二十九話
ジョルジュの家へ尋ねると息子は今は出かけてると言われたが今回は別の要件があると伝えた。
「以前まで魔力補充を頼んでいた業者の方と話し合いたいと思いまして、その方がいる場所わかったりしませんか?」
「それは知ってはいますが…あまりフィさんが行くと良い顔はされないのでは…?」
「大丈夫です。今回はちょっとした協力なのでむしろ喜んでもらえると思います」
「そういうことなら…場所はお伝えしますが気を付けてくだされ?」
案外簡単に教えてくれたな。最悪万魔で吐かせるつもりだったが。
教えられた場所に行くと酒場のような場所でここにいるって暇なのか?と思ったあと暇にしたのは僕かと1人で納得する。
「魔力補充の件なんですけどどなたかいますか?」
一応誰が扱ってるか分からないから適当に声をかけると大体の魔族が反応した。
「8枚で請け負ってるが、量によっては16枚」
「俺なら7枚でもいいぜ?」
「馬鹿野郎、ただでさえ今年は儲けがないのに相場下げてどうするよ」
魔眼で見るが兵士の方が魔力総量が多い。むしろこの要塞都市にしては魔力総量が少なく感じる。
よそ者が出稼ぎに来てる感じなのかな?
「先に商談があると言っておきます。そのうえで僕はフィと言うのですが」
「…商売敵がなにしにきた?」
「商談です。上手くいけば協力してくれる方1人当たり50枚の仕事です」
もっと大げさな値段を言っても良かったが怪しいとされて相手にされなくなるよりは無難な方がいいだろうとこの値段。それでも1人当たり50枚なら破格の値段だろう。
「1人当たりってことは数がいるのか?何人欲しいんだ?」
「できれば全員。もし払えないと判断したらその場で僕を殺してもらっても構いません」
「ほう…?」
「ここにいるのが全員ではないんでしょう?また後日来ますのでそれまでにこの商談に絡みたい方を集めてほしいんですが。貴方には軽い信頼料として10枚渡しておきます」
ぽんとお金を支払ったことで多少なりとも好印象にはなるだろう。
それにお金なんてこの要塞の中でならいくらでも稼げるしどうせならもっと奮発しておくか?
カウンターの方へ行き50枚ほど置いて出口に向かう。
「今ここにいるみんなに適当におごっておいてください。明後日にはまたここに来ます」
店を出れば中からはしゃぐ声が聞こえるが、明後日には僕の万魔でせいぜい魔力を使ってゴドーに多少なりとも魔力を削る素材として頑張ってもらいたい。
残金が減った分は適当に家の中に入らせてもらって貰うものをもらってそのまま出ていく。
時間的にはまだ大丈夫のはずなので北門に向かい。警備兵にゴドーの所在地を聞いて西にいることを確認したうえで北門の砦まで来てからはプレートを見せたら喜ばれた。
なんでも北の砦にもお風呂があって魔道具管理人の噂があって来てくれないか期待はしていたらしい。
これなら演説するときに鍛錬場に兵を集めてもらって報告して多く万魔を施せるかもしれない。
お風呂の準備ができたらみんなに伝えたいからと集めておいてもらえないか実際に聞いてみると快諾してもらったので、他の魔道具整備より先にお風呂場の浄化とお湯を張って鍛錬場に向かう。
あとは爆発が起きたらもしかしたら皆さんは人間と魔族の区別がつかなくなるかもしれないと言っておけば勝手に暴徒と化すだろう。
最後の仕上げに…民衆そのものをゴドーへ差し向けるための万魔を施さなければいけない。
全てにおいて爆発がキーワードになってしまうが。今回に限っては東西の兵士たちを僕がゴドーに見えるようにしていくため僕に攻撃されないように。
「『爆発が起きたら南の砦へ破壊活動をすれば助かる』と兵士の方が言ってたけどなんなんですかね?」
と不思議な発言を言いながらひたすらに要塞内を歩き回る。
違和感を覚えられてもみんなが同じことを言えば犯人は特定できないだろう。それに注意喚起されたところで爆発が起きれば勝手に暴れまわってくれる。
ずっと歩きっぱなしと喋りっぱなしで疲れはするが、二日経過した後は魔道具を扱うやつらの所に向かい。結構な数…50人以上はいるだろうにぎゅうぎゅうに入ってる酒場に入ると。こいつらの魔力総量にそこまで期待はしてないので。
「『僕との商談を成立したかったら12日後、南砦に向かい僕の指示に必ず従え100枚以上の報酬が手に入る』」
そういうと元々金欲に目がくらんでいたのか少し違和感を覚えていたのは数人いたが全員納得していたので問題はないだろう。
一応違和感を覚えていた連中には『魔力を使うだけの仕事』と言えば笑顔で承諾してくれた。
あとは東西で南の砦へ破壊活動を指示していき歩き回る。
