽いんだ…」


 しかしあそこまでしないと倒せない相手でフィブラがもしかしたら倒せるかもと言ってたのは相打ち的な意味だったのかな。

 正直これ以上の猛者と戦うなんてなったらもう勝ち目が見えないんだけど。


 僕たちが話し合ってると声が聞こえたのかアキが奥の部屋から出てきて、黙ったまま近づいて抱きしめられた。

 うん。どういう状況だろうか。


「ごめん…」


 なにが?謝られることされたっけ?ナナシには爆弾壊されたことは謝ってほしいけど、アキには特に何も悪いことはされてないはずだ。


「考えたけど…なんで謝られてるのかわからないんだけどアキ?」

「だって…俺が帰りたいなんて言わなければフィンが無理することなんかなかったのに…」


 うーん。実際結果論だけ言うといない方が良かったっていう。要塞都市で沢山の魔族に万魔を施して数の暴力でようやく弱らせての結果だったし。

 それに僕がもっと早く子供たちを…魔力爆弾を使って弱らせていればこれも結果論だが数の暴力で倒せた可能性があるというのもある。


「えっと…」

「ナナシから聞いた。時間がないことも俺たちに期待してないことも…」


 ナナシの方を見ると目を逸らされた…何を話したんだ?アキ達に期待してないっていう部分も距離とか色々考慮した結果無理だと判断したに過ぎないんだけどな。


「とにかく謝る必要ないからさ?ね?大丈夫だよ」

「俺もう逃げないから…だからフィンも危ないことをしないでほしい」

「うん?うん。何も危ないことしないから大丈夫」

「アキ殿…フィン殿は多分無自覚に死にかけている…」


 ナナシ余計なことを言うんでない。抱きしめられる力が強くなってわりと苦しくなってきた。

 あぁ、しばらく忘れていたけどあれか、頭撫でろって合図か。

 そう思い頭を撫でると力が弱まったので正解っぽかった。


 廊下でこんな話してるとダルガンも起きてきて直角の姿勢になってきた。


「申し訳ないフィンさん…吾輩も前進すると言っていたのにナナシさんとフィンさん二人にほとんど任せてしまっていた」

「いや、あの時も言ったけどギュスターヴを討伐した時点で恐らく人間国はしばらく平和だったと思うし…」

「それでも今回の戦いでも瀕死になりながら吾輩の命を救ってくれたこともある」


 いつだ?そもそもゴドーとの戦いでダルガンて何かしてたっけ?あ、僕を運んでくれていたのか。

 むしろあの状況運んでくれなかったら魔力爆弾拾えなかったから助かったなぁ。ナナシのせいで壊されたからなぁ。


「…さっきから何故オレを見る…」

「いや…爆弾壊された恨みが…」

「…そもそも…それも聞きたかった…あれはなんだ?」


 ダルガンは普通の姿勢になってくれたがアキは離れたがらないので頭をずっと撫でておきながら。

 ナナシの話しが分からない。


「万魔の壁ゴドーだよ。魔王の子」

「…違う。いや、あの魔族も気になったが…あんな威力の爆弾いつ作っていたんだ?」

「あぁ。あの爆弾は特注のやつだよ。仕組み自体は暖房爆弾と似てはいるけど」

「…もう作るな」


 どうかなぁ…あれの威力を知るとちょっとちまちました爆弾用意しても今後の戦いで勝てる気配がしない。

 まして今回は魔力総量というか、魔力を纏ってるのが薄かったからかなりの有効打になっていた。

 でもまぁ、レアラとテトに限っては今までみたいな武術じゃなく魔法で戦ってくると思うから…いや相手の魔力も含めてぶっ飛ばせるんだぞ?やっぱり…。


「作らないでくれ」

「吾輩もあれはどうかと思う」

「…」

「あ、はい」


 成功するかは分からない実験品の成功品だっただけに作らないというのは勿体ないなぁ。

 まぁ仕方ないか。正直最後のは何重の術式を重ねたのか分からないくらい魔力爆弾の効果高めていたし。術式重ねの魔道具なんて僕では作れないから自爆兵も用意できないと考えることにしよう。


