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二十七話

 気分が悪い…。


 命令して殺し合わせた魔族を見て勝利した方に後処理をさせてそいつも要塞外で自害するように命令したが。結果としては…。


「むかつく!ごめんこんなことはしたくないんだけど殺さなくちゃいけないんだ!助けてくれ!」


 そんな支離滅裂なことを言いながら試験体一番目は答えていて。

 それの相手をするのは『この先に殺しに来るものがいるが、そのまま進みそのことを知らないふりを終始したまま殺し合いを開始せよ』と命令したが、これもまた微妙な結果で。


「わかんない!分かんねえよ!わからないって言ってんだろうが!」


 はっきり言って思考をコントロールしようとすればするほど発言がおかしいことになっていく。

 今までは単純な命令だったから疑問に思わなかったがこれは根本的になんとかしなければならないだろう。


 そしてもう一つ分かったことは『殺害せよ』と『殺し合いをせよ』という言葉も意味合いが違うのか殺害と言った方は明確に殺しにきてたが殺し合いと言った方は本気ではなかったという点だ。


 命令の内容というより言葉の内容で本人が自由にできる部分が存在する。

 今まで長期的な命令をしたことあるのは人間だったが。国境に向かわせた後の行動を見てなかったから短期的な命令と長期的な命令の違いも恐らくあるのだろう。


 もっとシンプルにする必要があるな。


 しかし試行回数もそんなにすればさすがに要塞で違和感を覚えられて警戒が強まったら実験することも出来ないため一度情報をまとめつつにはなるが…。



 子供たちにも実験に付き合ってもらうため、5日ぶりくらいにはなるが広場に行けばヴェルが僕に気づき走って近づいてくる。


「フィ姉ちゃん!」

「久しぶり。元気にしてた?」


 ちゃんと4人仲良くしているようでそれぞれが魔法の練習をしていた。


 しばらくは火の色を変える魔法を各々が見せてくれて自分の好きな色を自慢して話してきてくれた。

 その中でもケミリは基本ができているだけに火の色を変えれる種類が一番多くて驚いた。


「みんなちゃんと頑張っていたんだね偉いよ。『ヴェル、両手を上げて見せて』」

「ん?別にいいけど?どうしたのフィ姉ちゃん?」


 違和感も感じないまま両手を上げて見せてくれる。


「聞いてみたいんだけどどうして両手を上げたのかな?」

「先生何を言ってるんですか?」

「そうだよフィ姉ちゃん、俺に上げろって言ったの姉ちゃんじゃん」


 周りは笑っているしヴェル本人も特に違和感を感じてない。

 恐らくだが自然な行動を命令すれば、もしくはしてもいいという気持ちがあればそもそも命令しようがしまいが関係ない?


「『ケミリまた火の色を変える魔法を見せてほしい』」

「いいよ?なんの色がいいかなぁ?」


 少し悩む素振りを見せた後、火の色を変えながら僕に見せてくれる。

 その際に魔眼でケミリの魔力総量が減っていくのを確認して別の命令に切り替える。


「『温水の魔法をケミリやってみて』」

「お、おいフィ姉ちゃんどうしたんだよ?」

「うん!いいよ!頑張ってみるね」

「フィ先生?」


 その光景をしっかりと見ておく。魔力総量的にこの魔法は恐らく失敗するはずだ。

 ただそれでもやろうとしている姿勢を見れる。


「あれ?ちょっと待ってねお姉ちゃん…あれ?」


 水球を発動させた時点で熱を加えて温水にするところまではいけてない。ただ殺し合いをさせたやつらのようなおかしな発言も挙動もしてない。純粋になんで出来ないんだろう?と言った感じが見られる。


「あぁそっか…術式だっけお姉ちゃん!」

「え?」


 水球の形を変えて熱の術式を水で再現して熱を加えて温水を完成させて見せた。


「「「えぇ!?」」」


 他の三人も驚いている。


「お姉ちゃんが言った意味よくわかんなかったけどできたよ!魔力的に無理だなぁと思ってたんだけど出来ちゃった!」

「そっか…無理だとは思っていたんだね」

「でもお姉ちゃんがやってって言うってことは出来るってことだと思って沢山考えちゃった」


 意味が分からない。別にこうしろと言った命令をしたわけでもないのにただひたすら温水を作ることだけに夢中になっていた?