残りは2日…そうなれば広場へと向かう。
雪は積もっているが相変わらず元気に遊んでいる子供たちを見てヴェルが僕の元へ駆け寄ってくる。
「フィ姉ちゃん!待ってたぜ!」
僕も待ってたよ。成果を見せてほしい。
それぞれが魔道具を見せてきて上手くできているか魔力を通して稼働させていく。
ケミリは水球を色んな形に変えて色彩も変えていく魔道具で使い道はないけど才能はさすがというべきだろう。
ジョルジュはシンプルに火を灯したあとは鳥の形となって芸術的にも難易度的にもさすがだ。
肝心の二人はどうかなと見ればヴェルの方は上手く火の形を変えて色も変えていく。
レイモンドは残念な結果だった。
「先生…ごめんなさい」
「大丈夫だよ。むしろよく頑張ったね」
こいつは中央広場で爆破活動をしてもらおう。それくらいには役に立つ。
3人には僕の元でゴドー対策としてついてきてもらわないといけない。
「それじゃあみんな。僕が上げた魔道具を持ってるかな?」
「ずっと大事にしてるよ!」
「お姉ちゃんがくれたものだもん」
「先生のこれだけは絶対に成功してみせますから!」
「フィ先生のこれって結局なんなの?」
うん。大事に持っていて良かった。
「『万魔の守護を一時的に封印せよ』さぁみんな…いや、レイモンド?」
「はい!先生!」
「『その魔道具を返して?あと2日後に中央広場にて魔道具が設置されてあるからそれを起動せよ』」
「はい?え…返せって…でも。はい…。2日後ですね?」
「『残りの3人は2日間僕のそばを離れないでついてきて』」
「「「はい…」」」
十分な結果だ。このまま4人で行動して、巡回兵を見かけて一声かけておく
「お勤めご苦労様です」
「ん?そうやって労ってもらうことは少ないから嬉しいよ」
「ところで『2日後南砦が危ないらしいですからゴドー様をそちらへどんな方法でもいいので連れていってください』最近の噂は怖いですしね」
「そういえばそんな噂があるな?注意はしてるんだけど確かにゴドー様にいてもらった方がいい」
ふと後ろを見れば虚ろな目で僕についてくる子供が三人…。
もう少し普通な反応でついてくると思ったが2日間の縛りがあるからか?
まぁ良いか。あとは西の砦に向かいプレートを見せて後ろの子供三人は魔道具管理人としてのお手伝いと言ってお風呂の準備をしたあと再度演説を開始する。
「今日もお疲れ様ですみなさん!前に今日もお風呂が入れますよ!そして忘れたかもしれないので念のため『爆発が起きたら僕をゴドー様だと思ってください』そんなことが起きたら…ね?」
もう一度同じことを言えば初めて聞いた者もいるのか笑いながら、二度目に聞いた者は耳は傾けてるはずなので大丈夫だろう。お風呂の方を楽しみにしている様子だ。
「そういえば3人とも食事はした?」
「「「…」」」
「『3人は食事をした?』」
「食べてないよ」
「まだ」
「朝は食べた」
微妙に不便だな。まぁ良いか近場の食事処に入り食事を取りつつ戦前の食事とする。
あぁ、そういえば何故か命令しないとこいつらは食べなくなってるのだっけか。
「『3人とも十分と思うまで食事せよ』」
そう言えばようやく食べ始めるのでちゃんといざというときには魔力爆弾としてつかえるように指示準備は入念にしておかないとな。
ナナシの方は上手くやっているだろうか?まぁあの反応から期待はできないから北門では暴徒になるように指示しておいたし、暴徒になったとしても北の一般人は南の砦を壊しに向かいに来るから大丈夫だろう。
西の砦に戻り。寝室へ向かいベッドが一つしかないことに気づいたが子供だし詰めれば暖もとれて大丈夫かと思い3人をベッドに入れて僕もベッドに入る。
思えば長く感じた。最初の一カ月はなにをすればいいのか地図を作成して、ナナシも来て。
そこからの一カ月は必死に作戦を考えて、残り一カ月…いやスピラと出会ってからか。
一番忙しくなったのは覚悟を決めて僕一人でゴドーと戦うことを決めてからひたすらに忙しかった。
ふと指輪を見て魔眼で術式を再度見るとやはり解読はできない。どんな効果なのだろうか。
まぁそんなことを考えても使わないと決めているし問題はないか。一日中ベッドで休んでるとこんなに安らかになったのはいつ以来だろう。
手が少し寂しい気がしたので一番近くにいたケミリの頭を撫でておく。別に意味はないがなんとなく落ち着くきがしたのでそのままゆっくりと休む。
そうして一日が終わる。
本番は明日のつもりだが。ナナシに2週間後と言ったのでナナシが先走る可能性を考えて鍛錬場でぼうっと過ごしてちゃんと時間ぴったりにナナシは動くつもりかなと思い子供たちを見る。
(本当に殺すのか?)