 そして話し合っていたらヘレスもやってきて。そのままヘレスと僕が使っていた部屋に入り会話することになる。


「まず僕はどれくらい眠ってたのか気になるんだけど?」

「あたしは今回の戦いの方が気になるけどねー…。まぁ、2週間か3週間くらいじゃない?」


 というと決戦日までもう1週間くらいだろうか。僕が自爆したのが原因だとはいえ今から魔王城に向かうとなるとフィブラの力を借りないと間に合わないだろう。


「ナナシちゃんの話し聞いてもほとんどフィンちゃんがやったことなんでしょ?」

「ん。うーん…そうなんだけど。強いて言えば…ゴドーの暴走かな…?」


 実際あの姿を目の当たりにした者ならば多少は納得できるかなと言ってみたが。あまり納得されてない顔をされる。


「フィン殿…作戦決行日に都合よく暴走…はないとおもうが?」

「だよねー…」

「フィンも話したくないんじゃないのか?その…あれだけの死者だったんだし…」


 アキがフォローを入れてくれるがそれは逆効果だ。むしろあれだけの数がゴドーを裏切ったという方が不自然極まりないだろう。

 仕方ないがスピラの名前でも借りるか。


「ナナシさんには少し話したと思うけど魔王軍四天王と接触したっていうのはみんなに伝わってるかな?」

「それなら…話した…」

「四天王との会話までは話してなかったから説明するけど。その四天王は堕落の霊長と呼ばれるあまり噂もされない四天王なんだけど。嘘を見抜くというどういう原理か分からないことができてたんだよね」

「嘘を…ということは今回の計画は敵に筒抜けだった…ということか?」

「はっきり言ってしまえばそうだね。ただ堕落の霊長の思惑は分からないんだけど要塞を落とすことをむしろ応援してくれたんだよ」


 嘘はついてない。指輪もらったし、不戦まで誓って実際に最後まで現れることはなかった。

 ナナシはこれで納得してくれたみたいだ。


「それでー?四天王様の協力でこうなったのー?」

「ヘレス殿…恐らくそうだ…」

「ナナシちゃんは四天王に会ってないんでしょー?」

「しかしフィン殿がおかしくなったのは…四天王に会ったという報告の後だ…」


 さりげなくおかしい扱いされてるけど別に何もおかしいことはしてないよナナシ…。まぁ結構な反対の意見を言っていたからタイミング的にたしかスピラと出会った後だったっけかな?

 ナナシのフォローのおかげで不満げな顔は崩さないながらもヘレスは何も言わなくなってから次にダルガンが疑問を述べる。


「吾輩が思うにその四天王にフィンさんが利用された?ということだろうか?」

「んーん。それはないと思うよ。そもそも作戦に関しては元から行う予定だったものに助力が加わった程度だし」

「だとしてもこの都市全域で大混乱が起きるというのはおかしくなかろうか?」


 しまった正直に言いすぎた。

 そりゃ大混乱だったろうな。四方八方から敵味方区別なく争って北以外は僕の万魔影響下に陥った者全員でゴドーを集中砲火したのだから。


「フィンはあの場にいたんだよな?実際どういう状況だったんだ?」

「あー…全員がゴドーに向かっていったっていうのもあるけど。お金で雇われていたのもいたかな?」

「傭兵かな?でもなんだか今回の騒動って俺たちが最初にいた国と少し似ているね」


 アキが考えながら言ったことでみんなそれは考えていたことなのだろう。沈黙がしばらく続いて僕だけ凄く気まずい。


 これでどの時も渦中に僕が絡んでいるね。なんて言われたらもう偶然てすごいねーって笑うしかない。

 なにか話題を逸らすか?


「ここってまだ要塞の中だよね?脱出しなくて大丈夫なの?」

「それなら大丈夫である。吾輩が確認したがもう魔族かどうかというより復興作業をする者で右往左往しているから身バレさえしなければ普通に歩いても何も言われることはなかった」


 まだちゃんと生き残りいたのか。しかし今から復興作業してももう兵士はほとんどいないだろうし、魔王城がちゃんと機能してるなら援助が来るだろうがリビリアのことを考えると絶望的だな。