 その際の思考は無理だとは思っていたけど諦めないでいたというのもおかしい点だ。


「せ、先生!僕にもアドバイスをください!ケミリだけずるいです!」

「俺の両手を上げるってやつもなんかあったの!?」


 レイモンドとヴェルがやる気になってる中ジョルジュはケミリの心配をしつつもケミリは満足そうに休んでる。

 僕が考えていたのは無理だと言って錯乱するか、気絶するまで魔法を行使するかと思ったが。機転を利かせて魔法だけでなく僕がやっている魔法糸の応用で魔法水で術式を紡いで見せたケミリ。


 今までの知識を完全集中して潜在能力を引き出したとか?


「2人にもそれじゃあお願いしようかな。『ヴェルは温水を作って水の色を変えてみて』『レイモンドは火を球体にして色を変えてみて』」

「やってみるぜ!」

「任せてください!」


 レイモンドは分かる。ただヴェルの即答は少し違和感とも思える。いつもなら出来るのか最初に不満そうにしてるのに今回はやる気に満ちている。


 2人の様子を見るとヴェルは魔眼をそもそもちゃんとやっていなかったのか魔力切れを起こすまで「術式…術式…」と呟いて

 レイモンドは火を球体に変えたところまでは良かったが色を変える際に球体の形を維持することが困難になって「こんなはずじゃないんだ…」とやはり発言が怪しかった。


「『万魔の守護をここに』」


 そう告げ。2人は倒れて疲れ果てていた。


「あれ?なんかすげぇ疲れる…」

「集中力が…もう少しでできたかもしれないのに…」


 うーん。この二人は違和感を感じている様子だ。


「ジョルジュ…今のを見てどう思った?」

「え…その。フィ先生が…怖かった…」

「え?ごめんね?ほらみんながどれくらい成長してるか見たいって言ったでしょ?魔眼の練習してるかなぁって気になっちゃってさ」

「今の魔眼が使えないとできないの…?」

「ケミリを見ての通りだよ」


 とりあえずジョルジュも違和感を感じていたのだろう。2人の介抱をしながら僕は僕で考える。

 ケミリだけあんなに応用力を増してまで僕の命令を実行できたのは知識とか基礎の問題もあるけど。ケミリを見た後なら2人も出来てもおかしくないはずだ。


 それとも個人差がわりとある?だとしたら単純に僕の言い方や命令が悪いんじゃなくて、人間の関係性もある程度重要になってくるということか。


「お姉ちゃん…!私頑張ってたでしょ?」

「…うん。正直に言うとね出来ないかなって思ってたの。それが出来たケミリに僕すごい驚いちゃったよ」

「えへへ」


 いつもは区別なく全員を褒めるのだが、今回のケミリは間違いなく貢献者だ。


 レイモンド以外は大丈夫そうだがレイモンドだけやたら悔しそうにしているのが少し申し訳ないが、今は時間がないのだ許して…いや許さなくていいから仲間内で喧嘩とかはやめてくれよ?


 今回の成果としてはケミリのおかげで関係性と本人の本領発揮をさせる命令をするにはできることをちゃんと命令しないといけないということだ。


 それらを複合して考えるなら…。


「フィ先生はどうして無茶な魔法をさせようとしたの?」

「ん?そっかジョルジュには無茶なように見えたんだね」

「うん…」


 僕もだよと言えば不信感が増すだけだろうしな。


「僕は普段自分の魔力が足りない魔法を術式で使うんだよ。ジョルジュも魔道具で知ってるとは思うけどみんなが術式をどれだけ大事にしてるか確認したかったって言ったら分かってくれるかな?」

「うん…それなら分かる。術式は大事だから…じゃあヴェルもレイモンドもフィ先生からしたら期待外れだったの?」

「そんなことないよ?見てたでしょ?あの2人の頑張ってたのを。僕は魔法が下手だからね2人ならできるかもって思ってただけだよ。実際惜しいところまでは来てたでしょ?」


 まぁ出来るわけないだろうあんな無茶なやり方で。魔力が足りない時点でどうあがいても術式頼りになる。

 ただ発言が怪しくはなっていたがケミリを見ていた分やろうとはしてたはずだ。


 僕が命令したら関係値を築いてるだけに違和感や支離滅裂になるよりも集中してくれるという形になっていった。


「ジョルジュにも魔法を試してもらおうかと思ったけど、ジョルジュは魔道具の方が好きだよね?」

「うん…ごめんなさい」

「謝ることなんてないよ?むしろ僕はジョルジュにも期待してるんだ」


 今の様子で分かったが一番魔力爆弾の素質を持ってるのはジョルジュだ。ヴェルとレイモンドの様子を見たら若干変な思考になるかもしれない分、僕の作った魔力爆弾魔道具を使いこなして発動できるのはジョルジュの可能性が高い。