今まで散々殺すように仕向けてきた心が今度は逆のことを言っている。
それともゴドーのことか?殺すに決まっている。その為に今まで準備してきたんだから。
「お姉ちゃん…」
「ん?」
幻聴か?と思ってケミリをしゃがんで覗くと目は虚ろだ。ただケミリが僕の頭を撫でてきた。
「何をしているの?」
「お姉ちゃん…」
「そう。壊れちゃったのかな」
手を払って、今日は何も起きそうにないので3人を休ませて鍛錬場を1人でいると雪がまたちらほらと降ってきた。
春も近いのに最後の雪かな?と思い空を見ると瘴気で汚い空が見える。
ただ何もしてない時間が当たり前のように過ぎていって淀んだ太陽が空を薄ら明るくしていく。
フードはもう被ってる意味はない。むしろ僕を認識してゴドーと思ってもらうのだからフードを外して子供たちを連れて鍛錬場を再度眺める。
全員が鍛錬をしてる中、これから戦いが起こるなんて誰も。僕も実感が湧かないなぁと見ていると爆発音が聞こえた。
「何事だ!?」
「噂が本当だったのか?」
騒ぎ始める兵たちを見て鍛錬場の前に僕はゆっくりと歩いていく。
「ゴドー様!?南にいるのではなかったのですか!?」
そうか。ちゃんとそう見えてるのだな。
「『体長4メートルをした人間の勇者が現れた!それが南砦を占拠している!また南砦にいる者が裏切り手引きしたのだ!今すぐ防具を着け戦闘準備に入れ!』」
「「「「「ハッ!」」」」」
僕が歩けば全員がついてくる。
僕は再度気合を入れるため声を上げる。
「『万魔の守護よその封印を戦闘を終えるまで封印せよ!』」
ここまで爆発音が聞こえてきたということは中央広場の方が爆発したはずだ。移動の最中に北門を見れば爆発した形跡は見られない。ナナシめ…まだ準備しているのか。
まぁ良い、道を進めば多くの民衆が南砦に殺気を持って向かって進む姿が見える。
「こ、これは何が起こっているんだ?」
「ゴドー様!民を落ち着かせるべきではありませんか!?」
「『これは民衆が協力して勇者を打倒せんと行動しているのだ!僕たちも向かうぞ!』」
「「「「「おおおぉぉぉ!!!」」」」」
さすがに民衆の数が多く邪魔だが、これらすべてが戦力なのだ。南にいる者たちも対応に困っているから爆発音がした中央広場まで来ることも叶わないだろう。
大勢を連れている分移動速度は気になるが、それでも僕たちは破壊された中央広場まで向かう。
そうすれば東にいた兵士たちも騒ぎを聞きつけてやってくるのを待っていると僕を見つけた瞬間畏まった様子で近づいてくる。
「ゴドー様!これは何事でしょうか!?」
「詳しくは東の兵が全員たどり着いたときに言う。それまで待機せよ」
「わかりました…!」
そして東から遅れてやってきた兵たちが集まり。全員の視線が僕へ向いている状態で宣言する。
「『これより僕はゴドーと見よ!そして南砦にいる4メートルの体格をした人間の勇者が裏切り者と共に存在する。民衆は我らと共に志をして先に南砦へと向かっている!さぁ僕の友ギュスターヴの仇を!人間の勇者を討伐するぞ我らが精鋭達よ!」
「「「「「「「「「おおおおおおおおおぉおぉぉおぉ!」」」」」」」」」」
さぁ、ゴドー…お前の育てた兵とお前の憎むべき者が…お前を万魔の矛ギュスターヴの元へ連れていってやる。