「とりあえずさー…これからどうするか話し合わないー?」

「それもそうだな。フィンはどうするんだ?」


 何故僕に聞くんだ?と不思議に思っていると、逆に全員から不思議な顔をされてじっと見られてしまった。


「えっと…どうしよう?」

「フィンちゃんはどうせ魔王城まで突っ込むんじゃないのー?」

「まぁ、最終的にはそのつもりだったんだけど…」


 今ではもう間に合わない以上アキ達と同行するのは無理だろう。フィブラを紹介してもいいのだけど…フィブラを紹介して四天王統括です。なんてことになったら疑惑がまた浮上してくる。


「それじゃあ行こうか?」

「アキ?」

「人を操る魔族もそうだけど、竜のテトがいるとフィンは殺されちゃうんだよね?」

「そうだね?竜の探索範囲も侮れないし…でもこれ以上は…」

「むしろもうここまで来ちゃったしね」


 ちらりとヘレスを見れば不機嫌なことに間違いはないが異論はないようだ。

 まぁ、ゴドー討伐がどれほど影響してるか魔王城の様子も気になるし問題はないか。


「それじゃあ僕が物資を集めてくるので必要なものを言ってもらえたら」

「フィン殿はここに…他の全員で集めに行く…必要なものはあるか?」


 強い口調でナナシから威圧するように言われたので別にそれでもいいんだけど大丈夫かな?ここまで奥地なら間違った肉を持ってくることもないとは思うけど。あとで確認はしておけばいいか。

 しかし必要なものと言われて考えるのは爆弾くらいだけど。それ以上に必要なものってあるだろうか?


「とりあえず使えそうな魔道具を見つけたらそれを持ってきてほしいかな?」

「…魔道具」

「だ、大丈夫!作るとしても普通の爆弾だし。なにより取ってきてほしいのは東とか西、北でもいいんだけどそこに温水を出す魔道具があるから取り出してきてくれたら嬉しいかな」


 純粋に水分で困ることはこれでなくなるだろう。

 それを伝えたらあとは各々食料担当やらを決めていった。ちなみに魔道具の担当はヘレスで嫌そうな顔をしていたが、一番術式に詳しいのは僕を除けばヘレスなので仕方ない。


 そうしてみんなが出ていって、僕はベッドに横たわる。

 まだ血液が足りてないのか。純粋に寿命が減ったことが影響してるのか少ししか起き上がってなかったのに疲労がどっと押し寄せてくる。


 そういえばと思って指を見ればスピラから貰った指輪は新品同様に無傷で驚く。

 どういう代物なのか。


 魔眼を使おうとしたら頭がズキズキと痛み始めて、上手く発動できなくて困った。

 試しに浄化の術式を使えば普通に使える。もう一度魔眼を発動させようとすれば頭痛がする。


 なにか目に異常でもあるのかと思い術式で魔眼を付与して見ようとしても頭痛がするので、近くに顔を写し見できる物がないか探しても特に見当たらないので確認しようがないから後で誰かに聞いてみよう。


 ドアが開く音が聞こえて、誰かが帰ってきたにしては早いなと思ってみればフィブラがそこにいた。


「フィン様…ご無事だったようで」

「よくここがわかったね?」

「勇者たちが揃って見張りを残さず外出したのを確認したのでフィン様が起きたのだと思い来ました」


 それってずっと監視していたってことだろうか?暇…というよりこの場合タイミング的にリビリアの指示か?


「病み上がりのところ申し訳ないのですが急ぎでしたので」

「別にいいけど、僕も聞きたいことはあったし…どうしたの?」

「以前。私が…四天王がリビリア様達の戦いには不戦と言ったのは覚えていると思うのですが…それもあって私は両陣営から命じられたらある程度行動しなくてはならないのです…」


 それはなんとなくわかるけど、なぜ今さらになってその話をするのだろうか?もしかして四天王の誰かが参戦してフィブラも戦うことが決まったとか?


「それで…申し上げにくいのですが。知識レアラからフィン様宛に言伝です」

「レアラ…?」


 死んだと思っていたのではないだろうか?いや元々あやふやな考えではあったのか?


「ゴドーの死から完全に生きていると断定されました。今まで死んだと一点張りしていたのですが今回ばかりは擁護できず命令で言伝を…」

「別にいいよ。それでなんて言われてきたの?」

「茶会の誘いです」

「へ?」

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