「フィ先生は魔法の先生じゃないの?」

「あはは。僕はそれこそジョルジュみたいに術式を弄ってる方が多かったから魔法が下手なんだよ」

「そうなんだ…」


 軽い雑談を交わせば先ほどまでの恐怖感が薄れていったのか。とりあえず知りたいことは知れた。

 できればケミリにはみんなに魔眼を。ジョルジュには魔道具を教えて全員が魔力爆弾の素質になるように育てていけたら理想的だ。


 そう思い。ケミリとジョルジュ二人にさりげなくてもいいからヴェルとレイモンドのお手伝いと称して教えてあげてほしいと言っておいた。


「2人に直接言った方がいいんじゃないの?お姉ちゃんの言うことなら聞くと思うけど」

「うーん…ヴェルは聞いてくれるかもしれないけどレイモンドは負けず嫌いなところあるから」

「フィ先生レイモンドのことちゃんと見てたんだ…でも教えようとするとレイモンド不貞腐れるんだよ?」


 それは困ったな。一番慕ってくれているのはレイモンドなのだからできれば素直に言うことを聞いてほしい。僕から言ったら劣ってると言ってるようなものだし。


「お姉ちゃん。もう勝負させたら?」

「勝負?」

「ヴェルとレイモンドでどっちが上手くできるか勝負させるの。そしたらレイモンドも私たちの話聞いてくれるかも?」


 それは案外良いかもしれないな。これで失敗したときのリスクを考えたらレイモンドはもう切り捨てて3人を魔力爆弾にして行く方に切り替えてレイモンドの使い方はまた他にないか考えておけばいいか。


「ケミリの案を採用します」

「やったー」

「でも勝負の内容ってどうするの?」

「2人に教えてもらう形がいいから魔道具制作にしようか。お金は僕が渡すよ」


 そう言うと2人は遠慮していたが僕のための出費だ。


「ケミリとジョルジュも好きな魔道具を作るといいよ。ただ危ないのは作っちゃだめだからね?いままで教えた魔術と…そして今日言ったみたいに形を変えたり色を変えたり応用が出来るようにしてほしいな」


 材料は高いだろうが。手持ちをとりあえず渡しておいて。とにかく安全を第一にということを告げておく。


 ヴェルとレイモンドがある程度回復したら、さっきまで話してた内容をそのまま2人に話して名目上は4人での勝負。ケミリとジョルジュには2人の勝負と告げてあるので素直に教えてあげてくれたら助かる。


「あ。渡したお金は四人で仲良く分けるんだよ?人数分で分けれるようにしてるはずだから」

「「「「はーい!」」」」


 元気な返事を聞いて今回は広場を後にして。西の方の砦に戻る。

 さて、命令内容だが…。関係値が重要性を増すことと、僕の命令だと関係値が無い分何も知らない存在が聞いたら本領発揮できないこと。




 僕は最終確認をするために砦でまた兵士が1人になるところを待って。声をかける。


「あれ?管理人ちゃんじゃん。管理人ちゃんに聞いても分かんないかもしれないけど2人見かけないやつがいてさ」

「そのことについてなんですけど『僕を万魔の壁ゴドーとして見よ』」

「え?あれ!?ゴドー様!?すいません、その管理人ちゃん…魔道具管理人がいたんですけど話してたら急に消えまして」

「問題ない。それと先ほど聞こえた二人を探してる件も問題はない。あやつらは任務として要塞から離れていることを全員に告げておくように」

「そうだったんですか…わかりました。いつ頃帰ってきますかね?実はテイルの奴に金貸しっぱにしててせめて返してからにしてほしいっすよね。ははは」

「そうだったか。あとで魔道具管理人に金を渡しておくがいくら貸してたのだ?」

「そんな…あーでもゴドー様そう言うところきっちりしてますもんね。7枚程度なんですけど」

「分かった。それでは『目をつぶり10秒耳をふさいだ後僕は管理人だよ』」

「はい?でもゴドー様って意外と冗談とか言うんですね…ってあれ?管理人ちゃん?」

「ゴドー様がでかすぎて後ろにいましたよ」

「あ。あぁ…そうだったんだ!?びっくりしたぁ…」


 これで確認は完了だ。これなら関係値を築いていける。視界情報的には多分僕は僕のまま見えるはずだけど僕をゴドーと思って疑ってなかったということが大事だ。

 意識も支離滅裂になることも発言も違和感は感じなかった。


 さぁ…ようやく占領作戦の開始だ。

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